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リトグリ日本武道館ライヴは、4人で紡いだ5人の“絆”の物語 葛藤と不安を乗り越え、手にした強さ

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

メンバーが武道館ライヴへの不安と葛藤を赤裸々に語る

Little Glee Monster(リトグリ)が1月27、28日、全国アリーナツアー『Little Glee Monster Arena Tour 2021“Dearest”』の日本武道館公演を行なった。その2日目の模様が2月13日にオンデマンド配信(20:00~)されるが、そこにはコロナ禍で開催すべきなのか、メンバーの芹奈が不在の中で行うべきなのか、不安と葛藤の中で心が揺れ動き、悩みに悩んだ4人の正直な思いが語られている。

グループ結成以来最大の危機を、どう乗り越えたのか

このライヴは収容人数を5000人以下にし、開演時間も早めるなど政府機関や東京都のガイドラインを遵守し、感染予防対策も万全にした上で行われ、ファンの協力もあり2日間開催することができた。ファンが武道館の客席に入ってまず目に飛び込んでくるのは、ステージ中央で輝く五角形の巨大モニターだ。12月から休養に入った芹奈が不在のライヴ。グループ結成以来最大の危機にさらされ、しかし幼い頃から苦楽を共にしてきた5人の固い絆を表す五角形は、決して形を変えることなく輝いている――そんな4人の強い意志が伝わってくる。

メンバー一人が不在という、ボーカルグループにとってあまりも大きなアゲインスト

「紅白歌合戦」を始め、年末の音楽番組に出演し、ボーカルグループでメンバーが一人不在という大きなアゲインストの中で4人は力強い歌声を披露した。それだけでも大変だが、武道館という大舞台、しかも約一年振りの有観客ライヴということで、また違うプレッシャーをメンバー、スタッフは強く感じていたはずだ。「年明けには5人で活動できると信じていた」というアサヒの言葉が、当時のメンバーの素直な気持ちを表しているのではないだろうか。しかし4人でやるという覚悟を決めたメンバーは、本番まで約2週間、忙しいスケジュールをこなしながら、のべ20曲の歌パートの変更とダンスの修正に取り組んだ。「みんな(スタッフ、ミュージシャン)が守ってくれたし、助けてくれました。だから前向きになれた」(manaka)と言うように、チーム・リトグリが一丸となってメンバーを助け、盛り上げ、メンバーもそれに応えようと懸命に取り組んだ。

4人だからこそできること

芹奈の穴をいかに埋めるべきかという思考から、4人だからこそできることをやろうという前向きな気持ちに変わっていく4人の姿を、オンデマンド配信の映像では捉えている。メンバーのそのままの姿、もがきながらも強くなっていく4人の熱量が、武道館へと向かう様子は感動的だ。

ベストアルバム『GRADATI∞N』(1月20日発売/通常盤)
ベストアルバム『GRADATI∞N』(1月20日発売/通常盤)

1月20日に発売された、初のベストアルバム『GRADATI∞N』は、全49曲の収録曲中、新曲2曲、再録曲16曲を含み、リトグリのこれまでとこれから、進化していく5人の姿を鮮やかに捉え、“温もり”と“熱さ”を感じさせてくれる一枚だ。この作品を引っ提げて臨んだ武道館のステージも、やはり4人の温かさと、熱い歌で彩られていた。『Everything could be your chance』『小さな恋が、終わった』では、「4人だからこそ」できるパフォーマンスで、思いを伝えていた。その歌を支えるバンドの音も素晴らしかった。強固なバンドアンサンブルが作り出す極上のグルーヴが、4人の思いが込められた、気持ちが乗った歌を真っすぐ客席へと届け、感動を増幅させる。客席は、大声で声援できない代わりに手拍子、拍手、そしてバルーンで思いをステージ上の4人と芹奈へ届ける。アンコールの『Dear My Friend feat. Pentatonix』では、「会場ではやっぱり皆さんの歌声が聴きたい!」というメンバーのリクエストで立ち上がった「Dearest Voice企画」に寄せられた、ライヴに参加しているファン、会場に来れなかったファンの歌声が武道館に響き渡った。コロナ禍の中で希望を与えてくれ、聴き手にまさに寄り添うこの曲は〈約束だよ また会おう〉という言葉で終わるが、武道館にいる全員からの芹奈へのメッセージに聴こえた。

歌とMCから、メンバーの芹奈への溢れる思いが伝わってきたライヴだった。こんなにも人が人のことを思うという、コロナで包まれてしまったこの時代に最も必要とされることを4人は伝えてくれた。4人が去ったステージの五角形のモニターには、直筆メッセージが映し出され、メンバーの温かさを改めて感じることができた。ライヴ後はSNS上で「涙が止まらなかった」という声と、強くなった4人の素晴らしい歌声を称える声が多く飛び交っていた。

「帰ってくる場所はずっとここにある」

2月6日(土)には「SONGS」(NHK)に出演し、メンバーが芹奈への思いを語っていた。「軌跡」メドレーと「絆」メドレーで代表曲10曲を披露。圧倒的な歌声とハーモニーを聴かせてくれた。「帰ってくる場所はずっとここにある」というMAYUの言葉通り、芹奈が歌う「場所」を空けてパフォーマンスしていた。五角形はさらにその強度を増し、絶対に歌を止めないんだという覚悟を決めたメンバーのしなやかで強い気持ちが、どこまでも眩しい。

Little Glee Monster オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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