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T.M.Revolution西川貴教が語る、これからの「西川貴教」が進むべき道

田中久勝音楽&エンタメアナリスト

T.M.Revolution(以下T.M.R.)として昨年5月に20周年記念イヤーを完遂。次の一手を注目していたところ、「西川貴教」名義での新プロジェクトを始動させた西川貴教。自身もファンも観た事がない風景を求め、新しい創造の旅に出る。その第一弾シングル「Bright Burning Shout」を1月28日に先行配信、3月4日にCDとしてリリースした。なぜ今一個人、西川貴教の充実を求めるのか、インタビューした。

「シンガーとしての声や歌を使って、もっと自分の可能性を探ってみたい」

――まずは、西川貴教名義で活動をしようと思ったきっかけから教えて下さい。

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西川 以前から歌番組やCM、イベントなどで、他の方の楽曲を歌わせていただく機会が割と多くて、その時、皆さんから「あなた歌上手ね」って言われて(笑)。今まで20年以上T.M.R.で活動してきても、そんな評価をもらった事なかったのに(笑)、今までのアプローチではない楽曲を歌った時に、そういうリアクションをいただく事が増えてきました。そういった中で、20周年という節目を迎えて、自分自身のこれまでもそうですし、これから先を考えた時、自分の声を使った新たな挑戦ができないかなということは、ぼんやりと考えていました。でも20周年をきちんと終えるまでは、新しい事を考える余裕もなかったですし、その中で昨年に関しては、母親が亡くなってしまったり、色々なことが重なって、自分の中でもここが一歩踏み出す時期、タイミングなのではないかと感じ、後押しされたところもありました。僕自身シンガーとしてというか、声や歌を使って、もっと自分の可能性を探ってみたいという思いが強くなりました。T.M.R.というフォーマットの中で、みなさんが求めてくださるT.M.R.や、T.M.R.における西川貴教というものはこうだという、キャラクターから逸脱したものを提供するのはいい事なのか、悪い事なのか悩みました。悩んだ事で逆に、既存のもの、リミッター、枠組を外して、もっとニュートラルで自由度が高い状態で、西川貴教に色々な事をさせてみたい、こういう事をやってみたいと思ってくださる方と一緒に、作品作りをしていきたいという気持ちになりました。

「結局僕はシンプルに歌唄いなので、"生ボーカロイド"的な感覚で、色々なものにチャレンジしていきたい」

――T.M.R.の未来のために、一回自分でも俯瞰からT.M.R.を見直したいという気持ちもあったのでしょうか?

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西川 というより、今回のプロジェクトが、今後どういった形で、それぞれに反映されてくるのかという楽しみはあります。でも結局僕はシンプルに歌唄いなので、その僕自身の原点にもっとフォーカスしたかったし、いわば歌一本でどこまでできるのかと。僕はやっぱり歌にこだわって生きていきたいと思ったし、そういう意味でもこの声、歌を、さらにどう磨いていくか、昇華させていくかが大切です。T.M.R.という枠組の中では、こういうことをやれば、きっと皆さんに喜んでもらえるんじゃないか、この曲はこういう風に打ち返せばいいとか、フォームのようなものができていると思っていて。それを一回外して、どこからどんな球が飛んでくるかわからない状態で、でもそれを毎回きちんと相手の胸元や的確な場所にセンタリングをあげたいし、そういう事がきちんとできるかという事を、歌を使ってやっていく。表現が正しいのかどうかはわかりませんが、“生ボーカロイド”とか、そういう感覚に近い。実は今回このシングルをリリースしながら、次の準備ももう始めていて。手を挙げていただいた作家の方と、一緒に曲の制作を行っているのですが、先方は一度歌わせてみたかった、僕自身もその方と組んでみたかったので、まるで大喜利みたいな感覚でひとつひとつ、毎回オチを作っていく感覚です。

――確かにT.M.R.というブランドが大きくて、イメージが強すぎて、西川さんと何かやりたいと思っているクリエイターが、声をかけ辛かった、というのはあったかもしれないですよね。

西川 僕自身もそういう実感がなかったのですが、今後はこういう形でやっていきたいと思っているんですという話をしていたら、接点があるクリエイターの事務所の方や、他のレーベルの方が「うちの作家が作っている楽曲を是非歌って欲しい」と、言って下さる方もたくさんいて。これからはどんどんコラボレーションができると思うし、場合によってはフィーチャリングのような形もできると思っています。自分自身を磨く機会を、なるべくたくさん設ける事ができたらいいなと。

「色々飛んできたものを、どう打ち返してオチをつけるか、西川貴教の大喜利、西川無双みたいな感じ(笑)」

――もう楽しみしかない、という感じですか?

