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5人のミュージカル俳優、4人の音楽P、40人超えのバンドが紡ぐ圧巻の歌――一夜限りの奇跡の現場とは?

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
左から山崎育三郎、莉奈、昆夏美、木下晴香、武田真治

武田真治、山崎育三郎、昆夏美、莉奈、木下晴香の人気ミュージカルスターが夢の共演

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昨年大ヒットした映画『La La LAND』、そして現在大ヒット中の映画『THE Greatest Showman』など、近年、ミュージカル映画が日本でも人気で、音楽番組でもミュージカルスターが出演し、歌を披露する機会が増えてきた。昨年3月18日にBS-TBS『Sound Inn“S”』で放送された“ミュージカルスぺシャル”(山崎育三郎、城田優、新妻聖子、昆夏美)、12月13日に放送された『FNS歌謡祭2017』“ミュージカル・スペシャルメドレー”は、いずれも好評で、SNS上でも大きな話題となった。そんな中、『Sound Inn “S”』(毎月第3土曜日23時~23時30分)では、前回の反響を受け、“ミュージカルスペシャル”の第2弾を、3月17日に通常の30分を1時間に拡大してオンエアする。武田真治、山崎育三郎、昆夏美、莉奈、木下晴香という、ベテランから新人まで、プリンスとプリンセス、豪華な顔ぶれが揃った。その収録現場に取材に行ったが、そこで繰り広げられていたのは、まさにこの番組でコンセプトでもある、“時を超えた、ここでしか聴くことのできないサウンド”。最高のアーティストとアレンジャー、ミュージシャンがその感性をぶつけ、生まれる、素晴らしいミュージカルナンバーの数々。素晴らしい音楽が生まれた瞬間を目撃する事ができた。

服部克久、三宅一徳、斎藤ネコ、坂本昌之という豪華アレンジャー陣が紡ぐサウンドを、40人を超えるビッグバンドが弾き出し、豪華セッション

武田真治
武田真治
山崎育三郎
山崎育三郎

今回の“ミュージカルスペシャル”への出演は2回目となる山崎は前回を振り返り、「ミュージカル俳優を集めて、ミュージカルスペシャルを番組でやらせていただく事自体、画期的だったし、興奮しました。それまでミュージカルを観た事ない方が番組を観て、劇場に足を運んでみようかなと思ったという声も届いています。反響は大きかったです」と語っていた。ミュージカルファンはもちろん、ミュージカルに興味がなかったという人も引き込まれてしまうのは、楽曲の良さはもちろん、圧倒的な歌、表現力と、豪華なサウンドがひとつになった時に生まれる感動によるものだ。この日も、番組史上最多の40人を超えるスペシャルバンドが、ゴージャスな音を構築していた。それを指揮するアレンジャー陣も服部克久、三宅一徳、斎藤ネコ、坂本昌之という豪華な4人が集結し、それぞれの“音”を作り上げていた。

生演奏でのミュージカルスターの競演という事で、コラボレーションも楽しみのひとつだ。まずは服部のアレンジ・指揮で「ミュージカル・スタンダード・メドレー」を聴かせてくれた。昆×莉奈「シェルブールの雨傘」(『シェルブールの雨傘』)、山崎×木下「Tonight」(『ウエスト・サイド物語』)、そして全員で「Memory」(『キャッツ』)と、人気ミュージカルのおなじみの名曲を披露。スケール感と繊細さとが織りなす服部が紡ぐ美しいアレンジと、5人の圧巻の表現力とは相まって、感動的だった。本番前には服部から5人に細かい指示が飛び、5人はスタジオの隅で歌い合わせのチェックに余念がなかった。本番では息の合った見事なパフォーマンスを見せてくれた。

