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w-inds. 困難を乗り越え、二人の希望とグループの未来を提示した「誰かの光になって欲しい」新作

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ポニーキャニオン

新体制となって初のオリジナルアルバム『20XX “We are”』は「誰かの光になるようなものにしたかった」

14thアルバム『20XX “We are”』(11月24日発売/通常盤)
14thアルバム『20XX “We are”』(11月24日発売/通常盤)

かつてこんなに“生々しい”w-inds.が存在しただろうか――「誰かの光になるような」という思い込め制作した、3年振りの、そして2人体制となって初めてのオリジナルアルバム『20XX “We are”』は、橘慶太、千葉涼平の新たなスタートとして、自分達の光にもなるようなメッセージを込めた。前作のアルバム『100』に続き、橘慶太が全曲プロデュース。今の思いと真正面から向き合い、丁寧に言葉を紡ぎ、まっすぐに聴き手に届ける。このアルバムに込めたメッセージについて二人にインタビューした。

昨年12月、二人は新体制になって初のデジタルシングル「Beautiful Now」に、強い意志を刻みファンにメッセージを送った。この「自分たちの立ち位置を見つけられた気がした」(橘)という“始まり”の曲も、今回のアルバムの中に入ると、また違った表情になって「よりメッセージが見えてくる」(橘)。

「今まではダンスミュージックを通して、自分達でストーリーを練って作り、世界観を歌ってきました。でも今回はそういうものを出すタイミングじゃない。コロナ禍であるということで、不安で世の中が少し暗くなっていると思うし、自分達もメンバーの脱退があったり、苦しみや悩みが多かった2年でした。なので歌詞にそこに対する、そこを抜け出せるメッセージを込めたアルバムにしたいというのは、最初に話し合いました」(橘)。

「こんなに言いたいことがあったんだって自分でもびっくりした」(橘)

これまでw-inds.の作品にはここまで生々しいメッセージが並ぶアルバムはなかった。それは橘が常々言っている「不満を歌詞に昇華させたくない」という表現者、クリエイターとしての流儀があったからだ。しかし、その思いに変化があった。

「今までは世の中に言いたいことが特になかったという(笑)。でもここ2年は自分なりに考えることがたくさんあったので、胸の内を歌詞に吐き出すなら今しかないと思いました。どの曲にも強いメッセージを込めました。歌詞を書いていたら『俺はこんなに言いたいことがあったんだ』って自分でもびっくりしました(笑)」(橘)。

「自分達を鼓舞するような言葉を込めました」(橘)

聴き手へのメッセージであることはもちろん、それは自分達に向けたメッセージでもあった。心の中を“確認”しながら、それを実感に変え前に進んでいる。アルバムを通して聴くと、そう自分達に言い聞かせている感じが伝わってくる

「まさにそうです。自分達を鼓舞するような言葉を詰め込みました」(橘)。

「グループとしてもそうですけど、こういう時代になってしまって、自分自身の中で、今までの音楽が響いて来なくなったというか、聴きたい音楽がなくなってしまって。世界中にそういう人、多いと思うんです。そういう人の背中を押してあげられるというか、ちゃんとメッセージを伝えられる音楽を作れたらいいなって思いました」(千葉)。

「ひと言ひと言と丁寧に向き合い、歌いました」(千葉)

最先端のトラックとメロディに、必要最小限の繊細な日本語が抜群のバランスでハマり、それがリズムとなって、きちんとメッセージが伝わってくる。

「歌詞とトラックに合った細かい発声、ニュアンスに徹底的にこだわってレコーディングして、ミックスの段階でも言葉がきちんと聴こえる生々しいボーカルを目指しました(橘)。

「ボーカルディレクションはむちゃくちゃ細かかったです(笑)。とにかくひと言ひとこと、丁寧に向き合ってやっていきました」(千葉)。

「『EXIT』は“逃げ出そう”と爽快に歌っているところが、個人的にグッときています」(橘)

「『With You』は自分達の現状にも重なる歌詞。あくまでも前を向いて進んでいるところがグッときます」(千葉)

