デビュー18年を迎えたアニソン界最強ユニット・angela

angelaといえば、アニメファンならずともその歌声は一度は耳にしたことがある、デビュー18年を迎えたアニソン界の大御所ともいえる存在だ。ボーカルatsukoとギター&アレンジのKATSUの二人は路上ライヴでデビューのチャンスを掴み、angelaの核となるものを築き「全てのことは路上ライヴに教えてもらった」と、その時の衝動や情熱を忘れることなく、今も活動を続けている。そして「angelaとしての音楽よりも、全てをアニソンに捧げる」という強い意志もデビュー当時から変わらない。atsukoとKATSUにインタビューし、angelaという唯一無二のユニットのその“強さ”の秘密に迫ってみた。

一度デビューするもうまくいかず、路上ライヴで“再出発”

――angelaのお二人は2003年5月にシングル「明日へのbrilliant road」でデビューしましたが、新宿アルタ前で路上ライヴをやっている時に、現在のレコード会社のプロデューサーから声をかけられたのがきっかけとお聞きしました。

KATSU
KATSU

KATSU 24歳の時に一度デビューしたのですが、うまくいかずに再出発という意味で、池袋と新宿、たまに渋谷で路上ライヴを始めました。本当は人気曲のカバをやった方が人が集まりやすいのですが、当時変な反骨精神があって(笑)、オリジナル曲をやっていました。

atsuko セオリーでいうと一曲目にカバーをやって人を集めてからオリジナルですよね(笑)

KATSU 今だったら確実に「紅蓮華」をやっていると思います(笑)。当時事務所も辞めて路上ライヴを始めて、その時は再デビューしたいという気持ちがすごく強かったです。失敗を繰り返したくなかったし、路上ライヴをやりながらも、90年代後半から00年頭くらいに流行っていた小室哲哉さんや、いわゆるビーイングサウンド“風”な楽曲を作っていました。オレンジペコーとか渋谷系と言われるアーティストの作風に寄った、ジャジーな曲も書いていました。

atsuko 私は「ヱヴァンゲリオン」にすごく影響を受けて、この作品で使われているような楽曲を作れば再デビューできるチャンスがあると思っていたので、デビューしたいが故に、色々なジャンルの音楽を作って歌っていました。

KATSU その時はアニソンでデビューしたいという気持ちは特になくて、とにかく再デビューしたかったので「残酷な天使のテーゼ」(高橋洋子)みたいな曲を作ったらデビューできると思い、「merry-go-round」という曲を作りました。「残酷~」のオマージュで、これが再デビューの直接的なきかっけになりました。というのは、当時この曲をCDとして路上ライヴの時に売っていて、それをたまたま今のプロデューサーが買ってくれて、この2人ならアニソンを作れるだろうということで声をかけていただきました。

「路上ライヴを始めて3年経った頃、もう解散しようと思ったけど、あと1年だけ頑張ろうって決めて、そこから今がある」(astuko)

――そこから再び二人の運命、アーティストとしての時計の針が動き出したんですね。

atsuko 路上ライヴを始めて3年が経っていました。その時点で28歳になっていて、バイトをしながら週5で路上ライヴをやっていたのですが、バイトよりもライヴ優先という生活でした。かれこれ二人で10年やっていて、もうダメかなと思って解散しましょうってKATSUさんに提案しました。でもKATSUさんが「あと1年だけ一緒にやってくれ」って言うので、じゃああと一年だけって決めてまた路上ライヴを始めて、その1ヶ月後くらいに現プロデューサーにお会いしてるので、キングレコードさんに本当に命を救われたようなものです。

KATSU その時にangelaの命は、アニソンに捧げようって決めました。

――路上ライヴはまさに生活がかかっていた。

KATSU 本当にそうでした。MCひとつでCDの売上げが変わるので、そこも練って練って練り上げました。「将来有名になったらこのCD高値がつくので買ってください」って言ったら皆さん買ってくれるし、有名になるかわからないんですけどね(笑)。デビューしてからもしばらく路上ライヴやっていた時「上手いですね」って言われたら「実は口パクなんですよ」っていうとウケたりして、わかりやすい冗談が一番誰も傷つけないし、笑えてユーモアだけで終われるので、これは今のライヴでも心がけていることです。

「路上ライヴでお客さんに自分の“強み”を教えてもらった」(atsuko)