ミュージカル俳優それぞれが思い入れのある楽曲を、情感を込め歌う感動のステージ

昆夏美
昆夏美
莉奈
莉奈
木下晴香
木下晴香

ソロ曲は、山崎は5月末から開幕する自身が主演を務める舞台『モーツァルト』から、「何故愛せないの」を、「共演する父親役の市村正親さんの顔を思い浮かべながら歌います」と三宅のアレンジで披露。武田真治は「ミュージカルに出演するようになった頃に、初めて出会ってカッコイイと思った曲。音楽にする意味が詰まっていると思った」という、『ジキルとハイド』から「時が来た」を坂本のアレンジで、そして昆は『ミス・サイゴン』から「命をあげよう」を三宅のアレンジ歌った。「“命をあげよう”という言葉、歌詞はなかなかない。その意味の重みと、シェーン・ベルクが作った楽曲の壮大さが相まった素敵な楽曲」と、万感の思いを込め披露してくれた。莉奈は「子供の頃から大好きな曲。ずっと女優になる夢を持っていて、これを聴くと、自分を奮い立たせてくれる私のファイトソング」という『リトル・マーメイド』の「Part of Your World」を斎藤のアレンジで、そして木下晴香は「大好きな映画」『モアナと伝説の海』から、「How Far I’ll Go」を服部のアレンジで、それぞれ披露してくれた。ミュージカルの魅力を訊かれ、「自分で歌への思いを分析してみると、私が歌うというよりも、役としてその思いや、生き様を言葉にして歌に乗せるのが好きなんだと思うし、それがミュージカルの魅力だと思う」という昆の言葉通り、やはり劇場で鍛えられたその表現力は、テレビの画面を通してでも強く伝わり、観ている人の心をつかむ。それはミュージカルに興味がない人でも、だ。

「心をひとつにして頑張りましょう」という山崎の掛け声で気合注入。5人が圧倒的な集中力と爆発力を見せ、さすがのパフォーマンス

木下晴香×山崎育三郎
木下晴香×山崎育三郎

ラストは「ミュージカル・ムービーソング・メドレー」で再びコラボ。斎藤のアレンジで昆×山崎が「Another day of sun」(『La La Land』)、莉奈×武田(SAX)が「Don’t You Worry ‘Bout A Thing(『SING』)」、木下×山崎が「This Is Me」(『THE GREATEST SHOWMAN』)と、最近のミュージカル映画の人気曲を歌った。5人でメドレーを合わせるのはこの日が初めてという事だが、息はピッタリだ。「この5人でテレビに向かってやれている事が不思議。難しいけど楽しい。これだけのオーケストラの生演奏で歌えるのはありがたい事」(昆)。

昆夏美×莉奈
昆夏美×莉奈

斎藤と5人、バンドメンバーとが最終確認を行いながらリハーサルが進む。自分達が歌わないパートも、バックダンスで盛り上げようと、山崎を中心に即興で振り付けが始まる。またセット裏では、英詞を英語が堪能な莉奈にチェックしてもらいながら、歌詞の確認をギリギリまで行い、限られた時間の中で少しでもいいものを作りあげようとする、出演者、スタッフの熱量が、スタジオに溢れていた。最後は5人で円陣を組み、山崎の「心をひとつにして頑張りましょう」という掛け声で気合を注入、本番に臨んでいた。武田が「緊張感もあるけど楽しめている自分もいて幸せな時間を過ごしている」と言うように、楽しみながらも、5人の圧倒的な集中力、爆発力で見事なメドレーができあがった。

「ミュージカルに興味がない人にも、興味を持ってもらえる選曲だと思う」(武田)

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収録を終え、山崎は「楽曲もポップで明るい曲が多かったので、とにかく楽しかった」、武田は「ミュージカルに興味がない人にも、興味を持ってもらえる選曲だったと思う」と、それぞれ選曲の良さを挙げ、昆は「5人で楽しくミュージカルの魅力を感じながら歌えて、それが一番の収穫だったので、観ている方にも楽しんでもらえると思う」、莉奈は「「Another~」を歌っていて間奏の時、ふと後ろを振り返り、オーケストラの方達が演奏しているの観て、この空間、時間が夢のようでした」、木下は「初めて音楽番組に出るという事で、最初はすごく緊張していましたが、皆さんが温かく迎えて下さったおかげで途中から緊張もほぐれ、楽しく歌う事ができました。この場にいられる事が光栄です」と、収録を心から楽しんだ様子が伝わってきた。

5人のミュージカルスターが唄う情感豊かな歌、4人のアレンジャーのセンス、そして40人を超えるバンドが奏でるサウンドとが融合、化学反応を引き起こし、一夜限りのまさにスペシャルな音楽、時間が生まれた。

『Sound Inn "S"』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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