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八代亜紀 ジャンルレスなシンガーとしての現在地 そのルーツミュージックを、一夜限りのセッションで披露

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BS-TBS

「音楽は自由。ジャンルレスをいつも目指している」

八代亜紀といえば、来年でデビュー50周年を迎える、ジャンルや世代を超えて、数多くの人から愛される、日本の音楽シーンを代表するシンガーの一人だ。その八代の音楽的ルーツを垣間見ることがことができるのが、“時を超えた、ここでしか聴くことの出来ないサウンド”がコンセプトの音楽番組『Sound Inn“S”』(BS-TBS)だ。

「ジャンルレスをいつも目指している」という八代は、今回のセッションでムード歌謡、スタンダードジャズ、そして最新曲を3人のアレンジャーと共に一夜限りのセッション。浪曲にも初挑戦している。

歌手としての原点「誰よりも君を愛す」を、斎藤ネコのジャズアレンジで披露

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1曲目は八代の転機となったというムード歌謡の名曲「誰よりも君を愛す」(1959年)を、今回が初のタッグとなる斎藤ネコのアレンジで披露。ジャズギタリスト中牟礼貞則を迎え、ビブラフォン、ウッドベース、ストリングスが加わった、美しくクールなジャズアレンジに乗せ、情熱的に、そしてせつなさを感じさせてくれる歌を聴かせてくれている。「15歳の時、年齢を18歳と偽ってキャバレーで初めて歌った曲がこの曲です。今まで嫌いだった自分の声を、お客さんにいい声だって褒めてもらえて自信になりました」と、この曲の思いを教えてくれた。

敬愛するジャズシンガー、へレン・メリルの名曲を、服部克久のアレンジで、レジェンドミュージシャンとセッションし、カバー

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2曲目は八代の憧れのジャズシンガー、ヘレン・メリルの「You’d be so nice to come home to」(1942年)を、服部克久のアレンジでカバー。クラリネット奏者の北村英治、ジャズ・ピアニストのクリヤマコト、ベーシストの荒川康男というレジェンドミュージシャンが参加し、豪華なジャズセッションが実現。それぞれミュージシャンのソロプレイを体で感じながら、自由に、楽しそうに歌う八代の姿が印象的だ。演歌は言葉の一つひとつに感情と思いを込め、文字通り<演じて>歌わなければいけない。しかしジャズはリズムに身を委ね、自由に歌いセッションすることで、熱が生まれる。

最新曲の応援ソングを本間昭光のアレンジに乗せ、<だいじょうぶ>と、多くの人にメッセージ

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最後は八代と、お笑いコンビANZEN漫才・みやぞんのコラボでも話題になった応援歌「だいじょうぶ」(2019年)を、本間昭光のアレンジで披露。この曲は、八代の故郷・熊本の人々をはじめ、少しでも多くの人達に勇気を与えたいという思いが込められた、THE ALFEEの高見沢俊彦作曲の作品。ペダルスチールギターを加えた、カントリー調の温かみのあるアレンジに仕上げ、そのサウンドに乗せ、八代の<だいじょうぶ>という言葉が、温もりと共に強く、大きな力を持って伝わってくる。

“八代演歌”を構成する要素のひとつ、浪曲に初挑戦

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さらに、八代のルーツである「浪曲」をクローズアップ。今、若者にも人気の注目の若手浪曲師・玉川太福を訪ね、八代が浪曲に初挑戦するシーンも。浪曲師だった父親から、子守歌で浪曲を聴かされていた八代の音楽的ルーツは、間違いなく浪曲で、浪曲とジャズのミックスが“八代演歌”と言われている。初挑戦した浪曲も、打合せなしで曲師(三味線)とセッション。その完成度の高さを、玉川も絶賛していた。

浪曲、ジャズ、ムード歌謡という、自身の血となり肉となっている音楽を、「自由」に楽しみ、その独特の粋な歌い回しには唸るしかない。「ジャンルレスをいつも目指している。死ぬまでそういう音楽を表現していきたい」と、今回のセッションを終え、改めて語っていた。このセッションは、9月28日放送の『Sound Inn“S”』(BS-TBS/18時30分~)でオンエアされる。

『Sound Inn “S”』 オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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