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次代のポップスター現る アーティストも業界も大注目のバンド・Official髭男dismとは?

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「みんなの人生にタイアップできそうなグッドメロディを作りたい」

島根県松江市から全国区へ。いきなり"月9"ドラマの主題歌に大抜擢

「ノーダウト」(4月11日発売/『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)主題歌)
「ノーダウト」(4月11日発売/『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)主題歌)

平成の世も残すところ一年を切った2018年、新しいポップスターが登場した――Official髭男dism、通称ヒゲダンは、2012年に結成された島根県松江市出身の4人組バンドで、作詞・曲も手掛けるボーカルの藤原聡(フジハラ・サトシ)を中心に、徹底的に歌ものポップスにこだわる、今一番注目を集める存在だ。2015年4月にインディーズから発売した1stミニアルバム『ラブとピースは君の中』が、音楽に敏感なリスナーや同業者=アーティストの間で大絶賛され、一気に名前が知れ渡った。そんな中、今年1月に放送された人気番組『関ジャム~完全燃SHOW~』(テレビ朝日系)の『蔦谷好位置、いしわたり淳治の売れっ子音楽プロデューサー2人が選ぶ2017年の年間ベストソング特集!』の中で、蔦谷がヒゲダンの「Tell Me Baby」を「ラジオから流れてきたこの曲を聴いて、ブルーノ・マーズの新曲かと思って、思わず車を止めて聴いた」と絶賛し、2位に挙げて大きな話題となるなど、ネクストブレイクの本命といわれる存在になっていた。そして、「ノーダウト」が、いきなりフジテレビ系の“月9”ドラマ『コンフィデンスマンJP』の主題歌に大抜擢され、4月11日に突如メジャーデビューシングルとしてリリース。そんな、運と実力を持った“大型新人バンド”の“顔”、藤原聡に話を聞いた。

「働きながらでもできることを、やり尽くしてからではないと、上京する理由にはならないと思った」

藤原聡(Vo/P)
藤原聡(Vo/P)
楢崎誠(B)
楢崎誠(B)

「1月に『関ジャム』で蔦谷さんに取り上げてもらって、3月に同番組にセッションで出させていただいて、それを観てライヴに来ましたという方が増えました」と『関ジャム』の影響力に驚いていたが、オンエア直後からネット上では、「カッコいい!」「歌唱力半端ない」「グルーヴィー」「島根の誇り!」と、その歌と音楽は大絶賛された。ヒゲダンは、島根大学と松江高専の卒業生で結成され、藤原は大学卒業後地元の金融関係の企業に就職し、2年間サラリーマンを経験している。メジャーデビューというのは、大きな目標だったのだろうか?「内定が決まってから、音楽業界の方から声をかけていただくようになって、もし音楽で飯を食っていくという未来があるなら、それにかけてみたいという思いは当然ありました。でも、働きながらでもできることをやり尽くしてからではないと、上京する理由にはならないと思って。土日は休みだし、働きながらでも活動はできるので、そのペースでやりたいと思ったし、メンバーにはまだ学生もいるしという話をしたら、業界の多くの人は「それじゃあ難しいよね」という感じになって、でも今の事務所は「働きながらでもデビューはできるよ」と言ってくれて」。

松浦匡希(Dr)
松浦匡希(Dr)
小笹大輔(G)
小笹大輔(G)

その言葉通り、働きながらバンド活動を行い、2015年にインディーズデビュー。作品をリリースすると、藤原は仕事が終わってから地元のラジオ局やテレビ局にプロモーションに出かけた。会社でも営業のチームリーダーを任され多忙を極め、精神的にも体力的にも追い詰められ、倒れてしまった。「デビューしても地元にいながらここまでできているんだから、上京して音楽に専念したらきっといいものができる、という親の言葉に背中を押され、上京を決意しました。日本で一番人口の少ない町から首都に出てきたので、大変でした(笑)」。

2016年上京し、活動を本格派させる。ブラックミュージック、特にスティービー・ワンダーなどのモータウンサウンドに影響を受け、ソウルやファンク、そしてJ-POPなどあらゆる音楽を吸収、横断し、その圧倒的なポップスセンスを生み出すヒゲダン。メロディメーカーであり、トラックメーカーでもある藤原の音楽が作り出す、ポップミュージックの源泉について聞いてみた。「ドリカムはいつも車の中で流れていました。僕はグッドメロディが好きで、確かに色々なジャンルの音楽を聴いてきてはいますが、自分が好きなアーティストでも、その全ての曲が好きというわけではなくて。ヘビメタもハードロックも好きですが、自分の中で好きなメロディやフレーズがあるとハマります。もちろんそれがアイドルの曲でも、EDM、ジャズでも、そこに自分の心の琴線に触れるメロディが存在すれば、その曲を繰り返し聴くという聴き方をしてきました」。

