brainchild's 「闇も光も両方ちゃんと受け止めて、次に進まなければいけない」

写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ/アリオラジャパン

デジタルシングル「Set you a/n」(8月7日配信スタート)
デジタルシングル「Set you a/n」(8月7日配信スタート)

EMMAこと菊地英昭(THE YELLOW MONKEY)プロデュースによるプロジェクトユニットbrainchild’sのニューデジタルシングル「Set you a/n」(セッチューアン)が、8月7日にリリースされ好調だ。新曲としては2018年4月にリリースされた5thアルバム『STAY ALIVE』以来約2年4か月ぶりで、「何が正解かわからなくなっているこの世の中で、とにかく気持ちよくビートと音像を楽しんでもらい、いろんなことにバランスとってもらえたらと思い作った」(菊地)という楽曲について、第7期メンバーの菊地(G)、渡會将士(Vo/FoZZtone)、神田雄一朗(B/鶴)、岩中英明(Dr/WHITE LIE) 、そして今作から新たに加入したMAL(Key/ArtyPacker)の5人に話を聞いた。

「SNSで見た薄っぺらいやりとりを面白がりながら、それを歌詞にした」(渡會)

――メジャー1stアルバム『STAY ALIVE』を発表してから2年4か月という時間が経過しましたが、「Set you a/n」は世の中の状況の鬱憤を晴らすかのように、ポップでむちゃくちゃキャッチーな明るい曲に仕上がりました。

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菊地 3~4曲レコーディングしていた中の一曲で、レコーディングしている途中にこういう状況になってしまい中断して、動けるようになってからようやく完成させました。

渡會 しんどい空気の中で振り切って面白い内容にしようと思って、色々こねくりし回して書いて、でも第一案と全然変わりました。去年の12月頃に第一案を出して、レコーディングをしていたら、あれよあれよという間に世の中の状況が変わってしまい、中断してしまいました。自分の全都道府県ツアーも残り5本というところで止まってしまって、どうしようか色々考えている時に、SNS上では“正義”とは?みたいなニュアンスの発言がすごく多くて、でも正義とか悪を謳うそれって、一次元的で実際はすごく薄っぺらいことを言っているなと思って。その横ベクトルだけではなく、縦とか斜めからも見る必要があるし、答えの出し方がもっとあると思うんだけど、みんなのディベートが下手くそって感じで、ゴチャゴチャ揉めまくっていて。それで心を痛めている人もいっぱいいて、その感じをアッパーに、矛盾していいんだよ、という感じを書きたいと思って、大分遊びながら楽しく書けました。

MAL 正解は言わないっていうところがいいんですよね。ちゃんと余白を聴いている人に与えられているところがいいなって。

「元々ピアノ自体がすごく好きなので、ピアノの音が欲しいなってずっと思っていたので、MALに弾いてもらいました」(菊地)

――MALさんは以前からbrainchild’sの制作に関わっていましたが、レコーディングに参加したのは初めて、という書き方で間違っていないですか?

MAL 過去のメンバーも集合して全員でレコーディングした曲が1曲ありますけど、いわゆる制作段階から本格的にっていうのはこれが初めてです。

菊地 この7期は、MAL以外の4人で4年やってきて、ソリッドな音で世界観を追求してきたんですけど、『STAY ALIVE』でやっていた音楽の中にも、オルガンがすごく合う曲とかもあったし、元々ピアノ自体がすごく好きなので、ピアノの音が欲しいなっていうのはずっと思っていて。それで、前にツアーに参加してくれたMALに弾いてもらいたいなと思ったので、ちょっと次の作品とツアーお願いできる?ってなって。それとは別に、ファンクラブのイベントで全員で演奏する機会が1年に1回あったんですけど、7期の曲も彼にライヴアレンジをしてもらってやってみると、世界観が全然ガラッと変わって、こういう方向性もできるんだって思っていました。

――鍵盤が入るとガラッと曲の表情が変わりますよね。

菊地 自由度が広がるので、とめどもなく入れたくなるので、それこそ折衷案を出すのが難しくて、そこが課題だと思うんですよね。ここでよしっていうところの判断が難しいです(笑)。

「呼んで欲しいなってずっと思っていたけど、要らないよね、ピアノ、と思うくらい4人で完成されていたので、呼ばれないだろうなって思っていました(笑)」(MAL)

――MALさんはbrainchild’sのこと、音楽をどう見ていたのでしょうか?

