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“アンサーソング”が、配信チャートを席捲する、シンガー・ソングライター當山みれいの魅力

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
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8月3日渋谷・duo MUSIC EXCHANGEで行われた、TBSと<Sony Music Records>、テレビ局とレコード会社がタッグを組む、次代の音楽シーンを担う新しい才能の発掘・育成を目的としたライヴイベント『Voice JAM)』が行われた。生バンドとのセッションで、「歌える」女性シンガーが、それぞれの実力をリハーサルから目の当たりにして、切磋琢磨する場でもある。この日は、Anly、City Chord、J☆Dee’Z、當山みれい、やえ、れみふぁ、わたなべちひろ、そしてゲストで鈴木愛理が登場し、オリジナル曲のほかにコラボレーションでも楽しませてくれた。中でも、R&Bシンガー當山みれいと、女子高生3人組ダンス・ボーカルグループJ☆Dee’Zとの、乃木坂46のカバー「インフルエンサー」では、客席の熱気がグンと上がるのが伝わってきた。このイベントは元々、<Sony Music Records>所属の當山とJ☆Dee’Zを中心に、レーベルの枠を超えて同様の趣旨で行われていた、『After School Swag』というイベントがベースになっている。2組とも中高生の時から出演していて、共に歌とダンスで勝負するスタイルで、当時から生バンドの音をバックに、いわば英才教育を受けていた。當山は2016年、RADIO FISHとのコラボ作品「GOLDEN TOWER feat.當山みれい」でも話題を集め、「MUSIC STATION」(テレビ朝日系)に出演した際も、そのポテンシャルの高さを披露し、注目を集めた。

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そんな當山みれいが今、“アンサーソング”で注目を集めている。『VoiveJAM』で披露した、18歳とは思えない圧倒的な歌声と、艶のある歌と表現力は、客席を引き付けていたが、彼女が書くリアルな歌詞がメッセージとなって、同世代のファンの心に届いている。レコード会社の資料によると、彼女には「“SNS世代”のリアルを歌うシンガーソングライター」というキャッチコピーがついているが、昨年から力を入れているアンサーソングが大きな反響を呼び、LINE MUSICなどの音楽サブスクリプションサービスのチャートを席巻している。

その圧倒的な歌唱力と表現力、ソングライティング力が備わっているからこそ成立する、アンサーソング

まず昨年7月、童子-Tの「願い feat. YU-A」のリアレンジカバー曲「願い~あの頃のキミへ~」を、続いて今年3月には清水翔太の名曲「My Boo」を、女性目線に置き換えたアンサーソング「Dear My Boo」をリリースした。さらに7月25日には、今年で解散を発表しているAqua Timezのヒット曲、「等身大のラブソング」のアンサーソング「P.S.等身大のラブソング」を配信リリースし、LINE MUSICで1位を獲得している。この曲について當山は「楽曲の『俺』の不器用さと強さへ、私なりの等身大をアンサーできた事を光栄に思っております」とコメントしているが、當山の圧倒的な歌唱力と表現力があるからこそ“アンサーソング”は成立する。

オリジナル曲ではなく、そこに新しいイメージや情景を加え、オリジナル作品にする。オリジナル曲へのリスペクトはもちろん、登場人物の心模様を理解する洞察力、その向こう側にいるであろう人物をイメージできる創造力を作品に昇華させ、新たなオリジナル曲として成立させなければいけない。逆にいうと、普段とは違う視点で歌の世界を捉えることで、ソングライターとしての感性を磨くという点では、確実にプラスになっているはずだ。人気曲、おなじみの曲のアンサーソングということで、聴き手の、いい、悪いの判断基準のハードルは上がるはずだ。しかし當山はそれをものともせず、軽々と超えていく実力があるからこそ、同世代から圧倒的な支持を得ている。

アンサーソングを含め、當山の等身大の魅力が詰まった2ndアルバム『Answer』

2ndアルバム『Answer』(8月29日発売)
2ndアルバム『Answer』(8月29日発売)

20歳の當山みれいの“等身大”の魅力が詰まった2ndアルバム『Answer』が、8月29日に発売されるが、この作品には上記のアンサーソングのほかに、KREVAの代表曲のひとつ「音色」のアンサーソング「音色 Regards」、UVERworldの代表的バラード曲「君の好きなうた」のアンサーソング「キミの好きなうた」も収録される。どちらの曲もこれまでカバーされたことがなく、それだけに當山の歌に注目が集まる。アルバム発売に先がけ8月21日には「音色~」が先行配信され、LINE MUSICリアルタイムランキングで1位、iTunes R&B/ソウルも2位(一時期、2位「音色 Regards」3位「P.S.等身大のラブソング」4位「Dear My Boo」)と、支持を集めている。

このアルバムにはアンサーソングだけではなく、フィンランドで現地作家とコライトして作り上げた「Tiger」、今の自分の置かれた“場所”、等身大の自分を歌った表題曲「Answer」など、歌の進化を感じさせてくれると同時に、ソングライターとしての新たな可能性もしっかり提示してくれている。

當山は2014年日本デビューしたが、2013年夏まで、アメリカの名門ゴスペルチーム“Gospel For Teens”に所属し、同年シングル「TATTOO」で全米デビューも果たしている。規格外のポテンシャルを持つシンガー・ソングライターとして、またそのダンスパフォーマンスにも、これからますます注目が集まりそうだ。

當山みれいオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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