ネット発「歌い手」から、注目のエンターテイナーへ――天月‐あまつき-、その視線の先にあるもの

「子供たちに夢を与えていきたい」(天月‐あまつき-/Photo:大川晋児)

ティーンから圧倒的支持を得ている「ネット出身」アーティスト・天月‐あまつき‐の影響力

「恋人募集中(仮)」(1月16日発売/通常盤)
「恋人募集中(仮)」(1月16日発売/通常盤)

その歌唱動画の総再生回数約3億8千万回、Twitterフォロワー数120万人超え、YouTubeチャンネル登録数110万人(1/27現在)――ティーンから圧倒的支持を得ている、天月-あまつき-(以下、天月)の”影響力”を示す数字の一部だが、1月16日に発売された、ユニバーサルミュージック移籍第一弾シングル「恋人募集中(仮)」が、週間シングルランキング初登場2位と、自己最高位を記録。その人気は加速し、今大きな注目を集める存在の天月にインタビューした。

「動画投稿サイトは僕にとって宝箱みたいな場所だった」

「音楽を軸に、自分が好きなことに、ひとつひとつチャレンジしたい」という言葉通り、ライヴはもちろん、声優、舞台への出演などその活躍の場を広げている。2010年、動画投稿サイトに「歌ってみた」動画の投稿をスタートさせ、以来、豊かな創造性を感じさせてくれるクリエイティビティを、発信し続けている。

「高校の終わりくらいから動画投稿サイトを観るようになって、観たことのある作品にコメントが流れていたり、アマチュアの人が作った作品の発表会など色々やっていて。僕にとっては宝箱みたいな場所でした。誰でも生放送ができるという環境になって、すごいなと思いましたが、生放送ができるというのはどういうこと?ラジオ局があって……みたいなことを想像して。でも面白そうなのでやってみようと思って、とはいえ、さすがに歌は歌えないし、作品を作るという知識もなかったので、まずはしゃべるところから始めようと。それで1000円のスカイプマイクを買ってきて、設定の仕方を調べて、画面に向かってしゃべりはじめました。そのうち歌ってみたり、ゲームをしたり、朗読したり、色々やっていました」。

「最初に買ったCDはポルノグラフィティ。本間昭光さんが作る音楽に影響を受けている」

天月は中学の時、引っ込み思案だったという。友達も少なくて、何もしたいことがない、そんな中で、アニメと音楽は好きだった。

「アニメを観るのが好きで、初めて買ったCDがアニメ『鋼の錬金術師』のオープニングテーマだったポルノグラフィティさんの「メリッサ」(2003年)でした。そこからポルノグラフィティさんの曲を聴きまくりました。クレジットを見て、ak homma(本間昭光/作・編曲家・音楽プロデューサー)さんが作っていることを知り、のちに好きになるいきものがかりさんにも本間さんがプロデューサーとして参加しているを知り、そういう意味では、本間さんが作る音楽に、影響を受けていると思います」。

そのハイトーンで美しい声と、歌の表現力の豊かさ、そして人懐っこいビジュアルで、天月は動画投稿をすればすぐにランキングの上位を占め、シーンの代表的存在として一躍注目の的になった。投稿を始めた2010年には、初めてのライヴも行い、そしていつしかリアルな場、音楽シーンへのデビューを考えるようになり、2012年にまずはインディーズデビューを果たした。

「保育士を目指し大学で勉強していたけど、自分が何かを表現、発信して、それを楽しんでもらえる人がいる状況を、広げたかった」

「中学校、高校の時、夢も特になかったし、大学では保育士を目指して勉強していました。でも当時はもう配信もしていたし、より好きなものとして音楽という比較対象があって、この道で頑張ることはできないのかなと思ったときに、今お世話になっている方に声をかけていただきました。自分としては、何もない状態だと思っていましたが、自分が何かを表現、発信して、それを楽しんでもらえる受け手がいるという幸せな状況ではありました」。

2014年、アルバム『Hello,World!』でメジャーデビュー。これまでにオリジナルアルバムを3作、シングル3作をリリースし、その多彩な音楽性を聴かせてくれる。自身で作詞・曲を手がける一方で、これまでに様々なクリエイターとタッグを組み、最新アルバム『それはきっと恋でした。』(2018年6月)では、“ラブソング”をテーマに、夏代孝明、佐香智久、HoneyWorks、まふまふ、Eve、halyosy、みきとP、宮田‘レフティ’リョウなど、親交のあるミュージシャンと共に、恋愛を様々な方向から描いた楽曲を作り上げ、4万枚を超えるるヒットになった。

そして先日、1月16日に発売され、週間シングルランキング2位を獲得した、ユニバーサルミュージック移籍第一弾シングル「恋人募集中(仮)」でも、宮田‘レフティ’リョウ、Saku、ゆりん(サイダーガール)らとコライト。「恋人~」はどこまでもキャッチ―で、MUSIC VIDEOも含めてエンターテイメント性を強く打ち出している。そして「子供の頃から日曜の朝もずっとアニメを観ていて、そのときに流れていた曲は覚えているし、そういう作品を作りたいと思った。子供が聴いた時にワクワクしたり、口ずさみたくなるような曲にしたかった」という『新幹線変形ロボ シンカリオン』(TBS系)のEDテーマ「STARTRAiN」をはじめ、リアルな言葉をポップなメロディに乗せ、一度聴くと耳に残る上質なポップスがパッケージされている。

