イエモン・菊地英昭のソロプロジェクトbrainchild's「ひとつのスタイルが確立できた」

「THE YELLOW MONKEY解散後の色々な経験がないと、今はない」

再集結したTHE YELLOW MONKEYのギタリスト・EMMA=菊地英昭が、新たな音楽を創造する場所

2016年1月に再集結を発表したTHE YELLOW MONKEY。15年ぶりの新曲リリース、「紅白歌合戦」への出場、2017年はドキュメンタリー映画『オトトキ』の公開などを経て、12月に17年ぶりとなる東京ドーム公演2daysを行い、存在感を見せつけてくれた。そのTHE YELLOW MONKEYのギタリスト・EMMAこと菊地英昭が、より自由に創造し、表現する場として、2008年に始動させたオルタナティブなソロプロジェクトがbrainchild's(ブレインチャイルズ)だ。これまで多くのミュージシャンがメンバーに名を連ね、2016年にスタートした現在の“第7期”はボーカル渡會将士(FoZZtone)、ベース神田雄一朗(鶴)、そしてドラム・岩中英明(Jake stone garage)というロックシーンの実力派が集結。強烈かつ、艶のある大人のロックを鳴らしている。そんなbrainchild’sが4月11日、メジャー第1弾フルアルバム『STAY ALIVE』をリリースした。カリスマギタリスト・菊地英昭=EMMAの頭の中にある、音楽の、ロックへのヴィジョンと、メンバーのこのバンドへの、アルバムへの想いを語ってもらった。

「ギターを弾き倒しているのに一生懸命歌うというのは、自分の美学とは違う」(菊地)

菊地英昭(G/Vo)
菊地英昭(G/Vo)

まず、菊地にbrainchild’sという“場所”を作った理由から聞いてみると、「元々バンドをやるつもりもなかったし、かといってソロでやることも考えていませんでした。最初はボーカリストとばかり組み、そのうちライヴをやるようになり、色々なミュージシャン達と出会い、最終的にはバンドスタイルになりました。セッションからスタートしたので、そういう部分は今でも大切にしています。セッションとはいいつつも、最終的に僕がセンターに立って歌うというスタイルになってきて、でもそれだと自由にギターが弾けない、というモードにだんだんなってきて。もっとギターが弾きたいし、そういうロックをやりたいと思い、まずロックバンド・鶴の神田(雄一朗)君に声を掛けました。そこから人に渡會君と岩中君を紹介してもらって、今の形になりました。結局ロックバンドというところに立ち返った。モードというよりも本質に近いという事だと思う」。

ギターを懸命にかき鳴らしながら、一生懸命歌う――それは菊地の考えるギタリストの美学とは違うという。「昔はライヴ中に、このリフを弾きながら歌わないといけないから、もうちょっとリフを簡単にしておこうと考えたりもしました。ギターを弾き倒しているのに歌っているというのは、自分の美学的に違うし、カッコイイと思えない。そうなると、華があって艶を感じるボーカリストが必要だなと。そのひとつの答えがここだったという事です」(菊地)。

「下の世代にも、素晴らしいミュージシャンがいるという事を、イエモンのファンを含めてたくさんの人にも教えてあげたいし、自分もこのプロジェクトで大きくなっていきたい」(菊地)

神田雄一朗(B)
神田雄一朗(B)

年下の腕利きのミュージシャンと、音を構築していく菊地は非常に勉強になっているという。「自分よりも下の年代でも素晴らしいミュージシャンはいっぱいて、僕がわかり得ないものをたくさん持っている気がしたので、刺激になると思いました。勉強させられる事がたくさんあります」。

もちろん下の世代のミュージシャンを引っ張り上げたい、後進を育てたいという気持ちが強くなっている。「そういう思いは少なからずあります。THE YELLOW MONKEYという大きな存在があって、そのギタリストがやってるわけだし、偶然にも同じ4ピーススタイルなので、比較はされると思います。でもやっぱりこの年代にも素晴らしいミュージシャン達はいるんだよって、THE YELLOW MONKEYのファンの方たちにも知ってもらいたいし、そこからまた広がっていって欲しい。自分としても、brainchild’sとしても大きくなっていきたいし、そうなっていかないと、音楽シーンがつまらないものになってしまうという気持ちはあります」(菊地)。

