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世界も、CM業界も注目する圧巻の歌声 "新・恋愛ソングの大家”、AISHAとは?

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「曲は99%が実話。だからリリースする度に恥ずかしくて…」

数多くのアーティストがその実力を評価。あのCMの声でもおなじみ

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デビュー8年を迎えた本格派女性R&Bシンガー・AISHA(アイシャ)が、今再び注目を集めている。彼女は2012年にメジャーデビューした後、KEITA(w-inds.)、童子-T、JAZZTRONIK等様々なアーティストとコラボ、昨年はCITIZEN「LIGHT in BLACK2017 AMBER Edition」のタイアップソング「Moonshine featuring AISHA」を、ジャズボーカリストでフリューゲルホーンプレイヤーのTOKUと共に書き下ろし、歌った。様々なアーティストから絶賛される、圧倒的かつ繊細な声を持つ、まさにディーヴァの名前にふさわしい実力の持ち主だ。その歌声は、前出のCITIZENを始め、CM業界でも引っ張りだこだ。「家庭教師のトライ」のCMで、アルプスの少女ハイジのおばあさんが、ソウルフルに「マ~イトラ~イ~9800円から~♪」と歌うシーンが出てくるが、あれを歌っているのがAISHAだ。過去にも「カナダドライ ジンジャエール」「資生堂misette」「HONDA CARS」など、多くのCMに声で出演している。一聴して聴き手にインパクトとカッコ良さ、心地よさを届ける事ができるのが、AISHAの声、歌だ。そんなAISHAが、2月14日にシングル「うそつきLIAR」をリリースする。リアルストーリー――自身の経験を偽りなく歌詞にした事で、10代~20代の若い女性ファンが、以前にもまして増えてきたという。誰もが共感できる女性の心をストレートに歌い、共感を得ているAISHAに、なぜ自身のストーリーを、赤裸々に歌うようになったのかを聞かせてもらった。

「今自分がやりたい事がちゃんとできているので幸せ」

「「私ミス・サンシャイン」って呼ばれているんです(笑)」というAISHA。明るく人を惹きつけるオーラが出ている。「AISHAが来ると、太陽みたいに輝いているから、たくさん人がいても、いつもどこにいるかすぐわかるって言ってもらえます(笑)。たぶんうるさいだけだと思います(笑)」と、まさに太陽のような笑顔を見せてくれ、インタビューがスタートした。

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デビューから8年間歌ってきて、嬉しい事も悲しい事も経験し、「でも今が一番楽しい」と言い切るように、今、心身共に充実した状態で歌う事ができているという。「小さい頃から、歌う事とR&Bが大好きでした。16歳でBMG(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)と育成契約をしてレッスンを続け、20歳の時にメジャーデビューしました。まだその頃は、自分がどんな歌を歌いたいのか、どんなメッセージを伝えたいのか、ビジョンがなかった。でも「Pink Diamond」(2015年)「CANDY LOVE」(2015年)を、自分で書いて、歌うようになって、衣装もヘアメイクも全部自分で考えてやるようになりました。だからライヴのMCでも伝えたい事がビビッドにハッキリ見えるようになって。もちろん嫌な事、不安な事もたくさんありますけど、今の方が自分がやりたい事がちゃんとできているので幸せです」。

自身の恋愛体験を歌にし、女子中高生から共感を得る。「恥ずかしいけど、受け入れてもらえると嬉しい」

恋愛を中心に、自分の身に起こった事、感じた事をストレートに歌詞に反映させると、一気に女子中高生からの支持を集めるようになった。「「CANDY LOVE」を全部自分で書いた時、今まで楽曲って、もっと“ちゃんと”しないといけないと思っていて。私は普通に会話しているような感じで詞を書いて、でもそれを女子達が「いい!」って言ってくれて、本当に嬉しかった。ライヴでもみんな一緒に歌ってくれるようになって、その時に「こういう書き方でもいいんだ」と確信しました。そこからこっちの方が楽しいと思うようになりました。今は自分が作る曲は自分の子供みたいな感じで、かわいくて仕方ないです」。

「「うそつきLIAR」は、裏切られても自分で立ち直って、自分を大切しなければいけないと思って書いた曲」

新曲「うそつきLIAR」では、何度も男性に嘘をつかれ、でももう我慢するのをやめて、自分を大切にすると決心した女性の心を歌っている。この女性こそがAISHAだ。「99%実体験で、だから作品を出す度に恥ずかしくて(笑)。恥ずかしいけど、受け入れてもらえると嬉しいです。この曲もリアルにあった事を歌っています。その時付き合っていた男性に、嘘ばかりつかれて裏切られ、何でこんなにガマンしてるんだろうって落ち込んでいる時に、これじゃいけない、立ち直ろうと思って色々な音楽を聴き始めました。でもいつもはハッピーな曲ばかり聴いているのに、なぜか自然と泣きたくなるような、悲しいバラードばかり選んで聴いている自分がいて。それで泣いて、でもその時、落ち込んだままではなく、自分で立ち直らないといけないのに、自分自身が曲に引きずられていた気がして。きっと世の中の女子も、私と同じような思いをしているコが多いと思いました。でも立ち直って、ハッピーになって、自分を大切にしなかればいけないと思えるようになって。だから失恋ソングでも、楽しくて、あなたが私の事を一番にしてくれないなら、私が自分の事を一番にして、大切にするからという内容の、ハッピーで気持ちいい曲を聴いて、みんな失恋をもっと早くゲットオーバーできたらいいなと思いました」。

