サーカス ハーモニーの美しさ、楽しさを伝え続け40年「変化によって進化し、伝統になる」

左から叶高、叶ありさ、叶正子、吉村勇一。叶ありさと吉村は2013年に加入

ハーモニーの美しさ、楽しさを伝え続けてきた40年

日本のコーラスグループのパイオニア的存在、サーカスが、この3月にメジャーデビュー40周年を迎えた。男女混声、3人姉弟+従姉という、ユニークなスタイルと洗練されたそのハーモニーは、デビューするやいなや一躍注目を集め、デビューシングル「Mr.サマー・タイム」(1978年)、「アメリカン・フィーリング」(1979年)と立て続けに大ヒット。以来様々なジャンルの音楽を歌い続けてきたが、そのハーモニーで、ジャンルという括りを越えたものを作りだし、ハーモニーの美しさ、楽しさを伝え続けてきた40年だった。35周年を迎えた2013年に大きな転機を迎えた。メンバー二人が卒業し、新たにソロシンガーとして活動していた吉村勇一と、サーカスの中心メンバー叶高の娘・叶ありさが加入し、新たな歴史をスタートさせた。

『POP STEP 40~Hisorie et Futur』(初回盤/4月25日発売)
『POP STEP 40~Hisorie et Futur』(初回盤/4月25日発売)

そして40周年。4月25日にはそれを記念した、今のサーカスが歌うべきもの、これからサーカスが進むべき道を提示したアルバム『POP STEP 40』をリリースした。武部聡志をプロデューサーに迎えた、上質なシティポップのアルバムに仕上がっている。阿久悠の未発表歌詞に曲を付けた「メトロの階段」や、ボーナストラックには、歴代のサーカスのメンバー7人がオリジナルトラックで歌った「Mr.サマータイム2018」が収録されている。初回盤には、メンバーセレクトによるベスト盤が付属し、『POP STEP 40~Histoire et Futur』と名付けられている。これまでとこれから。洗練された、艶のあるハーモニーに、温かみと瑞々しさがプラスされたハーモニーが、今のサーカスだ。

現在、アルバムと同名の40周年記念ツアーを敢行中の4人。その初日は4月28日、サーカスのホームグラウンド的存在でありメンバーの叶高が営む平塚のライヴハウス、「KANAFU」で行われた。この日はピアノ1本と4人の声だけという、よりそのハーモニーが際立つスタイル。初日という事もあり、入念にリハーサルを行い、本番を前にしたメンバー、叶高、叶正子、叶ありさ、吉村勇一に、改めて40周年を迎えて思う事と、アルバムについて話を聞かせてもらった。

「新しいものを取り入れていくという事が、変わらないものを作っていく事につながる」(叶高)

――40周年です。

叶高 他人事みたいな感じもしますが、40年間これしかやってきていないので、何か他の事をやっていれば比べようもあるのですが(笑)、楽しい事を追いかけ続けて40年経ってしまったというのが、素直な感想です。

叶正子 常に次に歌う曲や、コンサートの譜面が手元にあって、それを覚えて、コーラスって全員で集まらないと練習できないものなので、みんなでずっと練習して歌っていました。それで気がつくと40年経ったという感じです。

――サーカスというグループ、そのハーモニーは、J-POPシーンの中で40年間続く“ブランド”だと思います。デザイナーを変えていきながら、進化を続け、伝統も守るという老舗ファッションブランドのようです。

叶高 新しいものを取り入れていくという事が、変わらないものを作っていく事につながるという意味では、まさにファッションブランドに通じるものがあるのかもしれないですね。40年間変わらずに、新しい事を追い続けているということでしょうね。

『POP STEP 40』(通常盤)
『POP STEP 40』(通常盤)

吉村 僕は35周年の時に加入したのですが、それまではソロシンガーでやってきたので、ハーモニーの経験がなく、追いかけるので精一杯でした。でもこの5年間で、5枚作品を作っているのですが、その中で色々経験させていただいて、自分自身にとってはこの5年間の集大成が『POP STEP 40~Hisorie et Futur』だと思っています。

叶ありさ 私は子供の頃から常にサーカスが身近にいて(笑)、最初の頃は練習を家でやっていたので、4人の生声を小さい頃はいつも聴いていました。そういう環境で育っているので、サーカスの音楽、歌は耳になじんでいるのですが、いざ自分がメンバーになって歌ってみると、当たり前ですが、聴くのとやってみるのとでは全く違っていて。こうやりたいのにできない、やっているつもりなのに違う、という感じが、最初の頃はずっとありました。サーカスも今まで色々なジャンルにチャレンジしてきた中で、4人だからこそジャズハーモニーができるので、ジャズをやって欲しいという声が、ファンの方の中にも多かったと思います。でも今シティポップが、また若い人達の間でも聴かれるようになって、私と勇(吉村)君も聴いてきた音楽でもあるので、そういう意味では、サーカスは昔からこういう音楽をやっていたんだよというブランディングを、もう一度やり直すいい機会だと思いました。35周年の時は私と勇君が入ったばかりで、ハーモニーがまだ完成していなかったと思います。だから今5年経って、まだまだ努力しなければいけませんが、今がスタートラインというか、改めてグループとしてこれから始まるという感覚です。

「武部さんはセッション感を大切にされる方で、生き生きとしたサウンド感を感じていただけると思います」(吉村)

――今回のアルバムは上質なシティポップが詰まった一枚ですが、プロデューサーの武部聡志さんとの作業はいかがでしたか?