「自分のバンドとは全く世界観が違うので、違うベクトルのカッコ良さを、持ち帰りたい」(神田)

他のメンバーは日本を代表するバンドの、カリスマギタリストとバンドを組む事になって、どう思ったのだろうか。ベースの神田は、元々THE YELLOW MONKEYのコピーバンドをやっていたという、筋金入のイエモンファンだ。それは、神田だけではなく他のメンバーもそうだ。人気ロックバンド・鶴でも活躍する神田に、brainchild’sとして活動する意義を教えてもらった。「僕がやっている鶴というバンドはファンクロックで、こっちはもっとストレートなロックで、全く世界観が違うので、鶴でできない事ができています。昔からいいメロディ、いい歌詞ももちろん大切ですが、とにかく“カッコイイ音”が好きなんです。brainchild’s7期が作る音はカッコイイ。だからそこの欲求が、鶴とは違うベクトルで、この現場はすごく満たされます。それを鶴に持って帰る事ができるので、収穫が多いです」(神田)。

brainchild’sの楽器隊3人が作り出す音は、シンプルだけど、豊かで奥行きがある音だ。その音を、渡會のボーカルがさらに豊潤なものにする。「豊かな音って表現、いいですよね。いい音っていうよりも、豊かな音とか、単純に気持ちいい音とか、カッコいい音が結局いい曲だと思うんですよね」(菊地)。「ちょっとやり過ぎたり、詰め込みすぎたりすると、EMMAさんが「もっとシンプルに、真っすぐに行こう」って言ってくれるので、小賢しい感じはしないと思う」(神田)。

「イエモンのファンにも、"EMMAさんの最新のバンドで歌っているボーカル、なんか変だぞ”って思ってもらえればいい」(渡會)

「このプロジェクトは自分にとっては"EMMAザップ"(笑)。突出したオリジナリティを求められている」(岩中)

渡會将士(Vo/G)
渡會将士(Vo/G)

3人が出す音は、決して歌を盛り上げようとか、歌に寄り添う感じではなく、それぞれが音を主張していて、その上で存在感を放つ渡會のボーカルが、このバンドの武器でもある。「結局曲を作る時には、歌をメインに作りますが、考えてみると、それぞれがカッコイイ事をやっていれば、なんでもアリだと思うんですよ。ちゃんと伝わるというか、そこで共存していけると思います。何かを立てるために、何かを引っ込めるという方法論もありますが、それぞれの音がよければ、一か所に集まっても、きちんと聴こえると思う。フレーズもそうだと思っていて。それぞれのフレーズが素晴らしくて、とんでもない不協和音になってない限りは、全部ちゃんと聴こえた上で、パンチになると思う。そういう演奏に対して、被せてくる歌が、「そこをついてくるんだ」っていう驚きはいつもあります」(菊地)。「セッションしながら作っている感覚もあって、みんなスクエアのビートを刻んでるけど、EMMAさんだけ軽くシャッフルしている時に、歌だけ、気持ちシャッフルにするとグルーヴが整っていったり、面白いです。ずっとbrainchild’sを聴いてくれているファンの方にも、THE YELLOW MONKEYのファンの方にも、EMMAさんの最新のバンドで歌っているボーカル、何か変なやつだぞって思ってもらえればいいかなと(笑)」(渡會)。「最初はやっぱりEMMAさんの後ろで叩くという事で、プレッシャーを感じていました。自分にとってはEMMAザップです(笑)。求められる事が多いというよりは、どこか突出したオリジナリティを求められる感じです」(岩中)。

「『STAY ALIVE』は、brainchild'sとしてのひとつのスタイルが確立できた」(菊地)

5thアルバム/メジャー第1弾アルバム『STAY ALIVE』(4月11日発売/初回生産限定盤)
5thアルバム/メジャー第1弾アルバム『STAY ALIVE』(4月11日発売/初回生産限定盤)

