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ファンも、多くのアーティストも待っていた――20周年のWyolica、復活 9年ぶりのライヴも   

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックダイレクト
ベストアルバム『Beautiful Surprise~Best Selection 1999-2019~』(8月7日発売)
ベストアルバム『Beautiful Surprise~Best Selection 1999-2019~』(8月7日発売)

「Wyolicaの音楽と応援してくださったファンの皆さんは私の宝物でした。デビュー20周年にまたこうして歌える日が来るなんて、なんと幸せなことか!」(Azumi)――5月21日、今年デビュー20周年を迎えたWyolica(ワイヨリカ)の再結成のニュースが、二人のメッセージと共に届けられた。そして8月7日に全シングルと本人セレクトの作品、そして新曲3曲と、デビュー曲「悲しいわがまま」を改めて一発録りした最新セッションの作品を加えた、ベストアルバム『Beautiful Surprise~Best Selection 1999-2019~』が発売された。再結成に至ったいきさつ、ベストアルバムに込めた思いをAzumi(Vo)とso-to(G)に聞いた。

1999年デビュー、2013年に解散。その後はソロで活動しながら、20周年の今年、再結成

“Beautiful Surprise”という素敵なタイトルと共に帰ってきたWyolicaは、1999年5月にデビューし、ソウルミュージック、HIP-HOPのビートがクールなブラックミュージックをベースに、フォーキーでオーガニックな肌触りの、ワンアンドオンリーの音楽で、多くのファンを魅了した。そして2013年5月に解散を発表。それぞれがソロで活躍しながら、再びタッグを組むことを決めた。

「so-to君とは7年間くらい全然会っていなかったのですが、20周年なので何か作品をリリースをしたいと思い、久々に再会しました。せっかくの機会だから新曲も作りたいし、そうなると、再結成になるのかな、という感じでどんどん話が進んでいきました」(Azumi)。

「アルバム一枚分くらい新曲を作った。その中で『Beautiful Surprise』は“これまで”と“今”のWyolicaを表現できている曲」(so-to)

「解散の時、ファンの方たちを悲しませてしまった。『Beautiful Surprise』は、その思いを、嬉し涙に変えることができる力がある曲だと思った」(Azumi)

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新曲は3曲。今回の復活劇のコンセプトを表すような言葉であり、アルバムタイトルにもなっている「Beautiful Surprise」は美しいナンバーだ。

「アルバムが一枚できるくらい曲を作りました。その中で『Beautiful Surprise』はこれまでのWyolicaの音楽を踏襲しつつ、“今”の時代の気分というか、僕が好きな洋楽的なメロディを入れた感じにしました」(so-to)。

「ファンの方に何を聴いてもらいたいのかとか、一聴して『あ、Wyolicaが戻ってきた』と思ってもらえ、求めてもらえるものは?って模索していた中で、「Beautiful Surprise」のイントロを聴いた瞬間これだと思いました。この曲だったら「待ってました!」って言ってもらえるかもしれないし、解散の時に、ファンの方たちを悲しませてしまっているので、とにかく喜んで欲しかった。解散のことは私のソロライヴで発表したのですが、その時にファンの方のすすり泣く声を初めて聞いて、それがずっと私の中に残っていて、あんな悲しい思いは絶対させたくないと思っていました。「Beautiful Surprise」は、その思いを、嬉し涙に変えることができる力がある曲だと思いました。so-to君のギターと私の歌が乗った時に、これは絶対Wyolicaになるという手応えがありました」(Azumi)。

レコーディングには当時のスタッフが集結し、エンジニアがAzumiの歌を聴いた瞬間に、「Wyolica、戻ってきました」いう言葉が思わず出たという。それぞれがソロで力をつけ、成長した中で臨んだ今回のレコーディングは充実した時間だった。二人の自信と余裕が、「これまで」と、そして「更新している」音楽性を、「Beautiull Surprise」「OneRoom」「Beep-Beep-Beep」という新曲に纏わせた。

「『OneRoom』は、R&Bをしっかりやりたくて、「キスの温度」のような肌触りの音楽を作りたかった。『Beautiful Surprise』のアナログシングルも出させてもらえて、そのB面にも合うものをということで、回転数を考えたリズムを作りました」(so-to)。

「新曲を3曲入れることになった時、やっぱりそのバランスを考えて、「Beautiful Surprise」は王道Wyolica、「OneRoom」は「キスの温度」のようなR&Bの系譜、「Beep-Beep-Beep」はライヴで盛り上がる曲、という感じにしました」(Azumi)。

ベストアルバムは全30曲。シングル曲+それぞれの思い入れが強い曲が選ばれている。

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「それぞれが入れたい曲を出し合ってセレクトしていきました。私が挙げた「逢いたいから」は、その存在をso-to君が忘れていました(笑)」(Azumi)。

「忘れてました(笑)。メロディが思い出せなくて(笑)。この曲、当時ピアノバージョンでいいんじゃないかという話が出て、ギターは無理やり入れたみたいな感じになったので、思い入れが薄かったのかもしれないです(笑)」(so-to)。

「『恋の幻』の事も、忘れてました(笑)。去年so-to君が私のライヴを観て『この曲なんだっけ?いい曲だな…あ、俺の曲だ』って(笑)」(Azumi)。

「なんか聴いたことある曲だな、かっこいいコードだなと思ったら、自分の曲でした(笑)。僕が推したのは「goodbye summer」(シングル「愛をうたえ」(2000年)のカップリング曲)です」(so-to)。

7月5日に行われたイベント『Beautiful Surprise Party』に駆け付けた“同期”のbirdと
7月5日に行われたイベント『Beautiful Surprise Party』に駆け付けた“同期”のbirdと

このベストアルバムの特設サイトが立ち上がり、そこには今回の復活を祝福する、Wyolicaの音楽を愛する、影響を受けたミュージシャンや俳優等からのコメントが寄せられている。削ぎ落した美しさを追求しているような感覚の音楽は、当時からおしゃれ、癒し系という言葉で多くの人から愛されている。

「癒し系という言葉も、よく使っていただきましたが、私達結構辛辣なこと言っているけど、大丈夫かなって思っていました(笑)。歌詞は当時から、なるべく普遍的な事を言おうと意識しました。今っぽい言葉や、古くなっていきそうな言葉は使わないように、それは今も変わりません。人の感情ってそんなに変わらないと思うので」(Azumi)。

8/18、31に、9年ぶりのライヴを東京と大阪で開催

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その言葉通り、切ない歌詞は今も瑞々しさを失うことなく、どこか甘酢っぱさが漂うサウンドは今聴いても新鮮だ。熱くクールなその音楽を聴くことができる、9年ぶりのライヴ『Wyolica 20th Anniversary~Beautiful Surprise Tour~』(8月18日(日)東京・duo MUSIC EXCHANGE、8月31日(土)大阪・Music Club JANUS)が楽しみだ。

otonano Wyolica『Beautiful Surprise~Best Selection 1999-2019~』特設サイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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