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新垣里沙  モー娘。卒業後、年7本以上の舞台に立ち続ける、20周年を迎えた人気女優の現在地

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
撮影/保坂萌,ヘアメイク/黒田はるな、平田恵理子

4月7日からシチュエーションコメディの傑作舞台『ラン・フォー・ユア・ワイフ』に出演

2012年にモーニング娘。を卒業してからは、年間平均7本のペースで舞台に出演。役者として進化を続けている新垣里沙。昨年事務所を退社し、フリーとなり、気持ちを新たに未来に向け走り出した彼女の元へは、舞台への出演依頼が引きも切らない。4月7日(水)からはシチュエーションコメディの傑作で、世界中で愛され続ける海外戯曲を上演するユニット「SHY BOY プロデュース」の第3弾公演『ラン・フォー・ユア・ワイフ』に出演する。現在稽古中の彼女にこの舞台の魅力、そしてフリーになって改めて思うところ、改めて演じるということへの熱い思いを聞かせてもらった。

『ラン・フォー・ユア・ワイフ』は、関西ジャニーズJr. の今江大地演じる主人公のタクシードライバーのジョンが、2人の女性との「重婚ライフ」を必死に守ろうとしてピンチに陥ってしまい、嘘を隠すために嘘を重ね、その嘘を守るためにさらに嘘を重ねるシチュエーションコメディだ。新垣はジョンに翻弄される二人の妻のひとり、メアリーを演じる。

『ラン・フォー・ユア・ワイフ』4/7(水)〜14(水)東京・オルタナティブシアター)、4/23(金)〜25(日)愛知・ウインクあいち、4/27(火)〜28(水)大阪・サンケイホールブリーゼ
『ラン・フォー・ユア・ワイフ』4/7(水)〜14(水)東京・オルタナティブシアター)、4/23(金)〜25(日)愛知・ウインクあいち、4/27(火)〜28(水)大阪・サンケイホールブリーゼ

「今回私は、主人公のジョンが重婚している二人の妻のひとり、メアリーを演じさせていただくのですが、本を読んでいると、勘違いやすれ違いが重なっていくところ、怪しいなって思う瞬間がすごくわかりやすく描かれていて、読んでいるだけで引き込まれるので、私達演者が体と言葉で面白く表現できれば、かなり楽しんでもらえる作品になると思います。2019年に出演させていただいた舞台『嘘と勘違いのあいだで』もそうでしたが、海外のシチュエーションコメディは、リズムやテンポがすごく大切だと思うので、今回も個性豊かな共演者の方達と、そこをしっかり楽しみながら作り上げていきたいです」。

「メアリーという女性の二面性、自分とのギャップを楽しんで演じたい」

ジョンの住むアパートの住人スタンリーは関西ジャニーズJr.の河下楽、そしてもうひとりの妻バーバラは緒月遠麻が演じる。さらに舞台初挑戦となるお笑いコンビ・流れ星のちゅうえい、WAHAHA本舗の我善導、清水順二(30-DELUX)他、ジョンを取り巻く人間たちによって様々なことが“絡まり”、爆笑が沸き起こる。客席から観ていると明らかにバレそうな嘘も、本人たちの何がなんでもこの嘘を突き通さなければいけないという強い意志が、面白さを増幅させていく。

「登場人物一人ひとりがみんないい人なので、必死に生きている感じがちゃんと出れば、その人達が嘘をつき通していけば、変な感じで勘違いが重なって、絶対面白い感じになりそう。メアリーは最初はジョンに従順な妻という感じですが、どんどんキャラが変わっていって、こんな人だっけ?と思われるくらいその二面性をしっかり、はっきりと出すことができればいいなと思っています。自分とは違うタイプの女性なので、そのギャップも楽しみながら演じたいです」。

舞台『殺人鬼フジコの衝動』(2013年)がターニングポイント

これまで様々な舞台で、あらゆる女性を演じてきた。自分の中でターニングポイントになったのは舞台『殺人鬼フジコの衝動』(2013年)だったと教えてくれた。

「役者として活動を始めて10年経ちますが、最初の頃はモーニング娘。だったということで、アイドルぽい役というか、キラキラしたヒロイン役や元気な役とか、そのイメージがあんまり崩れないような役をいただくことが多くて。でも4作品目の『殺人鬼フジコの衝動』をやってからは、全く自分とはかけ離れた女性を演じることが増えて、あまりヒロインという感じの役が来なくなりました。それがめちゃくちゃ嬉しかった。やっと役者さんとして見てくれるようになったんだって感じることができました。私的には、自分と全然かけ離れている役の方がやりがいがあるというか、もちろん等身大の役もそれはそれで楽なんですが、でも今回のメアリーもそうですが、この人を1ヶ月の稽古でもっと知って、それを自分じゃない、メアリーとして出すという作業がすごく好きなんです」。

「せっかちな性格からか、ひとつの舞台が終わった瞬間、その役のことは完全に忘れて、次の役にスイッチできる」

多いときは年間10本もの舞台に出演するが、ひとつの舞台をやりながら、次の舞台の稽古に入るということも珍しくないという。その感情の切り替え方や、人によっては役がなかなか抜けないというタイプの役者もいるが、どうやってひとつひとつの舞台、役と向き合っているのだろうか。