そのそれぞれの突出したオリジナリティが、菊地がいうこのバンドの“パンチ”になっている。brainchild’sが作り出す音楽は、「自分たちの世代の人にも聴いてもらえるだろうし、メンバーそれぞれを支持してくれている世代の人達にも、もちろん聴いてもらえると思うし、色々な世代、人に聴いてもらえる個性は持っているはず。今回の『STAY ALIVE』はそういう作品になっていると思うし、brainchild’sとしてのひとつのスタイルが確立できたと感じています」(菊地)。

brainchild'sの5枚目となるアルバム『STAY ALIVE』は、現メンバーでの初のフルアルバムだ。60年代のロック、グラムロック、パンク、R&B…様々な時代を横断する音楽の、オルタナティブな風を感じさせてくれる。しかしどの曲もサビがキャッチーで、間口が広い。だから幅広い層に訴求できる。菊地の創造力と、それぞれのメンバーのセンスと、高いスキルとが合致して、艶のある大人の美しいロックを作りあげている。

「イエモンを聴いて育ったので、「この歌詞、別になくてもいいんじゃないかな」という歌詞を入れたくて作った曲が「Higher」」(渡曾)

「このアルバムの出発点は「TWILIGHT」。この曲に沿って、他の曲ができた」(菊地)

岩中英明(D)
岩中英明(D)

メンバーに『STAY ALIVE』の中でも特にお気に入りの曲を教えてもらった。「「Esper Girl」がシンプルに好きです。叩いていて気持ちいいし、サビの詰め込み方もすごく気持ちいい。俺は絶対歌えないけど(笑)、すごくいいメロディ」(岩中)。「僕は「Rain Stain」です。“Stain”という言葉が、歌詞になっているのが新鮮です。歌で最終的に全体のグルーヴを調整していく部分や、ベースと歌との絡み、歌が入る前と後で、全然インパクトが変わって化学反応が起きた歌です」(神田)。「「Rain Stain」は、60年代のフォークロックと90年代のレッチリっぽい感じとかが、融合したら面白いかなと思って作りました」(菊地)。「僕は「Higher」です。「この歌詞、別になくてもいいんじゃないかな」という歌詞を、どこかに入れたいと常々思っていて。THE YELLOW MONKEYを聴いて育ってきたので(笑)。それができた曲です。「二匹の猫も元気かい」って別になくてもいい歌詞だなと思っていて、物語の本筋とは全然関係ないけど、親近感が湧くというか、個人的なことを歌ってるいるような印象になります。この一行が書けただけでもよかったなと思います」(渡曾)。「このアルバムは「TWILIGHT」という曲ができたところから始まっています。ちょっと懐かしいサウンドの質もそうだし、この曲に沿って他の曲を作っていきました。そういう意味でも愛着、思い入れがある曲です」(菊地)。

“何かわからないんだけどカッコイイ”――『STAY ALIVE』を聴いた時に最初に感じた事だ。「オアシスもそんな感じでしたよね。なんかわからないんないけど、カッコいいなと思える、つかみどころがないところが」(菊地)。とにかくカッコイイ、というべきか、そのカッコ良さが何なのか、それを探しに何度もアルバム『STAY ALIVE』の世界に飛び込んでいくのだ。

「イエモンを一回解散していなかたっら、また気持ちが違ったのかもしれない。このプロジェクトもなかったかもしれない。だから自分の人生にとってはいい転機だったと、今は素直に思える」(菊地)

そんなbrainchild’sについて菊地は「THE YELLOW MONKEYを1回解散していなかったら、また気持ちが違ったかもしれない。解散して、ライヴハウスとかにも行くようになった事で、今があるんじゃないかなって。解散後の色々な経験がないと、今はないかもしれないですし、brainchild’sの今もないし、もしかしたらTHE YELLOW MONKEYの今もなかったかもしれない。だから自分の人生にとってはいい転機だったし、いい時間だったし、今は全てそう捉えることができています」と語ってくれた。まさに今が充実の時――そう思わせてくれる、エネルギーに満ち溢れたオーラを放ちつつ、今を楽しんでいる、柔らかな空気を感じさせてくれた。

brainchild'sオフィシャルサイト