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秋山黄色 コロナ禍での初ワンマンライヴで、ファンと深く共鳴し合う

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
3月10日Zepp Tokyo(写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ)

3月10日、注目のシンガー・ソングライター秋山黄色の全国ツアー『一鬼一遊TOUR Lv.2』の3公演目となるZepp Tokyo公演を観た。とにかくその“爆発力”に、その場にいたファンと同じように心をわしづかみにされてしまった。

「一人ひとりのおかげでライヴができ、歌えている」

秋山は2020年3月4日に1stアルバム『FromDROPOUT』でEPICレコードよりメジャーデビュー。しかし新型コロナウイルスの影響を受け、デビュー後に控えていた初の東名阪ワンマンツアー『一鬼一遊TOUR』が中止となってしまい「一体メジャーデビューってなんだったんだろう」と、この日もそんな素直な思いをぽつりと漏らしていたが、他のアーティストもそうだったように、デビュー直後に思うような活動ができなくなった悔しさは、他人はわからない計り知れないものがあるはずだ。今回のツアーが自身初の全国ツアーとなると同時に、デビュー後初の有観客でのワンマンライヴになるが、客席はソーシャルディスタンス、マスク着用、声出し禁止。正直、本人もそしてファンももどかしいはずだ。しかし秋山はこの状況下でライヴを開催することの難さを繰り返し話し、それでも駆け付けてくれたファンと、ツアーという舞台を整えてくれた関係者に感謝の気持ちを伝えていた。

「冷めているので普段はそんなに思わないけど」と言いつつ「一人ひとりのおかげでライヴができて、歌えていると思う」「みんな好きな音を聴きに来ているんだと思うけど、僕も皆さんの声を聴きに来てるんだなって」。この一年で芽生えた感情や、それまで感じていたことを自分なりに咀嚼し直して、気持ちを新たにツアーに臨んだのではないだろうか、そう感じさせてくれる言葉と歌が熱となって客席に放熱されていた。

感情を露にし、ストレートにとにかく“届ける”

シンプルな編成とは思えない豊潤なサウンド。そしてとにかく太くて体を揺らす。その骨太なサウンドに乗せ、光と影を共に色濃く感じさせてくれる声が「サーチライト」の<光はいつも 人を照らす>という歌詞で、文字通り客席に光を差す。3月3日に発売したばかりの2ndアルバム『FIZZY POP SYNDROME』からの曲はもちろん、これまで大切に歌ってきた曲を時にはシャウトし、そしてギターを轟音でかき鳴らし、感情を露にし、ストレートにとにかく“届ける”。ギターを弾き、歌う姿、そのメッセージを届ける姿は、まさにロックスターの佇まいそのものだ。嘘がない、リアルで誰も傷つけないその歌詞に込めた言葉の数々は、優しさを湛えつつも現実を切り裂くパワーに満ち、それが聴き手の心をノックし、奥深くまで入っていく。

2ndアルバム『FIZZY POP SYNDROME』(3月3日発売/通常盤)
2ndアルバム『FIZZY POP SYNDROME』(3月3日発売/通常盤)

2ndアルバム『FIZZY POP SYNDROME』で見せた“深化”

2ndアルバム『FIZZY POP SYNDROME』は前作と比べると、ポップなバンドサウンドに彩られている。この作品について秋山は「一筋縄ではいかないこのご時世に、自分が音楽から引き出せる力ってなんだろう?その答えを詰め込みました。体に良くない「POPS」ですが、あなたの苦しみが『苦くておいしい』に変わるかもしれません」とコメントしているように、この困難な時代と向き合い導き出した、彼なりの答えを歌詞に紡ぎ、彼なりの距離感でリスナーに伝え、そっと背中を押してくれる。音楽的な面白さはもちろん、歌詞の温度感も前作と変わり、さらにスケール感が増した一枚になった。

マスクを着け、声を出せないファンと魂を交錯させ、共鳴

Zepp Tokyoの本編ラストの楽曲が終わると、マスクを着け、声を出せないファンとしっかりと魂を交錯させ、そこで生まれるものを確かに感じ取り、共に<居てくれ>と共鳴し合っているようだった。なおこの日のライヴの模様は、4月3日(土)に有料配信される。

3月26日『Mステ』初出演

秋山は3月26日(金)オンエアの『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に初出演し、アルバム『FIZZY POP SYNDROME』にも収録されている「アイデンティティ」を披露する。秋山黄色の世界の根底に流れるものを感じさせてくれるようなこの歌を、お茶の間に突き刺す。さらに3月29日(月)には『CDTVライブ!ライブ!4時間スペシャル』(TBS系)に出演し、同じく2ndアルバムに収録されている「夢の礫」を披露する。その“爆発力”は、多くの視聴者を夢中にさせそうだ。

秋山黄色オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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