叶高 まさしく上質でした。今の時代のシティポップスを嗅ぎ取って、表現してくれました。今回のアルバムの曲は、年代によってウケる曲が違うのですが、それは狙い通りで、昔のサーカスを知っている人はあの頃のサウンド感を感じる曲、「あの風を今でも」は若い方がいいと言ってくれます。

吉村 武部さんの最初のイメージは、緻密に作り込んでいくやり方なのかなと思っていたのですが、実際にレコーディングに入ると、とてもセッション感を大切にされる方で。例えば武部さんが「ここの間奏にはピアニカを入れたいな」というアイディアが思い浮かぶと、すぐ車からピアニカを持ってきて、使ったてみたり、生々しい、そこで生まれている感覚が新鮮でしたし、意外でした。特に『Futur』は、生き生きとしたサウンド感を感じていただけると思います。

叶正子 雰囲気を察して、色々なアイディアを次々と提案してくれました。

叶高 ニュートラルな方で、周りの意見をすごく聞いて下さる方です。

叶ありさ 自分だけが走るのではなく、メンバーのみなさんにイイと思って欲しいからと、何度も確認してくださり、丁寧に丁寧に仕上げていってくれました。

叶高 みんなの笑顔と一緒に作業したいという思いが、いつもあったようです。

「武部さんが、今までとこれからを、ひとつのものとして見て、表現してくれました」(叶ありさ)

「言葉に対して、ものすごくこだわりを持ってディレクションしてくれました」(叶正子)

――武部さんもこれまでのサーカスの音楽を知っているので、その良さを生かしつつ、今聴かせるべき音として、作りあげていますよね。

叶ありさ あの頃の音楽も熟知しているし、武部さんなら今までとこれからを、ひとつのものとして見て、表現してくださると思い、お願いしました。

――サウンドも素晴らしいのですが、言葉の部分でも、阿久悠さんの未発表歌詞に曲をつけたり、松井五郎さん、森雪之丞さん、マシコタツロウさんらが書いた詞の強さを、改めて感じます。4声と言葉とサウンドが、三位一体となって真っ直ぐに伝わってきます。

叶正子 武部さんが言葉をすごく大切にされる方で、歌詞の一文字一文字にすごくこだわりを持っていました。

叶ありさ 最近はサウンド重視の傾向が強いのか、聴いていて気持ちよくても、言葉が残らない曲も多いと思いますが、やはり言葉のプロ、曲作りのプロ、プロのアレンジャーが作った音楽が、もっとあってもいいと思います。

「今シティポップのアルバムを出すのも新しいと思う。若い人の反応が楽しみ」(叶ありさ)

「親子世代の男女混成コーラスグループは日本では珍しいと思う。これからも上質で遊び心がある歌を歌っていきたい」(叶高)

――言葉自体が生み出すリズムもありますよね。

吉村 すごくあると思います。昔の歌謡曲やアイドルの曲、ニューミュージックを聴いていても、とても言葉が聴こえてくるので、そういう感覚で2018年に作るのであれば、こういう感じなのかなというのが、このアルバムです。

叶ありさ 今シティポップのアルバムを出すというのも新しいと思うので、みなさんの反応が楽しみです。クラブDJや若いミュージシャンも「レコードは出さないんですか?」とか「何か一緒にやりませんか?」と気にしてくれているので、そういう人達からの反応も、気になります。

叶高 親子世代の男女の混成コーラスグループというのも、日本では珍しいスタイルだと思うので、でもただ珍しいという部分で満足することなく、上質で遊び心がある歌を、これからも歌っていきたい。

“サーカスの看板”の声に、新しいメンバー二人の瑞々しさと温かさのある声が重なり、これまでの曲も新鮮に聴こえる

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ライヴはサーカスのホームという事で、温かな空気の中でスタート。1部は<Histoire>と題して、文字通り、サーカスのこれまでのヒストリーをなぞる時間で、オープニングナンバーは「アメリカン・フィーリング」。名曲は色あせない、そう教えてくれる。膨大な数の曲の中から、悩みに悩んで選んだ曲達を、一曲一曲愛おしそうに歌う4人。ピアノだけというスタイルで、ハーモニーはもちろん、どの曲もそのメロディの良さを改めて感じさせてくれた。叶高、正子の、40年間守り続けてきた“サーカスの看板”の声に、叶ありさの瑞々しさと清潔感を感じさせてくれる声、そして吉村勇一のハイトーンで温かみを感じさせてくれる声とが重なると、そのハーモニーはますます芳醇になる。曲の輪郭がよりはっきりとして、昔の曲もまた新鮮に響いてくる。

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2部は<Futur>と題し、最新アルバムからの曲を中心に披露。洗練された、心地いいシティポップに共通しているのは“美メロ”であるという事。だからピアノ一本だけでもメロディの心地よさが伝わるし、1部で歌ったこれまでの曲と並んでも全く違和感がない。そうだ、サーカスは昔からシティポップ、AORを歌ってきているんだという事を再確認できる。昔からのファンの人も、何かのきっかけでサーカスの音楽を知った若い人も、両方が楽しめるステージ。何より4人が楽しそうに歌っている姿が、観ている人の心を躍らせる。圧倒的なテクニックと、キャリアを重ね手にした余裕、そして変わらずライヴを楽しむ姿が感動を生む。

この40周年記念ツアーはまだまだ続くので、詳細は書けないが、ピアノスタイルでのライヴを観ると、バンドスタイルでのライヴも観たくなる。そして、現在の4人になってまだ5年という事で、まだまだ伸びしろがあるという事を、強く感じさせてくれたライヴ初日だった。

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