左から神田雄一朗(B/鶴)、岩中英明(Dr/WHITE LIE)、菊地英昭(G)、渡會将士(Vo/FoZZtone)、MAL(Key/ArtyPacker)
左から神田雄一朗(B/鶴)、岩中英明(Dr/WHITE LIE)、菊地英昭(G)、渡會将士(Vo/FoZZtone)、MAL(Key/ArtyPacker)

MAL アルバムをリリースするたびに、呼んで欲しいな呼んで欲しいなって思っていました。でも自分からは言えないですし、それはおこがましいよって思っていたし、要らないよねピアノ、と思うくらい4人で完成されているなと思って、僕はタイプとしては弾く時は弾くんですけど、弾かない時は要らないよねって引いてしまうんです。シンプルな方がカッコいい時もあるし、逆に鍵盤は世界観をとめどなく広げられるので、でも楽曲ごとに広げればいいということでもないと思うので、呼ばれないだろうなって思っていました(笑)。

菊地 この曲はピアノが入ったことでワッチ(渡會)の歌詞も変わりました。

渡會 ギターロックとしてのカチッとしたストリートな印象に、鍵盤が一発入っただけで華やかになるので、もう少しポップでもいいのかなって。

――ライヴ映えしそうな疾走感とグルーヴが気持ちいいです。

菊地 実はもう1曲候補曲があったんですけど、真逆な感じで、詞の内容も結構ダークで(笑)。

渡會 ゴリゴリ社会批判してます(笑)。誰とは言いませんけど、みんなが嫌いな人を私も嫌いで、ふざけんなっていうことをオシャレに書いてます(笑)。

――まさに大人のロック。それは配信しないんですか?

菊地 それは頃合いを見てかな(笑)。今ハマりすぎちゃう感じの曲だったので。

――神田さんは「Set you a/n」を最初に聴いた時の印象はどうでしたか?

神田 僕はbrainchild’sの中で、度合いはあるにしろ、そこまで急にポップなのがきたなっていう感じはなくて。リード曲としてなかったかもしれないですけど、今までもアルバムの中にちょっと爽やかな曲やポップな曲はあったので、その一面を今回は前面に出したのかなっていう印象だったので、自然に入ってきました。

岩中 俺もそんなに違和感はなくて、録った時はまだMAL君がいなかったので、割と今までの7期の明るい曲という印象でした。でもピアノが入ると全然違う印象になって、組み合わせの妙というか、7期プラスワンではなく、新しい形になったと思いました。

――言葉遣いが絶妙ですよね。

渡會 楽しく書きました。毎日相反するものが一緒になって存在している実例をずっと考えていて(笑)。歌詞にもありますが、<スイートチリソースのように>とか<ライトヘビー級なパンチライン>とか、“軽重い”ってなんて面白い言葉だろうって思って(笑)。カッコいいだろって聴いてもらうより、よく考えてみるとすごく変な言葉かもこれ、みたいな、面白いと思ってもらいたくて書いていた部分もありました。

――EMMAさんは曲を精力的に書いているそうですが、コロナ前と後で、出てくるメロディや提示したい音というのは、変わってきていますか?

菊地 家にいる時間が長かったので、アイディアはすごく出てきました。負のパワーをプラスに変えるじゃないですけど、普段の流れの時よりもより制作欲が湧くというか。だからなぜかストックが増えています。普段のツアーをやっている流れや、メンバーはそれぞれ“場所”があって、自分もTHE YELLOW MONKEYというバンドがあるけど、そういうところで時間が流れていくと、意外と楽曲制作の時間って作れないというか、作らないというか。去年までは、あまり詞を書いてこなかったけど、こういう時は書けますね。外からの変化をすごく受けて、自分にもそれが落ちてくるので、逆に創作欲が湧いてきます。

「今まで色々なことに甘えてきて、こういうことをきっかけに少しでも変わっていこうとするのは、すごく大切なことだと思います」(菊地)

――こういう状況の中で表現者として、考え方で一番変わったところはどういう部分ですか?。

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渡會 東日本震災の時は「不謹慎」という言葉があっちこっちで使われるようになったり、今回コロナで「不要不急」っていう言葉が飛び交って、どちらも死ぬほど嫌いな言葉です。みんなが一斉に必要なもの、そうじゃないもの選び出してる感じが、気持ち悪いなって思いました。そんなものあるわけないのにと思って。でも段々みんなも落ち着いてきて、既に存在して、必要だからそこにあるということが理解できてきて。必要なもの、必要じゃないもので、自分の大切なものを仕分けしていくと、すごくつまらないものしか残らないと思います。音楽に関してもライヴがストップしたことで、配信ライヴに切り替わって、でもファンの方の中には、「配信ライヴたくさん観ることができて嬉しいけど、やっぱ生じゃないとダメなんだよな」と言ってくださる方もいて、やっぱり全部大切だからあったんだということを確信できたという部分もあります。一方で、ミュージシャン同士で呼びかけあって、ちょっとやってみない?やっちゃう?という感じで、みんなで新しいことができた時間でもありました。大変なことがあった時にすぐ動き出せる人が、そういう人が自分の友達にいたり、仲間にいたということがわかって、すごく大切なことに気づきました。もちろん世の中大変な時ですけど、すごく重要な試練という感じもしたし、より一層俺の友達みんなカッコいいとか、俺もそれに参加してカッコいいとか、自分を損なわない何かも見つけられた感じです。

