高まるアナログレコード人気 世界中のレコード・ラヴァーの夢が広がる“オーダーメイドヴァイナル”とは 

(写真:アフロ)

国内外でさらに高まるアナログレコード人気

国内外でのアナログレコード人気はますます高まる一方で、日本レコード協会発表のデータによると、国内おけるアナログレコードの生産数は年々増加傾向で、2018年の生産枚数は111万6000枚。2009年は10万2000枚で、この10年で約11倍と伸長している。アメリカの音楽シーンでも2018年のCD売上額は前年比34%減の6億9800万ドル(約781億円)、一方アナログレコードの売上げは対前年比8%増の4億1900万ドル(約470億円)と、その売上げ額は逆転しそうな勢いだ。今年3月にはタワーレコド初のアナログ専門店 『TOWER VINYL SHINJUKU』が、タワーレコード新宿店10Fにオープンし、日本人に混じって外国人の姿も多く見られる。プレイヤーも手ごろな価格で手に入れることができるようになったことも、マーケットの勢いを後押ししている。1万円ほどで手に入るものもあるし、USBでパソコンに繋いでデータ化できるもの、スピーカー内蔵のものもある。

「少数ながら熱狂的に求められている、いわゆるマニア向けの作品をリリースしたかった」

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そんな近年のアナログレコードの好調さを受け、2016年にソニー・ミュージックダイレクト(SMDR)が、アナログ専門レーベル「GREAT TRACKS」を立ち上げた。その創設3周年を記念して、ファンのリクエストによる新しいアナログリリースプロジェクト「GREAT TRACKS Order Made Vinyl」(以下 OMV)を、8月30日からスタートさせ、注目を集めている。これは、ユーザーからの商品化リクエストに基づき、12インチ/7インチ、LP/シングル(33 1/3/45rpm)各フォーマットで、レコード・ラヴァーが求めているタイトルを厳選してリリースしていくというシステムだ。この狙いについて、同レーベルのディレクター、(株)ソニー・ミュージックダイレクト制作グループ・蒔田聡氏は、「『GREAT TRACKS』は3年間で約90タイトルをリリースしてきました。ラインナップはどうしても人気、有名アーティストの、名盤と呼ばれるアルバムが優先される傾向にあります。一方で、少数ながら熱狂的に求められている、いわゆるマニア向けの作品をリリースする機会がなかなかなくて、でも私自身もそういうレコードが大好きなので、コアファンに作品を提供できる機会を模索していました」と、この企画の狙いを教えてくれた。

ユーザーからのリクエストありきで、作品のリリースが決まるOMV

笠井紀美子「バイブレイション(LOVE CELEBRATION)」
笠井紀美子「バイブレイション(LOVE CELEBRATION)」
ソニア・ローザ「東京イン・ザ・ブルー」
ソニア・ローザ「東京イン・ザ・ブルー」

これまでは、レコード会社が企画したものをファンに提案していたが、OMVはユーザーからのリクエストありきで、その作品のリリースが決まる。SMDRでは、2004年から「オーダーメイドファクトリー」というサービスを提供している。これは、廃盤になってしまった作品を、一定数のリクエストが集まることで商品化し、ソニーミュージックグループのオンラインショップ「Sony Music Shop」で販売するというサービスだ。このシステムをベースに、よりアナログに特化する形で進化させたものがOMVだ。

「アナログはCDに比べて制作期間が長いので、『オーダーメイドファクトリー』のシステムでやってしまうと、リクエスト数が達成してから制作に入るので、お客さんの手元に届くのが半年後とかになってしまいます。なのでOMVでは、まずはみなさんからリクエストを募り、その中からディレクター5名を中心に、合議制で作品を決定します。それでリリースの発表と同時に予約受付けを開始して、翌月にはお届けできるというスピード感でやっていきたい」(蒔田氏)

小池玉緒「鏡の中の十月」
小池玉緒「鏡の中の十月」
 CHOCOLATE LIPS「WEEKEND LOVER」
CHOCOLATE LIPS「WEEKEND LOVER」

第一弾リリースは笠井紀美子「バイブレイション(LOVE CELEBRATION)」(1977年)、 ソニア・ローザ「東京イン・ザ・ブルー」(1979年)、小池玉緒「鏡の中の十月」(1983年)、 CHOCOLATE LIPS「WEEKEND LOVER」(1984年)というラインナップ(いずれも1900円+税)。笠井の「バイブレーション~」は作詞:安井かずみ、作曲;山下達郎のコンビで、アルバムとは違う尺の7インチ盤が希少性も含め、人気になっているという。ソニア・ローザの「東京~」は、ソロアルバム『サンバ・アモール』からの先行7インチシングルで、作・編曲は大野雄二。小池玉緒「鏡の~」は、作曲と編曲をYMO(細野晴臣・坂本龍一・高橋幸宏)が手がけたフレンチ・テクノで、超レア盤となっている7インチを復刻。CHOCOLATE LIPS「WEEKEND~」も含めて、これらの作品に共通していることは、「90年代にDJの耳に留まり、クラブ等で流すことで再評価された曲達です。DJの方々から『状態のいいものが欲しい』というリクエストが多く、国内のファンだけではなく、海外の方々からも人気がある作品」(蒔田氏)であるということだ。

「音質は海外、品質は日本、いいととこどりのレコードを目指す」

Makoto Highland Band「ダンシン」
Makoto Highland Band「ダンシン」
ラジ&南佳孝「THE TOKYO TASTE」
ラジ&南佳孝「THE TOKYO TASTE」

10月28日には第2弾の2タイトルが発売される。Makoto Highland Band(マコト・ハイランド・バンド)のアルバム『Injection』(1979年)からのシングルカット「ダンシン」と、ラジ&南佳孝「THE TOKYO TASTE」(1978年)だ。

蒔田氏は「音質、品質両方にこだわりたい」と力が入る。ソニーミュージックグループは2017年に静岡の製造工場にレコードのプレスマシンを導入し、自社で一貫生産できるようになったこともあり、OMVのような企画で、レアな作品のリリースが可能になった。

「カッティングを含めて、当時のアナログレコードの製造のノウハウがわかるスタッフがいない状態でのスタートでした。そんな中で、原料からこだわっていって、スタンパーも改良を重ねて、音を徹底的に追求していきました。海外の作品のような音質で、レコード、ジャケットの品質は日本、両方のいいとこどりを目指して、3年かけてようやく納得のいくものになったと思います」(蒔田氏)。

「サイトは、アナログ好きのコミュニティになって欲しい」

OMVのサイトに行くと、コンセプト、商品説明、商品化希望タイトルへの熱い思いを書き込むリクエストフォームがあり、コア、グレーゾーン含めて、多くのレコード好きが集まってきている。「アナログ好きのコミュニティになると嬉しいです。レコード店に足を運ぶ機会がなかなかなない高齢者の方や、地方在住の方に手軽に気軽に来て、楽しんで、リクエストして、買っていただけるサイトにしていきたい」(蒔田氏)。今後、コラムなどの読み物の他、マニアが満足できるコンテンツを充実させていくという。

経済効率だけを考えると、レコードメーカーはアナログレコードの製作・販売は今、なかなか手が出しづらい。しかしレコードメーカーの、アナログレコード好きの担当者の“熱狂”が作り出した、国内外のレコード・ラヴァ―の熱量をさらに高める、痒いところに手が届く的なサービスが、OMVだ。世界中のレコード好きの夢が広がるこのサービス、今後の展開が非常に楽しみだ。

『GREAT TRACKS Order Made Vinyl』オフィシャルサイト