リスナーはAISHAに恋愛相談しているような感覚になっているのかもしれない。そしてAISHAは誰もが経験するシーン、陥る状況を自分の経験を踏まえて、的確な答えを歌にして出してくれている。「恋愛で悩んでいても、結局自分で気付いて、もうこれ以上はいけないって自分で決めないと、立ち直れないと思う。女性はどんなにひどい思いをしても、でも私しか彼の事を幸せにしてあげられないとか思いがちです(笑)。その気持ちを突き放す事が大事。だから「うそつきLIAR」は、スパっと気持ちを切り替えて、気持ち良くいこうという思いを込めました。曲にするとセラピーみたいな感じで、ストレスが消えます(笑)。今となってはその彼に感謝です。だってこんなにいい曲が書けたから、心からありがとうと言いたい(笑)」

テイラー・スウィフトなどの曲も、プライベートな内容を歌い、物議をかもしながらも注目を集めている。「そういう曲ってアメリカではウケるけど、日本ではどうかなって思っていましたが、みなさん喜んでくれます。とはいえ、私はヘイターではないですから(笑)。“ミス・サンシャイン”と呼ばれているので(笑)。でもサンシャインの時もあれば、サンダーの時もあるという事です(笑)。雨が止んだら虹も出てきますし(笑)」。

「SHYでもいいよ」が、ミュージックビデオ作成アプリ「MUSICALY」で人気。女子中高生が当て振り動画を作り、拡散

「うそつきLIAR」のMVでは、究極の美尻で話題のモデル・宮河マヤと共演
「うそつきLIAR」のMVでは、究極の美尻で話題のモデル・宮河マヤと共演

若い人達に人気のミュージックビデオ作成アプリ「MUSICALY」でも、AISHAの曲が人気だ。「「SHYでもいいよ」という曲があるのですが、その曲は街を歩いていたら、ある人の帽子がかわいいなと思って、で、周りを見たら帽子を被っている人が多くて、それで<その帽子マジ可愛いね SHYでもいいよ こっちおいで なに飲みたい?>というフレーズが出てきました。そうしたら、この曲が「MUSICALY」で、女子中高生がみんな当て振り動画を作ってくれて、こういう広がり方もあるんだなってビックリしました」と言うように、女子中高生が「SHYでもいいよ」で動画を作り、彼氏や友達に送りそれが拡散している。

全世界で1600万人に愛されるダンスフィットネス・ZUMBAのオフィシャルソングに、アジア人アーティストとして初めて採用される

AISHAには明るく、人を惹きつけるオーラがあると冒頭に書いたが、2015年に大きなチャンスも引き寄せた。それは日本でも人気の、南米発のダンスフィットネスで、世界185ヵ国に1600 万人の愛好者を持つZUMBAのオフィシャルパートナーに就任した事だ。そしてそのZUMBAのインストラクター用教材であるオフィシャルソングにはピット・ブルやダディー・ヤンキーらの楽曲が採用されている。2016年にはAISHAの「MAKE LOVE」が、ZUMBAのオフィシャルソングにアジア人アーティストとして初めて採用され、既に世界中の人々がAISHAの曲で踊っている。

2018年もまた新たにAISHAの楽曲がオフィシャルソングとしての起用が予定されている。「最初のきっかけは、私もZUMBAにハマっていたので、ZUMBAに合う曲を作って先方に送ったところ、運よく創始者のベト・ペレズさんに気に入ってもらいました。すぐにフロリダに呼ばれ、世界中から何万人も集まるZUMBAのコンベンションで歌いました。過去にはシャキーラやピットブルも出演していて、私が出た時は、ティンバランド、シャギーも出演しました。でも、私の曲をレッスンに使ってもらっているといっても、私の事なんて誰も知らないんだろうなって思っていたら、ステージに出ていくともの凄い歓声で迎えられて。で、全員が私の曲に合わせて同じ動きをして、歌ってくれて。もうステージにいるのにびっくりしてしまいました。日本発信の音楽を、世界に届ける事ができるんだって実感しました」。 ZUMBAのオフィシャルソングを歌うシンガーは、世界中を移動してZUMBAのイベントに出演している。ハーフで、ネイティヴな英語を話せて、フランクな性格で「日本の良さを世界に向けて発信したい」というAISHAは、海外でもファンを獲得できそうだ。

「私がやっている事はポップだけど、メロディ、フェイクは自然に出てきて、それがR&Bになっている」

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R&Bシンガーとして歌い続けているAISHAだが、今の日本の音楽シーンの中でのR&Bというジャンルをどう捉えているのだろうか?「ポップスの一部がR&Bという感じです。私がメインでやっている事もポップだけど、でも私が歌うメロディとかフェイクは、感情から自然に出てくるもので、コントロールできないというか、言ってみれば勝手にR&Bになっている気がする。私は小さい頃からチャカ・カーン、ホイットニー・ヒューストン、マライア・キャリーといったディーヴァに憧れていて、ガツンと歌うのが一番好きなんですが、でもしっとりとしたバラードもちゃんと歌いたい。だから今も日々勉強です」。

元々圧倒的な力を持ち、多くのアーティストから愛されているアーティストだが、そのポテンシャルの高さが、まだ完全に世の中に伝わりきっていない。世界でも通用する国産の本格派R&Bシンガーは稀有な存在だ。幼い頃から夢だった歌手になり、歌い続けてきてこれまでもスポットライトを浴びてきたが、今またAISHAの実力、魅力がクローズアップされている。昨年は映画『スカブロ』にも出演し、女優としても一歩踏み出した。そんなディーヴァは“恋愛ソングの大家”としても、女性が共感、支持できる歌を多くの女性ファンが待っている。

AISHA オフシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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