岩中 自分のバンドもツアーが中止になって、ライブハウスが配信をやったり、みんなできる事をやろうとしてるじゃないですか。自分達もそうなんですけど、その中でこういう状況だからこそ、うわべだけではなく、気持ち入れてやってくれる人とか、その逆もしかりで、そこがより見えてきたと思います。リモートで曲を作ったり、今までやってこなかったやり方で曲を録って発信することもやっていますが、個人的には以前の状態にはすぐには戻らないと思っているので、できるること増やしつつ、またお客さんを入れてライヴをやりたいって心から思います。

MAL 僕ももちろん自分のライヴは飛びましたし、brainchild’sとしてのライヴも延期になって、色々な人が配信や様々な形を模索している中で、それをカッコいいなと思いつつも、あまり面白いと思わない自分がいました。配信をやるために音楽をやってきたわけではないし、実際ライヴやスタジオで面白い人と会って、その人と一緒にやっていく中で刺激を受けてアイディアが出てきたり、そうして自分をランクアップさせたいなって常々思っていて。そういうことを続けてきたので、配信はちょっと違うなと思って。だから、自分が呼ばれたら参加して、もちろん最高のプレイはしますけど、自分から進んでやろうとは思えなくて。だから有り余る時間の中で、音楽以外の事を勉強してみるのもいいなと思って、例えばコロナで事業に影響を受けている人達への、国からの救済措置を徹底的に調べたり、そういうことに全く興味がなかったので、逆に勉強しました。だからこれはいい機会なので、ピアノの腕は錆びさせない状況にしておいて(笑)、違う分野、経済や財務会計の知識を得ようと絶賛勉強中です。人生観を変えられるような状況だと思います。

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菊地 本当に思うのは、完璧はないなということです。自分たちも含め、人類全体に言えることですが、色々なことに甘えてきて、こういうことをきっかけに少しでも変わっていこうとするのは、すごく大切なことだと思います。でもこの病気に罹患して大変な思いをした方や、家族等を亡くされた人は大勢いて、本当に悲しいことだし辛いです。不滅なものって、例えば人の気持ちとか、本当に限られるというか、やっぱりものに頼ってはいけないということを実感させられました。だから色々なことを考えられる柔軟性も必要だし、自分はライヴが好きでずっとやってきた人間なので、そこが削られると辛いですけど、でもだからといって、正直そればかりに頼っていてはダメだなという気持ちもあります。何かしら光を見つけたいというか、闇も光も両方ちゃんと受け止めて、次に進まなければいけないと思っています。

「配信ライヴは、普通のライヴとは違う、スタジオ感を出した、キチッとしたものを作ることができたら」(菊地)

――ツアーも延期になってしまいましたが、ファンもそうですが、ミュージシャンも音を出していないとストレスが溜まりますよね。

神田 僕も含めて、たぶんみんな“ライヴ筋肉”が著しく落ちている気がしています。ライヴで使う筋肉が全然使われてない感じがするんですよね。直感とか、反射神経とか、絶対ライヴ中に必要なもので、お客さんのノリを察知したり、メンバーの感情を察知するのって、やっぱり実際にやっていないと感覚が鈍ると思います。

渡會 喉系は、割と制作で歌っているので維持できているとは思うんですけど、意外とボーカリストはみんなマスクし慣れていて、保湿は完璧だと思います。自分のツアーで消耗していたということもありますが、STAY HOME中は「声綺麗だな、俺」って思いました(笑)。

菊地 ツアーが延期になってしまったので、5人でのスタジオライヴを配信しようと思っています(『brainchild’s We Hold On na tei de WHO 2020 “Set you a/n” 』)。普通のライヴとは違って、逆にスタジオ感を出した、キチッとしたものを作ることができたらいいなと思っています。

――セッションをしっかり見せるという感じですか?

菊地 音でワーって盛り上がるライヴのよさを一旦忘れるというか、音でじっくり聴かせることができたらいいなと思っています。

◆有料配信イベント『brainchild’s We Hold On na tei de WHO 2020 “Set you a/n” 』

9月15日(火)#1配信回[19:00 OPEN / 19:30 START]

9月23日(水)#2配信回[19:00 OPEN / 19:30 START]

10月1日(木)#3配信回[19:00 OPEN / 19:30 START]

10月9日(金)#4配信回[19:00 OPEN / 19:30 START]

10月11日(日)#5配信回[17:00 OPEN / 17:30 START]

ALL STREAMING/視聴料金 ¥1,650(税込)※アーカイブ視聴も予定。

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