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ビートたけし、ゲームを語る 34年の時を経て、再び“ひと筋縄ではいかない”ゲームをプロデュース

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/徳間書店

『たけしの挑戦状』以来34年振りにゲームのプロデュースを手掛ける

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ビートたけしが責任編集長を務めるネットマガジン『ビートたけしのお笑いKGB』発の、スマートフォン向けゲームアプリ「お笑いKGB ~THE GAME~」(iOS・Android対応/無料)が2月28日にリリースされた。ビートたけしのゲームというと、1986年に発売された伝説のゲーム(ファミコンソフト)『たけしの挑戦状』(タイトー、現・スクウェア・エニックス)があるが、今回のゲームはたけし編集長が大量作成し、コーナー化までされた「新しい四股名」と連携。さらにビートたけし“ほぼ”単独ライブで伝説となった「ヅラ飛ばしゲーム」も実装し、ドッキングさせた相撲育成ゲームだが、当然“ひと筋縄ではいかない”内容で、話題を集めそうだ。このゲームについて、企画者のたけし、そしてアプリの開発、ゲームの運営を手がけ(株)京風とまとの担当プロデューサとディレクターに話を聞かせてもらった。

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このゲームは、プレイヤーが相撲部屋の親方となって力士を育てるロールプレイングゲームで、「ヅラ飛ばし」「ヅラ衰弱」などのミニゲームで獲得したポイントで、力士を成長させるためのちゃんこの具材を購入できるというもの。育てた力士を“相撲ダンジョン”に送り込むと、敵の力士たちとのバトルが発生し、勝利すると相撲の神様直伝の“お笑いKGB秘技48手”を習得し、さらにダンジョンの奥に進める。力士同士の勝ち抜きトーナメントも毎週開催される予定だ。まずはこのゲームの“遊びどころ”から聞いてみると―――。

琴梅独
琴梅独

「『玉出海(たまでかい)』とか『琴梅独(ことばいどく)』とか、たけしさんに命名いただいたギリギリのヤバい名前の力士キャラがいっぱい登場するので、お気に入りの力士キャラを選んで、ちゃんこを食べさせて育成していきます。開発中もデモ版でプレイするのですが、つい感情移入しちゃうんですよね。見た目のインパクト重視でデザインしてもらっているので、いっぱい集めて自分の相撲部屋に並べて眺めるだけで、日ごろのストレスを忘れられると思います(笑)」(ゲームP)

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「ゲームのメインコンテンツとして『相撲ダンジョン』があるのですが、次々と登場するヘンテコな力士を倒していくのが気持ちいいです。ゲームを進めていくと必殺技である『秘技48手』が使えるようになるのですが、『カツラかぶせ』や『チ〇ポ舐め』など、これ本当に必殺技なの?と言われてもおかしくない、他のゲームでは考えられないようなトンデモ技が使えるようになります。ダンジョンの他にも、日本一の力士を決めるトーナメント『相撲トーナメント』があり、育てたお気に入りの力士を出場させることができます。こちらは対ユーザーとのバトルになりますので、ぜひ日本一を目指してほしいです」(ゲームD)

たけしのアイディアから生まれてきたゲームということで、力士や必殺技のネーミングひとつとっても、当然、本当に商品化できるのか?というきわどいもののオンパレードだが、ゲーム化にあたって苦労した点を教えてもらった。ちなみにプロデューサーはたけしファンの50代男性、そしてディレクターは20代男性と、制作サイドの世代間ギャップがこのゲームを幅広い世代向けのものにすることに繋がっている。

「ギリギリ感満載の感じを、“マジメにおバカに”をモットーに作り込んでいきたい」

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「ヅラゲームは、『お笑いKGB』のコンテンツとして、たけしさんが話された内容が元ネタとなっています。ヅラの被さり方などは細かくアドバイスしていただきました。私はたけしさんのオールナイトニッポンを聴いて育った世代なので、あの深夜3時までラジオを聴いて、放送が終わってからも思い出し笑いして、一睡もできずに翌日学校に行く、みたいな当時の思い出がよみがえってきて、今でも忘れられないあの感覚を大事にしたいと思い、いただいたアイディアのおバカ度を、ゲームを使って加速できるように気を配りました。秘技の中に例えば『肛門に素早く指を入れて、相手がしおらしくなる』といった、キワドイ技がいっぱいありまして(笑)。『これをどうやってゲームに組み込もうか……やっぱりゲーム化は無理か…』と、実はかなり追い込まれましたが、うちの若いゲームディレクターがうまく演出を考えてくれて、なんとか完成にこぎつけつことができました(笑)』(ゲームP)。