――路上ライヴをやりながら楽曲をどう伝えるか、ライヴをどう作るかということを徹底的に研究して、それが今もangelaの土台になっている。

KATSU 路上ライヴは、いかに次のライヴにお客さんを呼ぶかということを常に考えながらやっていました。僕らとマネージャーで色々マーケティングして、チラシを配っているマネージャーから「この曲のサビになるとお客さんが止まる」ということを教えてもらって、それがatsukoさんがファルセットを多用している曲でした。この曲を聴かせるには、信号が赤になるとお客さんが止まるので、そこで曲のサビがくるように演奏したり、そうすると本当にサビになるとお客さんの足が止まって。そこでatsukoさんの魅力がファルセットなんだとお客さんが教えてくれたというか。

astuko 自分は全然個性がない歌手だと思っていたので、強みを気づかせてくれたのはありがたかったです。デビューした頃はビブラートを多用する歌い方に、暑苦しいとか、ウザいとか言われることもありましたが、でも自分にしかできないものを批判されたからといってやめないで、続けることによってangelaはこういうものだって皆さん納得してくださって、そこはブレなくてよかったと思っています。

「angelaの名前や曲を売りたいとは思っていなくて、その曲を聴いた時に、アニメのタイトルやアニメのことを連想してくれればいい」(KATSU)

「『ファンになり辛いアーティストだよね』って自分達で言っています(笑)」(atsuko)

atsuko
atsuko

――アニメソングに命を捧げようと活動を始めて、そこと2人のangelaというグループの個性、唯一無二の部分をどう両立させていくのかということは、どう考えていたのでしょうか。

KATSU 今もそうなんですが、angelaの名前、楽曲を売りたいという思いは実はあまりなくて。アニソン作品のクレジットにangelaという名前が入っていなくても、僕らは全然構いません。楽曲を聴いた時に、そのアニメのタイトルやアニメのことを連想してくれればそれでいいんです。

atsuko 例えば「私たちはロックしかやらないので」というポリシーの方が、アーティストとしては正しい気もしますが、我々にはそれがなくて。色々な音楽に手を出してしまったっていうこともあるのかもしれませんが(笑)、それよりアニメに合った作品を書いて、それがシリアスで壮大な曲の場合もあるし、コミカルで面白おかしい曲の場合もあるし、こういう感じの曲はやりませんということは一切ないので、作品に合わせて変化しています。我々はそこに全く抵抗がなくて、でも初めて聴いた方とかは「今回と前回の曲調があまりに違いすぎない?」って戸惑う人もいるかもしれません。だから「ファンになり辛いアーティストだよね」って自分達でも言っています(笑)。でもコアファンの方は「それがangelaだよね」って温かい目で見守ってくれていて(笑)。なので「これがangelaだ」ということにこだわる気はさらさらありません。

「一番恐れているのはその作品に対して『angelaは合ってないよね』と言われること」(KATSU)

「アンダンテに恋をして!」(TV アニメ『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X』 OPテーマ/期間限定盤)
「アンダンテに恋をして!」(TV アニメ『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X』 OPテーマ/期間限定盤)

「アンダンテに恋をして!」(アニメ盤)
「アンダンテに恋をして!」(アニメ盤)

――本当にコミカルな作品からシリアスな作品まで、明るい曲から、壮大なバラードまで、その振り幅の広さこそが唯一無二といっていいかもしれませんね。

atsuko テクニックは学校に通ってレッスンを受けたりしたのではなく、自己流なので実はベースがないというか、そういうコンプレックスは常にあります。でもどんな曲でも「atsukoが歌えばangelaになるよね」とは言っていただけているので、これでよかったと思っています。

KATSU 一番恐れているのが、その作品に対して「angelaは合ってないよね」って言われることです。「この作品はangelaの曲じゃないよね」って言われたらangelaをやめる時かなというくらい、ひとつの作品に対して命がけでやっています。技術というより死ぬに物狂いでついていっているという感覚はあります。

――最初からしっかりブランディングができているので、ブレないところが強みですよね。例えば長く続いているブランドって、更新しながら進化していっていると思いますが、angelaもそういう感じだと思いました。

KATSU お互い飽きっぽい性格なので、色々なことにチャレンジしているのかもしれません。ロックな曲が続くと違う感じのものをやりたくなるし、バラードが続くともっとテンポが速い曲をやりたいとか、新しい音楽を聴くと、自分たちが持っている、といっても時代的に歌謡曲を聴いて育った世代なので、歌謡曲と今流行ってる音楽を組み合わせたらどうなるんだろうとか、そういう化学反応を楽しみながら、上書きしているような雰囲気です。でも常に逼迫しています。乾き切ったボロ雑巾のような、何も出てこないという時がよくあります。

atsuko デビューして3年でアイディアが枯渇したまま、15年やってきています(笑)。

「さいたまSAで単独ライヴをやって、恩人に恩返しをしたい」(KATSU)