「ダンスミュージック、J-POPに感じるグッドメロディを、ブラックミュージックに落とし込んだもの、そしてバラード、これが自分の中のコンセプト」

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藤原は高校時代aikoの音楽にハマり、高校2年生の頃から曲を作り始めた際も、彼女の影響は大きかったという。「友人が色々なブラックミュージック教えてくれて、その中でブラックミュージックを感じる邦楽だとaikoさんがいいというので聴いてみると、ハマって。曲も歌詞もアレンジも素晴らしくて、どんどん引き込まれていきました」。そんな情報を知らずに、aikoはヒゲダンのデビュー時から、曲をラジオでオンエアするなどその才能をいち早く認めていた。ヒゲダンはポニーキャニオンからメジャーデビューを果たし、aikoとはレーベルメイトという事になる。「いつか会いたいと思っていた人に、デビューしてすぐに聴いていただけていたというのはビックリしました。信じられなかったし、今、同じレーベルにいるというのも信じられない。人生って面白いですね(笑)」

1stフルアルバム『エスカパレード』(4月11日発売/初回限定盤)
1stフルアルバム『エスカパレード』(4月11日発売/初回限定盤)

ヒゲダンの音楽は3本の柱で構成されている。「「ノーダウト」のようなダンスミュージックと、J-POPに感じるようなグッドメロディを、ブラックミュージックにしっかり落とし込んだもの、そしてバラード、これが自分の中のコンセプトとしてあります」。そう藤原が言うように、4月11日にメジャー1stシングル「ノーダウト」と共に同発された、1st フルアルバム『エスカパレード』には、誰もが楽しめる、一度聴くと忘れられないグッドミュージック、インパクトのあるアレンジ、そしてユーモアの中にもメッセージ性のある歌詞が詰まっている。そんな曲達を、ハイトーンで、抜けのいいハスキーボイスの藤原のボーカルが、ソウルフルに歌い上げている。誰がどこから入っても、気になるアルバムになっている。

「ライヴは、CDの再現性を追求するのではなく、ライヴで一番伝わりやすい、一番ハッピーを共有できるアレンジを探している」

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初回限定盤には昨年12月に行われたライヴ映像がついているが、ライヴというものについてはどう捉えているのだろうか?「CDとは全く違うことをやるのが面白いと思っている派です。ブルーノ・マーズやサム・スミス、チャーリー・ブースなど海外のアーティストのライヴ映像を観るのが好きなのですが、やっぱり彼らはライヴをショーとして捉えていて。だからCDをそのまま再現するのではなく、ライヴをひとつのエンターテイメントとして完結させたという思いを感じます。僕らも例えば打ち込みで作っている楽曲も、ライヴで一番伝わりやすい、一番ハッピーを共有できるアレンジを探していこうといつも思っています」。アルバムを作って、それをライヴで演奏して歌って、ようやく完成するという考え方でもある。「歌詞のことを考えると、ライヴで歌って完成するという感じです。お客さんの目や色々な表情、景色を見て歌うということが、曲を本当に世の中に出したという感じがします。アルバムを出して、曲達をネットで褒めてもらえても、その人と同じ時間を共有していないから、どこか遠い話に思えてくるというか…」。

「みんなで音楽を共有し、ハッピーになって欲しいという気持ちが強い」

ヒゲダンのライヴは、全員が一番ハッピーを共有できるものを追求すると、藤原は語っているが、これがヒゲダンが音楽を奏でる最大の理由でもある。「みんなで音楽というものを共有して、その空間でハッピーになって欲しいという気持ちがすごく強いです。感じることや価値観、ステージに立つ理由は、アーティストそれぞれなので、色々な考え方があっていいと思います。でも僕たちの音楽を聴いてくれた人と、自分達の人生を豊かにするためにも、みんなで空間を共有して、そこでお互いに思いを共有し、広げていき、繋がっていくような音楽の場こそが、自分たちが求めているものです」。

「「紅白」がひとつの目標。みんながワクワクしそうな楽曲、みんなの人生に、タイアップできそうなグッドメロディを作って、いいライヴを演り続けたい」

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地元・島根ではヒゲダンの活躍が大きな話題になり、みんなが応援している。そんな人達のためにも「紅白歌合戦」のステージに立つ事を目標のひとつにしている。「営業マン時代にお世話になった高齢のお客さん達にも「わしらが死ぬ前に紅白に出てくれ」と言われているので、逞しくなった姿を見せるためにも「紅白」のステージに立ちたい。その目標に向けて今まで通り、一番みんながワクワクしそうな楽曲、みんなの人生にタイアップできそうなグッドメロディを作って、いいライヴを演り続けて行きたい」。

常に真面目にポップスと向き合い、愚直にグッドメロディを追い続ける旅を続け、いつの間にかメジャーという大きな場所に辿り着いていた。Official髭男dismという新しいポップスターが、これから多くの人の心にグッドメロディを届け、みんなをハッピーにしてくれそうだ。

Official髭男dism オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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