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桑田佳祐初YouTubeライブ、その一部始終 一夜限りのセッションで注目の新曲を披露

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
8月17日東京・六本木 YouTube Space Tokyo
配信シングル「愛はスローにちょっとずつ」(8月12日配信)
配信シングル「愛はスローにちょっとずつ」(8月12日配信)

サザンオールスターズの新曲「愛はスローにちょっとずつ」が、8月12日に配信リリースされた。それを記念して、桑田佳祐がパーソナリティを務めるラジオ番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』(TOKYO FM/JFN系)の8月17日オンエア回は、「真夏の夜の納涼生歌SP」として、同時にYouTubeでライブ配信を行うという初の試みとなった。ファンはもちろん桑田自身もこの日を楽しみにしていた。まさに真夏の夜の一大イベントの一部始終をレポート。

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8月17日22時。東京・六本木ヒルズにあるYouTube Space Tokyoでは、スタッフが最後の準備に追われていた。本番15分前になると、この日のアコースティック編成のミュージシャン、斎藤誠(G)、片山敦夫(Key)、TIGER(Cho)、はたけやま裕(Per)というおなじみの4人が、最終チェックのためにスタジオに現れる。この日のスタジオ内には提灯、金魚鉢、水風船、スイカと、夏の縁日のようなセットが用意され、ミュージシャン達も全員浴衣姿で、それぞれの浴衣姿を「いいね~」と褒め合うなど、和気あいあいとした雰囲気の中、本番5分前に主役・桑田が、浴衣姿で登場。

和やかさの中にも、少しの緊張感が漂うスタジオ。桑田も初めての事だけに「どうしていいかわからないよ~(笑)」とボソッと呟く。23時、オンエアスタート。「たいがいの事はやり切ったかに思えたその矢先、また新たなチャレンジが私を待ち受けておりました。果たして無事に最後までお届けできるのでしょうか。「桑田“TUBEじゃないよサザンだよ”佳祐です」と挨拶し、番組がスタート。「村西とおるです。『全裸監督』です」と、最新エンタメネタも忘れない。

5万5千人以上が同時視聴

オープニングナンバーはKUWATA BANDのナンバー「スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)」。片山のキーボードがおなじみのイントロのフレーズを奏でる。アコースティックアレンジに加え、美しい夜景が、この曲のクールさをさらに演出する。サビの<Skipped Beat、Skipped Beat>では、YouTube上のチャットで視聴者が<スケベー、スケベー>と合わせ、盛り上がっていた。2曲目も、聴きなれたイントロが聴こえてきた。「MERRY X’MAS IN SUMMER」だ。夏にピッタリのナンバーの間奏では、<六本木 六本木 夜遊びだ 今宵は楽しい YouTube〉とこの日だけの替え歌を、楽しそうに歌っている。

この日はサザンオールスターズ公式YouTubeチャンネルで映像を同時配信するということで、23:00〜という深夜帯にもかかわらず、同時接続で5万5千人以上のファンが視聴するという、まさにお祭り騒ぎ。フェスの中継は別として、アーティスト単独で1万人を超える視聴者数は、そうそう叩き出せる数字ではない。改めて、サザンオールスターズが、桑田佳祐が多くの人に愛されていることを証明する形となった。

通常の番組通り、リスナーからのメールを読み上げ、メンバー紹介へ。「今日は5人という粗末な編成で」というと、メンバー、スタッフから笑いが起きる。自身で「YouTuberのはしくれとして」と言いながら、嬉しそうだ。一曲ごとにメンバーがカウントを取り、この日だけのセッションを全員が楽しんでいた。5人が豊潤なアコースティックサウンドを作り出し、桑田の歌に彩りを与えていた。

40周年記念ツアー中から披露し“成熟”させてきた新曲「愛はスローにちょっとずつ」を、配信リリース後初生歌唱

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3曲目は、「簪 / かんざし」(ソロアルバム『がらくた』に収録)だ。叙情的なメロディは、少し欠けた月が顔をのぞかせている夜景を見ながら聴くと、さらに感動的に伝わってくる。そして「ツアーでお客さんと少しずつ熟成させてきた曲」と、新曲「愛はスローにちょっとずつ」を紹介。サザンオールスターズが40周年を記念して行った、バンド史上最大規模の全国ツアー『“キミは見てくれが悪いんだから、アホ丸出しでマイクを握ってろ!!”だと!? ふざけるな!!』の合間に、この新曲のレコーディングを行いながら、ステージでも披露してきた。まさにファンと共に熟成させてきた、特別な一曲だ。それをこの日、リリース後初生歌唱ということで、ファンも楽しみにしていた。片山がキーボードでセンチメンタルな旋律を奏で、切ない歌詞と、美しいメロディ、桑田の情感豊かな歌が、優しい時間を作り出す。

写真提供/JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント スピードスターレコーズ
写真提供/JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント スピードスターレコーズ

その後、「オアシスと果樹園」、「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」と、極上のポップネスを湛えた名曲が続く。どの楽曲もアコースティックアレンジが、桑田メロディの美しさと強さを改めて際立たせる。ラストも名曲「真夜中のダンディー」を披露。桑田は「これで、もうお別れなの? あっという間だね」と語り、さらに自身の近況を「『全裸監督』と『男はつらいよ』を交互に見ている、ご隠居みたいな生活をしています」と報告し、一旦締め、ここでラジオの放送は終了。YouTube配信ではもう一曲「明日へのマーチ」を歌い、視聴者にエールを贈り大団円、配信を終えた。

桑田と素晴らしいミュージシャンとの、真夏の夜の一夜限りのセッションは、聴いている人、観ている人、全ての人にとってシアワセな時間になったはずだ。サザンオールスターズ、桑田の今後の動きが、楽しみだ。

サザンオールスターズ オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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