「Bright Burning Shout」(3月4日発売)
「Bright Burning Shout」(3月4日発売)

西川 正直、1月28日に「Bright Burning Shout」の配信が始まるまでは、どんな風にこれまでのファンの方に受け入れられるのか、不安でした。それまでは説明が足りなかったので、「T.M.R.と何が違うんだ、ソロでしょ」と。バンド(abingdon boys school)を始めた時は、違いが一目瞭然だったと思いますけど、今回に関しては、「元からソロなのに、なんで今、西川貴教になる必要があるのか」という疑問の声もありました。プロジェクトを立ち上げますと言っても、何の事だかわからなかった方、またT.M.R.を応援してくださっている方からすると、「何、もう(T.M.R.を)やらないってこと?」ってなって。それが、曲が徐々に完成していき、こういう場でプロジェクトを立ち上げるに至った経緯とか、思いを伝えさせていただいたり、良くも悪くもSNSを使い、自分の言葉で伝えることができた事で、幾分、趣旨の難しさを緩和できているかなと思っています。実は難しいことではなく、逆にもっとシンプルになるというか、西川貴教の歌大喜利という感覚で、別名、西川無双みたいな(笑)。色々なものが飛んでくる、それをどうなぎ倒すか、僕自身も毎回毎回試される気持ちで挑んでいます。逆に「こんな事できるの?」もしくは、「これくらいやってもらわなきゃ困るでしょ」という感じで、僕を素材にして作家の方には今までなかった楽曲のアプローチや、今回も作詞の田淵智也くんのコメントが象徴的ですけど、他の方には多少強めの言葉や、照れがあって言えない事も……

――西川さんにはぶつけられるし、歌ってほしい、と。

西川 そういう、皆さんのクリエイティビティを掻き立てられる存在でありたいです。

「「ツアーもリリースもできている現状に、何が不満なの?」とおっしゃる方もいますが、そこにとどまりたくないだけなんです」

――20年を過ぎ、これから先の10年、20年を考えた時に、アーティストとしてさらに進化していくためには、という事を考えると、タイミングもやろうとしている事もいい選択だったのではないでしょうか。

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西川 人によっては、「そんな面倒くさい事をわざわざやらなくても、ツアーもリリースもできている現状に何が不満なの?」って、おっしゃる方もいると思いますが、ただただそこにとどまりたくないだけなんです。常に自分自身にアップデートをかけて、毎回フレッシュに感じて欲しいと思っていて。ある人に「5年周期で新しい事、プロジェクトにチャレンジしていて、タイミングタイミングで、新しい部分見せているところが、こうやって長く続けていらっしゃる秘訣なんでしょうか」と言っていただいた事があって、僕は5年周期というのは全然意識していなかかったのですが、本当にそうだなと思って。そういう意味でも、新たなプロジェクトが自分自身の顔になっていくというか。長い目で見てそういう活動が、色々なものにいい影響、プラスのエネルギーのようなものを取り込む、新たな自分のインターフェースになってくれるのでは、とすごく期待しています。

プロジェクト第一弾には豪華作家陣が集結。「みなさんからいただいた期待だと捉えています」

――次に何をやるべきなのかという嗅覚がすぐれていて、それが大体5年感覚でやるのが自分には合っているという感覚も鋭くて、結果、新規ファンをどんどん開拓する事ができているのだと思います。

西川 ただこればかりは、改めて思いますけど自分がやりたいからといってできる事ではなくて。いただく機会とか、巡り合わせのようなものが、すごくあると思っていて。今回のプロジェクトも、アニメ『Fate/EXTRA Last Encore』という作品ありきで、そこに寄り添いつつも、今までにはない新しいものを生み出したいと思い、同作の劇伴を担当している神前暁さんと、『イナズマロック フェス』にも2回出演してくれた、UNISON SQUARE GARDENの田淵くんにお願いしました。『Fate』シリーズという作品で、この作家陣が並ぶというのも、なかなかありそうでないと思いますし、みなさんから投げていただくアイディアもすごく新鮮でした。

――作詞を手がけた、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也さんが書く言葉は、以前から気になっていたのでしょうか?

西川 以前から注目していましたし、バンドとしても熟しているし、田渕くんも作家としての活動も充実しているじゃないですか。そういう意味でも、僕自身がどういったものを伝えていけるのかを考えた時に、もっともっと色々な言葉、自分のボキャブラリーにないものを含めて、どんどん吸収していきたいという思いもありました。

――カップリングは「awakening」=“覚醒”です。西川貴教プロジェクトの第一弾でこのタイトルというのは、意味が…。

西川 込めてくださった、託してくださったんだと僕は思っています。今回はプロデューサーとしてではなく、西川貴教という一シンガーとして、色々なものと向き合っていく、これまでのフォーマットを踏襲せずに、新たな向き合い方をしていきたいというところから始まっています。だから逆に歌わせたい事、言わせたい事は何ですか?という問いかけから基本的にスタートさせていただいているので、神前さんしかり田淵君しかり、僕を通してそういったものを見出してくれたと感じていますし、これが皆さんからいただいた期待だと感じています。

「地球ゴージャス」の舞台に客演として参加。「担うべき自分の役割が圧倒的にあって、それを自分の中できちんと提示しながら、吸収、勉強したい」

――4月から7月にかけて地球ゴージャスプロデュース公演Vol.15『ZEROTOPIA(ゼロトピア)』に出演しますが、西川さんはいつもライヴではファンの視線を全て受け止めていて、でも舞台では歯車のひとつとして参加して、置かれている立場が違うと思いますが、そこはどう感じていますか?