「お互いにないものを補い合ったり刺激し合って曲が生まれるコライトは、面白い。この人と一緒にやったら何が生まれるのかというワクワク感」

「結局見えているものは人間全員同じものではないし、知識もそうですけど、お互いのないものを補い合ったり刺激し合って曲が生まれるのは、めちゃめちゃ面白いですね。カバーすることから始めて、オリジナルを作るようになった時に、この人と一緒にやったら何が生まれるのかなとか、この人が作る曲が好きで、一緒にこういう曲を作ってみたいという思いがどこまでも残っていて、だから自分でもやりながら、クリエイターの方と一緒に作ることも継続してやっています。それもエンターテインメントだと思うし、ただ好きでやっている感じです」。

昨年8月には初の日本武道館公演も成功させるなど、ライヴの動員も年々増えており、現在も全国ツアー『Loveletter from Moon~Winter Tour 2018-2019~』を行っている。海外からもオファーが殺到していて、これまでにロンドン、上海、台湾、韓国でのライヴでも地元ファンを熱狂させている。声優や舞台にも挑戦し、活躍の場を自らの手で開拓し続ける天月の視線の先にあるものは、何なんだろうか。

「憧れは星野源さん。音楽を中心にあらゆるエンターテインメントを“素敵にこなしている”。自分が好きなことを追求していきたい」

Photo/大川晋児
Photo/大川晋児

「僕は元から歌手を目指していたわけではなく、音楽に出会ったこと、ファンの皆さんに出会えたことで世界を変えてもらって、命を救ってもらったという思いがあるので、直接感謝の気持ちを伝えられる場であるライヴは、続けていきたいです。今、大人になってきて、僕の中で最強だなと思っているのは、星野源さんです。35歳の時に「恋」が大ヒットして、年齢は関係ないんだなと思ったのと、星野さんは音楽もやりながら、俳優もやり、本も書かれたり、なんでもできるということが全然いやらしい感じに見えなくて、どれも素敵にこなしていて。それは星野さんが好きなことをやっているからだと思います。僕もずっと子供の頃から憧れていたり、好きだったものをひとつずつしっかりやっていきたいです。「ドラえもん」をはじめ、アニメや子供向けの作品が大好きで、声優も、アニメの音楽も経験させてもらって幸せです。でもそれは僕が子供の頃に見ていたものと同じものができるわけではなくて、新しいものを作っていると思うので、その作品を観たり聴いたりした子供達が、こういう仕事がしたいと思ってくれると嬉しいです。映画『君の名は』が大ヒットして、RADWIMPSさんの音楽もみんなに愛されて、ここまでアーティストが作品に寄り添いながら、これだけの素晴らしい作品が生み出されるのを目の当たりにして、感動しました。作品あってこその音楽だったと思うし、もちろん切り離すことも可能ですけど、つながっているからこそ、お互いが際立っていると思っていて。決して音楽単体での大きなヒットではないというところが、今の時代ではすごいことだなと思います。こういうことができたら死んでもいいなって思いました」。

天月は、今の土台を作ってくれた音楽に感謝しつつ、「軸は音楽で、その上でエンターテインメントを追求したい」と、持っている才能を駆使して、人々を喜ばせ、感動を与えるエンターテイナーとして「好きなこと」をやり続けている。オリジナル作品を発表していく一方で、名曲、人気曲のカバーの動画の配信も、変わらず行っている。

「めちゃめちゃ楽しんでやっています(笑)。「インターネット」出身のシンガーで、オリジナルだけでやっている方もたくさんいますけど、どうしても僕はそこから出てきた人間ですし、それを楽しいと思っているので、許してもらえる範囲で今後もやっていきたいです」。

「音楽はいい意味でも悪い意味でも1曲の単価も価値観も下がったと思う。一方でリスナーのライヴへの熱量は上がっている」

2012年にインディーズデビュー、そして2014年にメジャーデビューして、様々な音楽を奏でてきたが、流れの速い音楽シーンの中で、自身の音楽というものに対する感じ方、そして音楽を聴く環境が大きく変わってきたリスナーにとっての音楽の存在というものに、変化を感じているのだろうか。

初の日本武道館公演『 Loveletter from Moon』(8月23日/Photo:川崎龍弥)
初の日本武道館公演『 Loveletter from Moon』(8月23日/Photo:川崎龍弥)

「音楽はいい意味でも悪い意味でも1曲の単価も価値観も下がったと思いますし、“誰でも聴ける”という意味も、変わってきたと思っています。昔は街中に音楽が流れていたり、テレビで流れているという意味での、“誰でも聴ける”だったと思いますが、今はYouTubeだったり、聴く手段を自己選択しつつ“誰でも聴ける”というか。だから耳に入ってくる音楽は、減ってしまったと思います。一方でリスナーのライヴへの熱量は上がっていると思っていて、この前デビューしたバンドが、もうあの規模でやるの?というのをよく感じます。曲が簡単に聴けるようになったぶん、それをライヴで聴いてみたいと思うことが多くなったり、ライヴをやっているという情報を手に入れやすかったり、もちろんやっている側も、来やすいように工夫をしていると思います」。

子供の頃から好きだったもの、夢を見ていたことを実現させていくことで、エンターテインメントを追求し、子供たちに夢を与えていきたいという、表現者・天月のクリエイティヴィティに、これからも目が離せない。

天月‐あまつき- オフィシャルサイト