――20周年が見えてきましたが、これからのangelaの“野望”を教えて下さい。

KATSU さいたまスーパーアリーナ(さいたまSA)でライヴをやりたいというのはずっと言っていて。路上ライヴをやっている時、僕達が警察に怒られたり、ホームレスに殴られているのを見て、「さいたまSAの前のけやきひろばで路上ライヴをやったら?」と声をかけてくれた人がいました。その方がさいたまSAの職員さんで、本当によくしてくれてそこから交流が始まりました。会場の中を見学させてもらったり、いつかここでライヴをやってみたいと思っていたら、アニソンの祭典“アニサマ”で初めてさいたまSAのステージに立つことができて、その時、その職員さんがangelaに“さいたまSAへようこそ!おかえり”っていうメッセージと共にお花を出してくれました。もう感激して、これまでイベントでは10回以上このステージに立たせていただいてるのすが、単独ライヴはやったことがないので、angelaとしては東京ドームよりも神聖な場所になっています。

atsuko さいたまSAに行くといまだに遊んでくれるし(笑)、その方は今はもう偉くなっていて、多分あと10年くらいで定年だと思うので、リミットが近づいてきました。その人がいるうちに、さいたまSAで単独ライヴをやりたいです。

KATSU やらないと恩返しができない。

「もっと身軽にライヴをやりたいと思って、まずアコギを買ってみましたが、まだ弾けません(笑)」(atsuko)

――全然できると思います。

KATSU 2daysにして、初日が解散ライヴで二日目を復活ライヴにすると、お客さんに来てもらえるかなとか(笑)、色々考えています。

atsuko さいたまSAでのライヴが最大の目標ではありますが、個人的には影山ヒロノブさんが、毎月「ソロアコギの旅」という、日本全国各地のライブハウスで小規模のライヴをやられているのを観て、その身軽さに憧れました。なのでまずはアコギを買いました(笑)。そのギターを持って、全国でライヴをする旅をしてみたいんです。

KATSU それって普通の人が聞くと、やればいいじゃんって思うだけだと思うけど(笑)。

atsuko でもギターが弾けない(笑)。早く覚えて、angelaの曲やカバー曲とか、半分おしゃべりでもいいし、そういうライヴをやってみたいです。

「コロナ禍では制作にたっぷり時間をかけることができて、納得のいくアルバムとシングルを作ることができた」(KATSU)

「オンライライヴはいつまでもできるものではないと感じた。やっぱりお客さんの前で歌いたいという思いが、どんどん大きくなっていきました」(astuko)

――去年からコロナ禍で、表現者として思いが変わった部分、新しく芽生えてきた思いはありましたか?

KATSU コロナ禍でみんな我慢を強いられて、疲弊していて、いつも応援してくれているファンの人たちを恋しく思う気持ちがますます高まったのですが、angelaは単独だと何もできないというジレンマが常にありました。

atsuko 結局伝えられる場がないのってつまらないというか、何もできない自分ってなんなんだろうとか、価値がないのではとか、そういうことを考えていました。他のアーティストの方はみんなSNSを使って色々な形で発信していて、我々もオンラインライヴを何度かやりましたが、限界のようなものを感じたのも事実です。もちろんたくさんの方に気軽に観て頂けるという部分ではいいと思いますが、これはいつまでもできることじゃないということを少し感じました。やっぱりお客さんの前で歌いたいという思いがどんどん大きくなっていきました。自分がどうしたいか向き合った時に、私はangelaでありつつも、結局一人じゃなにもできないということに気づいて。ずっとやっているピアノを担いで出かけて身軽にライヴをというわけにもいかないので、先ほどのアコギを買ったという話につながります。身軽に動いて、みなさんの前でライヴをやりたいので、アコギの練習をしようと思いました。

10thアルバム『Battle&Message』(5月9日発売/通常盤)
10thアルバム『Battle&Message』(5月9日発売/通常盤)

KATSU 5月9日に3年半ぶりのアルバム『Battle&Message』をリリースしましたが、本当は昨年の年末に発売するスケジュールで進めていました。でも緊急事態宣言が発出されてスタジオが使えなくなって、そのおかげというと変ですが、今までにはないくらい制作時間がたっぷりできました。これまでスケジュールが合わせづらかったミュージシャンに参加してもらうことができてこだわることができたし、練りに練ってトラックダウンをやり直すという、普段は絶対できないこともやりました。そうやって作ったアルバムと、7月7日に発売したシングル「アンダンテに恋をして!」(『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X』OPテーマ)は、これまで以上に納得のいく作品ができあがりました。

通算31枚目のシングル「アンダンテに恋をして!」のMUSIC VIDEOには、「“はめふら”のオープニングはangelaさん以外はあり得ないと思っていた」という声に代表されるように、作品にどこまでも寄り添うその楽曲を絶賛するコメントが多く寄せられている。アコーディオンやフィドルをフィーチャーした、ケルト音楽を取り入れたサウンドと心躍らせてくれるリズムが印象的で、atsukoの歌はどこまでハッピーな空気を感じさせてくれる。

angelaオフィシャルサイト