橘慶太
橘慶太

難しい質問だが、二人にアルバムの中でも特に推し曲を教えてもらった。

「僕は『EXIT』です。もちろん選ぶのは難しいですが、この曲は軽快なトラックで“逃げる”ことを歌う美学というか、逃げ出そうと爽快に歌っているところが個人的にグッときます。逃げるって重いワードだと思いますが、それをあのドラムンベースのテンポ感の速さとメロディラインに乗せて発信すると、心地いいんです。<泥臭くても 辿り着こう>という歌詞が作っていてツボでした。ラストの方に、サビとは違うメロディで<そのEXIT 未来へのENTRANCE>という歌詞があって、逃げた先の出口が君の未来の入口なんだって、ちゃんとエンディングを迎えられているというのが、個人的にすごくヒットして、気持ちいいので何回も聴いています。この曲は歌詞も含めて、完成した時に『キターッ』って思いました。全てがパーフェクトだと思いました」(橘)。

千葉涼平
千葉涼平

「僕は『With You』です。エモさがたまらない。自分達の状況にも重なる歌詞で、同時に時代も切り取っているので、聴いてくれた人にも重なるところはあると思うし、そこをネガティブに終わらせないで、背負って進んでいこうと、あくまでも前を向いて進んでいるところがグッときます」(千葉)。

「必然的に出てきた言葉だと思う。この2年間ファンの方にSNSとかで自分達の思いをあまり伝えてきていないので、そういう意味ではこのアルバムを聴いていただいて、二人の考え方や思いが伝わると嬉しいです」(橘)。

「今回のアルバムは僕自身も背中を押される歌詞ばかりで、グッときたり、共感もできるし、自分の中にない考え方をみつけて『なるほど~』と思う部分もあります。『Little』はまさにそうで、僕は根がネガティブな方なので『あ、そういう考え方って確かにそうだよね』って納得できるとことが多くて。大きなことや出来事に幸せを感じがちだけど、当たり前に毎日を過ごせていることが幸せなんだって、改めて教えられました。より周りの人や環境に感謝しなければって思わせてくれました」(涼平)。

事務所の先輩DA PUMPと後輩Leadとこんな時代からこそ“わちゃわちゃ”楽しく

「The Christmas Song(feat.DA PUMP&Lead)」は、w-inds.が新人の頃DA PUMPのライヴにオープニングアクトで出演し、Leadはデビューしたての頃にw-inds.のライヴのオープニングアクトを務めた、先輩、後輩であり“仲間”というストーリーも存在しているハッピーソングだ。

「こんな世の中なので、明るいクリスマスソングしかないだろう、と。それで同じ事務所の先輩と後輩に声をかけて、聴いてくれる人の光になるようなものを作りたいというアルバムのコンセプトを説明して、クリスマスの時期に、聴いた人が淋しくならないようなメッセージが一人ひとりから欲しいとお願いしました。で、それぞれのパートの歌詞を書いてくれて、和気あいあいと作れたし、最高のハッピークリスマスソングができました。MVもただわちゃわちゃしているだけという(笑)。でもそれがいいんです」(橘)。

12月29日 Online Show『20XX”We are”』でアルバムを初披露

オリジナルアルバムを発表したからには、やはり有観客ライヴをやりたいというのが、二人の願いだ。

「早くお客さんの前で歌いたいです。次のステージは約2年振りで、二人になって初めてなので、一発目のライヴは大切にしたいです。でもその前に12月29日(20

時~) に Online Show『20XX”We are”』をやるので、そこでこの楽曲達を初披露するので、そこから曲がどう変わっていくか楽しみです」(橘)。

「今成長期。すぐに新しいアルバムを作りたい」(橘)

「この5年は20周年に向け突っ走ってきた。自分のペースを取り戻したい(笑)」(千葉)

2022年の野望、希望を聞かせてもらった。

「ライヴはもちろんですが、大至急新しいアルバムを作りたい。今作ったらもっといいものができるという自信があります。このアルバムを作って、自分が成長できた気がしていて。それまでできなかったこととかが鮮明に見えて、それができるようになったり、今成長期だなって作りながら思っていました。この今の感覚のまま、次のアルバムを作りたい」(橘)。

「15周年の時にやったアニバーサリーライヴで、ファンの方達の反応や、もらったメッセージをみて『20周年を目指せるかも』って思えたので、この5年間は、20周年という数字に向かって突き進んできた感じがあって。15周年を迎えるまでは何周年とか、数字は気にしたことなかったのに意識したとたん、それって簡単じゃないんだなって思って。物事を進めるペースが速くて自分向きではなかったかもしれません(笑)。なので、自分のペースを取り戻したいです(笑)」。

w-inds.オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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