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サラ・オレイン 美しき"表現者"の、その圧倒的な才能を目の当たりにする瞬間

田中久勝音楽&エンタメアナリスト

披露した4曲で、それぞれ違うサラ・オレインを見せる

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サラ・オレインは美しき才女である。シンガーだけにとどまらず、ヴァイオリニストでもあり、作詞・作曲、そしてアレンジも手掛け、さらに翻訳家、コピーライターとしてもマルチに活躍している才女であり、“表現者”だ。そんな彼女の表現者としての圧倒的な才能を目の当たりにする瞬間――それが『Sound Inn “S”』(BS-TBS)だ。“時を超えた、ここでしか聴くことのできないサウンド”がコンセプトのこの番組で、彼女は日本を代表する3人のアレンジャーと、最強ミュージシャンと共に感性をぶつけあい、素晴らしい音楽を作り上げた。収録に臨む直前、彼女は「自分は常に“表現者”でありたい。今回は色々な自分を見せる事ができるので楽しみ」と語っていたが、まさに表現者として、人に感動を与えるために生まれてきたとしか思えない、圧巻のパフォーマンスを見せてくれた。

“f分の1 ゆらぎ”と呼ばれる、癒しの成分が含まれている声が作り出す、極上の肌触りの歌

服部克久
服部克久

1曲目は、彼女も共演した経験があるアンドレア・ボチェッリと、サラ・ブライトマンがデュエットし、世界的ヒットになった「Time To Say Goodbye」(1996年)。アレンジを手がけるのは服部克久。オーストリア人の父と日本人の母を持つ彼女は、語学も堪能で、英語・日本語・イタリア語・ラテン語を自在に操り、この曲も原曲のイタリア語で、情感豊かに歌い上げた。彼女の才能を高く評価し、共演も多い服部は「いかにもビブラートをかけていますという感じではない、自然なビブラートと声質、演奏への対応力が、聴いた人が気持ちよくなる音楽を作り上げている」と、その歌を絶賛。彼女の3オクターブを超える声には、“f分の1 ゆらぎ”と呼ばれる、癒しの成分が含まれていると言われており、その極上の肌触りの歌を堪能できる。

ルーツミュージックを、自らの構成で披露

坂本昌之
坂本昌之

オーストラリアで育った彼女は、テレビでアニメを観て日本語を勉強し、覚えた。中でもジブリ作品は特別なものだという。「言葉から日本の文化を深く知る事ができた。自分にとってのルーツミュージック」と、ジブリ映画『天空の城ラピュタ』の主題歌「君をのせて」(1986年)をカバー。この曲では彼女自身が歌の構成を考えた。前半は母国語であった英語で歌い、間奏ではバイオリンを弾き、後半は日本語で歌い、自身のアイデンティティをこの歌に込めていた。アレンジを手がけた坂本昌之は「立体的な構成で、後半の<父さん><母さん>という言葉出てきたところはグッとくる」と、感動した面持ちで語った。

ビートルズメドレーにチャレンジ

斎藤ネコ
斎藤ネコ

昨年、かねてからの念願だった映画音楽のカバー集『Cinema Music』をリリースした彼女が、映画『SING/シング』で聴いたビートルズの音楽に感動し、「是非チャレンジしたい」と選んだのが、「Golden Slumbers~Carry That Weight」のビートルズメドレー。アレンジは斎藤ネコ。「映画で聴いて感動したのだから、その良さを消さないように」と、劇中で使われた同曲に近いアレンジを作り上げた。リハを終えると、斎藤が「どうしたら低いところがもっと伝わるのかな」と、彼女とディスカッションを始めた。映画ではコーラスパートが入っているアレンジで、今回はそのアレンジを生かしているため、彼女が一人で歌うと、どうしても弱くなる部分が出てくる。ミュージシャンもアイディアを出し、アレンジをブラッシュアップさせ、見事にサラ流のビートルズメドレーを完成させた。彼女について斎藤は「非常にクレバーで、きちんと分析した上で歌っているのに、それを自然に伝える事ができる表現力が素晴らしい」と、改めてその実力に感心していた。

自分の中にある"光と陰"を見事に表現した、情熱的なヴァイオリン演奏を披露

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最後のパートは、自身が作曲したヴァイオリン曲「Animus」を披露。この曲について彼女は「ステージで歌っていると華やかに見えるかもしれないけど、この曲には自分の“陰”の部分が出ている。でも情熱な曲です」と語っている。スポットライトを浴び、華やかなイメージが強い彼女の中にも陰があり、激しい感情も持ち合わせる、どんな人間も持っている“光と陰”を見事に描いた、情熱的な楽曲だ。この曲を、一流のヴァイオリニストも絶賛する、圧巻的なテクニックで披露した。この日パフォーマンスした4曲で、見事に違うサラ・オレインを見せてくれた。彼女は「インスパイアされた。新しい発見があって楽しかった」と収録を振りかえっていた。

この収録で受けた刺激、感じた想いが、次の彼女の作品やステージでどう昇華されるのかが楽しみなった。美しき表現者、サラ・オレインの才能に是非触れて欲しい。『Sound Inn “S”』は5月19日(土)23時からBS-TBSでオンエアされる。

BS-TBS『Sound Inn "S"』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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