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西川 今回は「地球ゴージャス」という歴史あるカンパニーに、客演として参加させていただくので、担うべき自分の役割が圧倒的にあって。それをきちんと自分の中で提示しながら、かつ僕自身にはそういう場所でこそ吸収できる事、勉強できる事がたくさんあると思っています。自分が場をコントロールして、場を作るという、今までのライヴとは違う舞台という場所への参加なので、演出の仕方や、なかなか聞きたくても聞けない事がクリエイトされていく瞬間を、これまでやらせていただいた舞台でも感じて、勉強させていただきました。今回の舞台でも、それをまた自分のステージや舞台や作品に生かしていければと思っています。常に自分の中でインプットできるタイミングを逃さない、ボーっとして自分のキャラクター作りに終始してしまうと、作品が終わったときに抜け殻になってしまうと思います。でもそれを早めにきちんと形にして、周囲に目を配る事ができると、自分を削りながらもインプットも同時にできます。

――いつも西川さんのプロジェクトは西川さんがバシッと決めて走り出すことが多いですが、カンパニーの中に入ると、身を任せる状態になるわけで。それはそれで吸収できる部分も多いので、心地いいと。

西川 演出される、指示される中で、「えーそうなの?」という事がよくあって。先日も本読みをやっていたのですが、自分なりに役を作っていったのに「そっちじゃない」って言われて。「ああそうなのかあ、難しいな」と思う反面、合っていようが、間違っていようが、舞台って正解はわからなくてもとにかく進んでいくじゃないですか。「これどうしたら良いですか」「みんなそれぞれ考えていうこうよ」という感じで、結果、自分が尻を拭っていくわけですから、責任は担保するんだから、自由にやってくれと言ってくれる場所はなかなかない。そんな貴重な機会を贅沢に使わないでどうするのって思います。舞台だけやっていたら、色々考える事もあると思いますが、僕の場合はそれを受けて、きちんと別のところで昇華できる、非常にありがたい立場だと思います。

――初の西川貴教名義のアルバム&ツアーも予定されているのでしょうか?

西川 出したいなと思っていますが、半年間は舞台をガッツリやるので、その後コンスタントにリリースができるように、今色々なものを複々線化させています。

10年目の『イナズマロックフェス』は初の3日間開催

――10回目の『イナズマロックフェス』も決定しました。今年は9/22~24の3日間開催です。

「イナズマロックフェス2017」
「イナズマロックフェス2017」

西川 みなさんと10年という歴史を一緒に体験する事ができたからこそ、今回の節目の10周年は感慨深いものがあります。昨年荒天で1日中止になって、その時に「キャリーオーバー」と言った言葉を実現すべく、今回3daysという形で繰り越しているので、2日間で終わるわけにいきません。10周年にして初めて3daysです。

――毎年参加させていただいているからこそ感じますが、お客さんへのホスピタリティがどんどん厚くなって、食の部分でも広がってきていて、地元の人が喜んでいるのが伝わってきます。

西川 恥ずかしい話ですけど、本当に田舎のただのお祭りですから(笑)、こんなにも広く多くの方に見知っていただくことができたというのは嬉しいです。と同時に10年というのを目指してやってきたところもあるので、それを迎えて、今後このイベントをどういうものにしていきたいのかというところが、また問われていくと思っています。

「一個人の西川貴教の充実が、他の色々なものにいい影響を与えてくれると思う」

――西川貴教プロジェクトが始まり、「イナズマ」も10年という節目で、色々な事をやるそれこそ周期なのかもしれませんね。

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西川 母親の一周忌もあって、色々な意味で、すごく自分を律してやってきた事が、昨年の20周年のファイナルから、「イナズマ」の10周年、これに向かって自分の中でも何か大きい、今後の自分自身の人生を見つめ直すいい機会になっていると思います。だからこそきちんと西川貴教として残していったもので、とにかく母にはいい報告がしたいです。このプロジェクトの積極的な活動と、それに伴う結果と、「イナズマ」の成功をきちんと報告する事が、自分にできる唯一の供養かなと改めて思います。そういう意味でも今年は思いがひとしおの一年になると思います。母親への思いは尽きませんし、正直筆舌に尽くしがたい悲しみがあります。でもだからこそ母親に「今やで、やりや!」って言われている気がしています。良くも悪くもお客様ファーストで色々なことをやってきた事で、自分自身いくつも棚上げしていたこともあります。でももうそろそろ音楽でもそうですけど、自分自身のためにやらせてもらってもいいかなって。自分自身の、一個人の西川貴教の充実が、他の色々なものにきっといい影響を与えてくれると思うので、皆さんには期待していただきながら、引き続き応援していただきたいです。

西川貴教オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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