古き佳き、そして新しい21人のビッグバンドGFJBが、結成13年でついにメジャーデビュー

在日ファンクのトロンボーン奏者・ジェントル久保田が2005年に結成した、Gentle Forest Jazz Band

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Gentle Forest Jazz Band(ジェントル・フォレスト・ジャズ・バンド、以下ジェントル)というビッグバンドを知っているだろうか?人気ファンクバンド・在日ファンクのトロンボニストでもある、現代のヴォードヴィリアン・ジェントル久保田が率いる、21名が奏でるビッグバンドジャズが、今、注目を集めている。結成は2005年。これまで3枚のアルバムを発売し、ライヴを精力的に行い、知る人ぞ知る存在だったが、4枚目のアルバム『GFJB』で、1月24日にワーナーミュージック・ジャパンからついにメジャーデビューを果たした。ジェントルの指揮者でもあり、トロンボーン奏者でもあるジェントル久保田に、このバンドが目指すところ、アルバムについて、そしてビッグバンドの魅力を聞かせてもらった。

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「ジャズとメジャーって結びつかないと思っていたし、でも結成した時は“フジロック”とかに出られるといいねという話はしていました」。和光大学に通っていた久保田は、中央大学のビッグバンドサークル「スウィング・クリスタル・オーケストラ」で活動していた。その仲間と結成した社会人バンドがジェントルだ。「週末に集まって時々ライヴをやる、ただただ楽しんでいたバンドなので、デビューは考えていなかった」という。しかしそのライヴが徐々に評判になり、久保田は在日ファンクの活動と並行しながら、ジェントルは2010年にアルバム『だけど今夜はビッグバンド!!』でインディーズデビューを果たした。

「昭和時代のビッグバンドをそのままやるのではなく、ちょっと違う視点から見られるように攻めてきた」

ひと昔前はテレビの音楽番組等やライヴシーンでもビッグバンドが活躍し、人気を集めていたが、最近はその存在自体が珍しくなってしまった。「当時のようなビッグバンドで、お金を取って演奏を聴かせる時代ではないというか、それが喜ばれる時代ではないと思う。それを正面からやると、昔のものをなぞっているだけという印象になってしまうので、僕らはちょっと違う視点から見られるように攻めていくというか。気がつくと僕らがいて、「あれ、このバンド、昔の感じもするし、今までなかった感じだよね」と思ってもらいたい」。

ジェントルのライヴは、久保田のタクトさばきが見もの。「ビッグバンドは指揮者なしでも成立する。でもお客さんとステージ、ジャズを繋げるのが自分=指揮者の役割」

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ジェントルのライヴは、指揮者・久保田の華麗なタクトさばきが見ものだ。バンドも指揮しつつ、観客を指揮しているようでもある。時にコミカルな動きやダンスを披露し、さらにトロンボーンを吹き、観客の目と耳で楽しませる。「ビッグバンドは基本的には指揮者がいなくても成立します。お客さんにとっては、ジャズってどうやって観るものなのかわからない、もしかしたらクラシックよりもわからないかもしれません。でも基本はダンスミュージックであり、エンターテイメントであるので、お客さんが硬くなっているところを解きほぐしてあげ、ステージとつなげる役割という意味での指揮者です」。

「僕等がやっている音楽は湧き上がるリズムと、ちょっと怪しい音色のダンスミュージック」

笑いを取りつつも、いざ音に耳を傾けると本格的で、21人の見事なアンサンブルに一瞬でひきつけられる。「ジャズの立ち位置で難しいのは、ジャズマン達は、みんなに聴いてもらおう、間口を広げようと思って何かをやると、ジャズから逸脱して色々なジャンルの音楽をやってしまいがちです。でもプロだから何でもできるという見え方ではなく、ジャズという音楽のプロであって、それを本格的にやっているという事が、もっときちんと見えた方がいいと思っていて。僕らがやっているジャズは、4ビートで昔の黒人のミュージシャンがやっている、湧き上がるリズムと、ちょっと怪しい音色のダンスミュージックです。明るい曲調の中にも、影があるような感じのもの、そういう音楽のプロなんです。もちろん場所や、コラボレーションする相手によって、エンターテイメント色が強い事もやりますが、基本的な部分はぶれず、軸がちゃんと見えるように心がけています」。

「憧れはカウント・ベイシー・オーケストラとデューク・エリントン・オーケストラ。でも僕達は超一流じゃない。それぞれの"できないところ”が面白くぶつかって、ひとつになっていくのが大切」

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久保田が憧れているのは、世界中の人々から長年愛されている、カウント・ベイシー・オーケストラとデューク・エリントン・オーケストラ。力強さとポップさとを併せ持つ、ビッグバンドだ。「あのオーケストラのミュージシャンは、音がみんなバラバラというか、その人独特の音色があって、それを合わせてひとつにする面白さだと思います。超一流の人たちは、ハーモニーができやすい音をちゃんと出せるのですが、我々は超一流ではないので、その人たちにはできない事の面白さを追求したい。ジェントルのメンバーそれぞれに弱点、できないところ、できるところがあって、そのできるところではなく、できないところが面白くぶつかって、ひとつになっていくのが重要だと思っています」。