「『殺人鬼フジコの衝動』でフジコをやらせていただいた時に、知り合いに『その暗い気持ちをずっと心に持って演じて大変そうだし、終わっても役が抜けなさそうだよね』って言われましたが、私は終わってしまうとパンって切り替えられるタイプなんです。繊細な役者さんはプライベートまでその役を引きずってしまうという人もいますが、私は終わった瞬間、完全に忘れてしまいます。せっかちな性格が功を奏しているのかも(笑)。そういう意味ではその部分は苦労したことがないです」。

グループ在籍時に舞台に出演し、感じた「新しい世界」

新垣が舞台にのめりこむきっかけになったのは、まだグループ在籍中の2011年に出演した初めての舞台『真田十勇士』だった。

「もちろんグループでも刺激はあったのですが、でもやっぱり自分がどんどん上になっていくと、教える立場になって、どうしても学ぶことが少なくなってきます。その時に舞台に出て、外の世界にはすごい人たちがたくさんいることがわかって。それまでのアイドルとしての活動は、自分自身を好きになってもらうために新垣里沙というキャラクターでやっていました。でも役者は、自分とは違う役、その人の人生を背負って演じて、その役を好きになっていただけるか、共感していただけるかという勝負をしていて。それを演じている2時間の楽しさをそこで知ってしまって(笑)。それでグループを卒業して、迷わず役者の世界を目指しました」。

「舞台」と「ライヴ」の面白さ

映画やドラマの「映像」の世界も経験し、「舞台」との違いをどのように捉え、舞台中心の生活になったのだろうか。

「映像の方はそこまで経験がないので、まだその面白みがわかっていないこともありますが、何度かやらせていただいて感じたのは、例えばいきなり死ぬシーンから撮ったり、感情の作り方がすごく難しそうだなと思いました。舞台は今こういう時期なので、お客さんも迷いながら来てくれる方が沢山いると思いますが、やっぱりお客さんの前で生でやって、失敗できないという緊張感と、その日によってお客さんも違うので、毎回同じことをやっていても、毎日少しずつ違っていて。そういうところが舞台の面白さだとすごく感じます。私は昔からライヴが大好きで、ライヴもその緊張感すらもお客さんに伝わって、お客さんの緊張感も感じて、その日限りのものをみんなで作っている感じが好きでした」。

「3年位前から、いつか一人だけでやってみなければ、という変な感情が出てきていた」

20周年を前に、去年新垣は長年在籍した事務所を退社し、フリーになるという大きな決断をした。彼女に何が起こったのだろうか。

「3年位前から、いつか一人だけでやってみなければいけないっていう、変な感情が出てきて。12歳で事務所に入って、マネージャーさんを始め、会社の方には親のようにかわいがっていただいて、本当によくしていただきました。30歳を超えたときに一人でやってみようと思いましたが、ありがたいことに舞台にずっと出させていただけて、そのタイミングを逸していました。でも去年コロナになって色々なことがストップしてしまった時、これもタイミングということなのかなと感じて、事務所の方に相談しました。そうしたら応援してくださって、逆に背中を押していただきました。今感じることは、改めてマネージャーさんありがとうということです(笑)。マネージャーって本当に大変だし、でも素晴らしい職業だなって思いました。今全部自分でやっているのですが、大変さがわかりました。そんな中でまた新たな出会いがあったり、そこでつながって、ありがたいことに違うお仕事にまたつながったり。そういうことをダイレクトに感じることができるので、いい経験をさせていただいています」。

「役者は自分次第で、年齢に関係なくいつまでも輝ける仕事」

役者として10年。様々な役者と出会い刺激を受け、様々な演出家から色々な言葉を受け取り、これから理想とする役者像はどのようなものだろうか。

「役者っていい仕事だなって思うのは、私の周りにはいくつになってもキラキラ輝いている先輩方がたくさんいて。歳を重ねれば重ねるほど、自分が経験をすればするほどそれが武器になって、表現力につながるという意味では、アイドルとは真逆だなと思いました。以前、三田佳子さんと一緒に舞台をやらせていただいた時も、お芝居はもちろん人柄が本当に素晴らしくて、三田さんは70代ですがあんなにキラキラ輝いていて、舞台の上で立ってる姿を見た時に、すごく夢があると思いました。頑張れば、自分次第で年齢関係なくいつまでも輝けるというところが、役者のいいところです」。

「これまではとにかく舞台、これからは舞台を続けながら、みなさんがハッピーになることを届けたい」

コロナ禍で活動がストップしてしまったことをきかっけに、YouTubeを始めたり、SNSはもちろん、ラジオ番組でも発信を続けている。4月からはAmazonPrimeのバラエティ番組『キミを推しえて』でMCにも挑戦する。これからやりたいこと、目指す「場所」を教えてもらった。

「これまでとにかく舞台舞台と懸命にやってきましたが、ちょっと違う方向でも動きたいと思っています。歌もやりたいです。ライヴは絶対やりたくて、それも今企んでいます(笑)。他にも今度バラエティ番組のMCをやらせていただいたり、皆さんの目に留まる機会が増えたらいいなと思っています。それから自分のアクセサリーブランドも立ち上げたいです。色々やりたいことがたくさんありますが、軸足は役者として舞台に立って、そこにプラスして、みなさんがハッピーになるようなことをお届けできればいいなと思っています。まだふんわりなんですけどね(笑)」。

『ラン・フォー・ユア・ワイフ』オフィシャルサイト

新垣里沙 Instagram

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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