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クアイフが、深化した音楽で魅せた夜――WHITE LIEとの“極上”2マンライヴ

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
Photo/鳥居洋介

“新人”バンド・WHITE LIEの、芳醇な音の正体

戸渡陽太(Vo/G)
戸渡陽太(Vo/G)
OKP-STAR(B)
OKP-STAR(B)
岩中英明(Dr)
岩中英明(Dr)

3ピースバンド・クアイフのミニアルバム『URAUE』(8月28日発売)リリース記念ツアー“ITTAI”が、9月17日に渋谷eggmanで、WHITE LIEを迎え行われた。WHITE LIEは結成5か月の“新人”バンドだが、メンバーを見ると、驚かされる。強く、鋭い、そして優しさと繊細さを持ち合わせる声の持ち主の、シンガー・ソングライター戸渡陽太、そして昨年末に解散したAquaTimezのベーシストOKP-STAR、さらにドラムはbrainchild’sやI love you Orchestra SwingStyleなどで活躍している岩中英明と、タレント揃いの、まさにケミストリーを存分に楽しめるバンドだ。

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そのWHITE LIEからライヴはスタート。オープニングナンバーは戸渡のソロ時代の楽曲「SHIKISAI」。いきなりその芳醇な音に引きつけられる。この日は高高-takataka-の高田歩がサポートギターで参加し、音にさらに彩りを与える。「SOS」も戸渡のソロ時代の作品で、言葉を畳みかけ、それがリズムとなって客席を熱くさせる。「Amagoi」は1stEP「SOUND SCKETCH Vol.1」のリード曲で、戸渡の弾くメロディアスなギターのリフが耳に飛び込んでくる。リズム隊が弾き出す分厚い音と絡み、戸渡のハイトーンボーカルが乗ると、強烈なグルーヴが生まれる。「Y」と「マネキン」は戸渡のソロ時代の楽曲。戸渡がアコギを激しくかき鳴らし、言葉が激しい雨のように客席に降り注がれる「マネキン」は、テンポのアップダウンが激しく、曲の世界に引きつけられる。OKP-STARの代名詞でもある、うねるファンキーなベースが炸裂する「chocolate」は、セッション感あふれる、このバンドの“強さ”を感じる一曲。「WHITE LIEは、みなさんにとって必要不可欠な存在になりたい」とOKP-STARが語り、ラストは「SOUND SCKETCH Vol.1」に収録されている、ミディアムテンポの、強いバラード「交差点」。戸渡の表情のある妖艶な声が、切なさと心地よさを感じさせてくれる。型に囚われないスタイルの音楽を、3人の若き“職人”達が自由に楽しみながら奏で、そこから生まれるバンドアンサンブルで、リスナーに感動を与えるWHITE LIE。12月15日のソロライヴが楽しみだ。

深く、深化するクアイフの音楽。情熱と優しさで、聴き手を強く抱きしめる

森彩乃(Vo&Key)
森彩乃(Vo&Key)
内田旭彦(B)
内田旭彦(B)
三輪幸宏(Dr)
三輪幸宏(Dr)

WHITE LIEの作り上げた熱さの余韻が残るステージと客席。そんな中登場したクアイフも、オープニングナンバー「337km」から、激しく太いグルーヴを繰り出し、会場の温度をまた上昇させる。展開が全く読めないコード進行、しかしキャッチーなこの曲にいきなり心を鷲掴みにされる客席。さらに2曲目の、いじめがテーマの「いたいよ」は、鋭利な言葉で綴られた歌詞を、森彩乃の感情溢れるエキセントリックなボーカルが、客席の一人ひとりの心に真っすぐ届ける。メロディアスな「Parasite」は、森のピアノ、内田旭彦のベース、三輪幸宏のドラムが繰り出す音がひとつになって生み出される、強力なバンドアンサンブルが気持ちいい。森が、ミニアルバム『URAUE』は、「物事には裏と表という二面性が存在していてそれを表現したかった。“うらうえ”は「裏表」の読み方のひとつ」と説明し、「お互い、自由にさらけ出して、一体になりたい」と、「ハッピーエンドの迎え方」を披露。森の文字通り表情豊かな歌に客席はノリノリになり、全員で合唱するシーンも。名バラード「桜通り」は、衝撃的な内容の歌詞を、表現力豊かな歌で光と影を作り出し、<生きて、生きて。生きて、生きて>と繰り返す歌詞が、心に響く。

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インディーズ時代からのおなじみのナンバー「Wonderful Life」では一転、客席から自然と手が上る。「ライヴっていいよね。生きてるって感じだよね」と、内田が語る。そんなライヴに欠かせなくなりそうな1曲が完成したことが伝えられた。それは、10月からスタートするアニメ『真・中華一番!』(MBS / TBS系)のオープニング主題歌「光福論」を書き下ろし、10月23日に発売すること発表すると、客席から歓声が沸き起こった。大のラーメン好きで知られる森は、ファンクラブのコンテンツで、ラーメンの食レポを掲載し、自分の事を“ラーメンボーカル”と呼ぶほどで、中華料理をテーマにした同アニメとのコラボだけに力が入る。煌めくピアノポップ・サウンドと森のボーカルパワーが、ポジティブな歌詞を、更に印象的なものにする。

 

「自由大飛行」では客席が<ラララ>と手を振りながら歌い、ひとつになり、「Viva la Carnival」でラストスパート。激しく鍵盤を叩き、エネルギッシュに歌う森。内田と三輪のリズム隊が弾き音も熱を帯び、大団円。アンコールの声に応え、再び登場すると森は「弱い部分を隠したくなくて、さらけ出して向き合っていきたいと思った。そういう思いも含めて、最終的には音楽をするにも、何をするにも、結局は“愛”なんだなって思う」とメッセージを贈り、せつないメロディの「愛を教えてくれた君へ」を披露。クアイフの情熱的な音楽は、力強さとエネルギーが溢れていて、リスナーの背中を押してくれるが、同時に優しく寄り添いながら、愛で包み込んでくれる。それを感じたライヴだった。

ミニアルバム『URAUE』(8月28日発売)
ミニアルバム『URAUE』(8月28日発売)

9月26、27日には地元・愛知の千種文化小劇場(ちくさ座)で、ツアーファイナルの、ワンマンライヴを行う。

クアイフ オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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