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「個人的に、おバカなことをマジメにやっているたけしさんと、渋くてイケてるたけしさんの2つのイメージがあるのですが、今回はおバカなことをマジメやっているたけしさんのほうを意識してゲームを作りました。“マジメにおバカに”をモットーに作り込んでいます。プロデューサーからたけしさんのアイディアをそのまま無茶ぶりされまして、頂いたアイディアのほとんどがキワドイもので(笑)、そのまま形にしたらストア(AppStoreやGooglePlay)にNGをくらうだろうなぁと思いながら、何とか形にしました! ギリギリ感満載の感じを、皆さんにも是非プレイしていただき、体感してほしいです。今後も様々なトンデモアイディアがくると思うので(笑)、“マジメにおバカに”組み込んでいきたいです」(ゲームD)。

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今回のゲームアプリには『お笑いKGB』発の「ヅラ飛ばし」や「ヅラ神経衰弱」など、カツラにこだわったミニゲームが続々と登場するが、このカツラに対する執着、こだわりをたけしに直撃してみると、「あらゆる生物で擬態をするっていうのはいかにも面白くて、カニやなんかが背中にゴミ背負ったり、ヤドカリが貝背負ったり、いろんなことをするのは、生物として面白いけど、人間もさすがは生物だっていう。人間がカツラを乗せんのは主に擬態ではなくて、女にモテるため。老けたのをごまかすためだっていうのが、面白いっていう。そこが普通の生物と違うところだから、若いフリをするとか、そういうセコい考えが面白い」と、“マジメ”に教えてくれた。

「頭が鍛えられていることを忘れてしまうのがゲームであって、頭を使うことを自覚させるのはゲームじゃない」(たけし)

そしてビートたけし×ゲームというと『たけしの挑戦状』が思い出されるが、当時あまりに斬新で、クリアすることが難しく、泣く子供たちが続出したという伝説のゲームについて、さらに「ゲーム」というものをどう捉えているのか、たけし流ゲーム論を聞いた。

「いいものは、笑えばいいって。くだらなくて、笑えばいいんだ。笑うんだけど、実は頭を使ってることに気が付かないのがゲームというものだって。頭が鍛えられていることを忘れてしまうのがゲームであって、頭を使うことを自覚させるのはゲームじゃない。気が付いたら、頭を使っているっていうのがゲームなんだ。『たけしの挑戦状』は、ゲームを超えて、人生観まで混ぜ込んで。ゲームオーバーになると〈お前らこんなことやってて暇なのか〉というメッセージを出して、人生まで考えさせられる。こんなものを売っていいのかという、経済まで考えさせる見事なゲームじゃないかと」と、『たけし~』のを自画自賛し、ゲームというものへの独自の考え方を聞かせてくれた。

電車に乗れば小学生からサラリーマン、年配者までがスマホでゲームに興じている現代社会。ビジネス的な側面から見ると魅力的なマーケットだが、たけしはこうした風潮をどう捉えているのだろうか?

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「ゲームを出している我々にとっては非常にいいことだ。じゃんじゃんやれ。寝ないで、金をつぎ込め。親に金を借りても、あらゆることをしてでも金を入れろ。それが現代だ。そいで、このことを信じるなって。こういう俺の話を信用するバカがいるから困るんだよ」。

次に考えているのは、AV女優、AV男優がのし上がっていくゲーム!?

『お笑いKGB ~THE GAME~』がローンチしたばかりだが、次のゲームのアイディアは、すでにたけしの頭の中にあるのだろうか。

「AV女優やAV男優を育てるっていうのがあって。AV女優、AV男優がだんだんのし上がっていくのをゲームにしようと思ったんだけど、よく考えたら、俺よりみんな見てる奴のほうが詳しいって」。

『お笑いKGB~THE GAME~』公式チャンネル

『お笑いKGB~THE GAME~』

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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