「レコーディングはマイクを全員で囲っての一発録り。そのやり方でしか録れないものがある」

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ジェントルのレコーディングは全員での一発録りが基本だ。21人が揃って音を出し、歌い、緊張感やスリリングさをそのままパッケージしている。そこもジェントルの魅力だ。「今の音楽は、ひとつひとつの音がちゃんと聴こえて、それが混ざってもクリアで聴きやすいのですが、僕等がみんなでマイクを全員で囲って一発で録っているので、決してクリアな音とはいえないと思う。僕らが好きな、1950年~60代のビッグバンドは、シンガーも一緒にみんなで録っていて、やっぱりそのやり方でなければ録れないものがあるし、そういう音楽が好きでずっと聴いてきましたので、今、それをやりたい。もちろん綿密なリハも必要です。曖昧な部分をひとつずつ確認し合い、解消していく作業を全員でやります」。

「リハーサルも基本的には21人全員でやる。個々の面白い部分、ダメな部分を把握しているので、それぞれの個性を生かしてレコーディングに臨む」

Gentle Forest Sisters
Gentle Forest Sisters

ジェントルは、久保田が「一番大変」という21人のスケジュールを合わせ、必ず全員でリハーサルを行う。「みんながいないと僕の中で想像できないというか、譜面では表現できない部分もあるので必ず全員でやります」。リハーサルを重ねても、やはり21人の大所帯の音を合わせるのは簡単なことではない。そこには久保田の鋭い洞察力がマネージメント力になり、大所帯をまとめあげている。メンバーを鼓舞し、力が発揮できる環境を作るのだろうか、それとも追い込んで、いいものを引き出そうとするのだろうか?「レコーディングはやっても3テイクまでです。というのも、どんどんみんながそれぞれで考えるようになるからです。集団で録っていると、みんなが個人的に「ここうまくいかなかったな」と思うところを修正しようとすると、最初はみんなでひとつの事をやっているのに、微妙に個人的な感情がテイクを重ねると出てきてしまって、それが微妙な方向性の違いになっていきます。だから集団でやるというのは、一気に落とし込まないと、うまくいかなくなる。何度かやっているうちに、よくなっていると錯覚しますが、通して聴くと、最初のテイクの方が全然いいという事がよくあります。僕は集団的な見方というよりは、個人のほうを見ています。この人は打たれ弱いとか、この人は何度でも同じことはできる、この人はスタミナがあまりないから最初が全てとか(笑)、個人の特性を考えて、それぞれに伝えるようにしています。個々の面白いところ、ダメなところがわかっているので、だからこそできるのだと思います」。

「『GFJB』は、色々なジャズがあるけど、自分達が好きなジャズはこれです、という一枚を作った」

『GFJB』(1月24日発売)
『GFJB』(1月24日発売)

メジャーデビューアルバム『GFJB』もそうやって作り上げた。「ジャズも色々なジャズがありますが、僕らが好きなジャズはこれです、という一枚を作らせてもらいました」。そう久保田が言うように、最新オリジナル楽曲を中心に、お笑いコンビ・バナナマンの単独ライヴのオープニングテーマ「Bluse Banana」や、二階堂和美をボーカルに迎えた「いつも心にシャボン玉」、小松政夫の「しらけ鳥音頭」のカバーなど、いずれもビッグバンドならではのゴージャスなアレンジが楽しめる。ジェントルの定番で、久保田が敬愛するデューク・エリントンをオマージュした曲である“Dシリーズ”は、今回は「Mood in “D”」が収録されている。また「月見るドール」のMUSIC VIDEOでもフィーチャーされている、女性3人組ボーカル「Gentle Forest Sisters」の存在も、ジェントルのウリだ。「大学の卒業旅行でパリに行った時に観たビッグバンドのライヴで、メンバーが楽器を置いて前に出てきて、ハモって歌いだして、また楽器に戻るというのがすごく面白くて、欲しいと思いました」。3人の声のバランスが絶妙で、音と声が重なった時の心地良さ、カッコ良さは出色だ。

ジェントルは、昨年11月、お笑いトリオ・東京03とのコラボレーションライヴを行い話題を集めた。これまでにも同トリオの単独ライブや、10周年記念公演に客演している。「ビッグバンドをエンターテイメントして見せるというか、僕ら目線ではなく、他の人(演出家)に僕らがどう見えているのかが、ちゃんと演出されてお客さんに見せる事ができた事が大きい。それを見て、自分達の事を改めて解釈し直すことができました」。

「ライヴでは、21人が繰り出す音圧を是非感じて欲しい」

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メジャーデビューし、今まで以上にライヴを行う機会も増えていきそうだが、大きなホールでのライヴも視野に入れつつも、ビッグバンドの特性上、大きな会場がベストではないという。「マイクを通さない音の方がカッコイイというのもあって、ものすごく大きいところでやっても伝わるかどうかなんです。その時々、場面で考えればいいとは思っていますが、ビッグバンドは、基本的にはアコースティックな大きな集団という捉え方です。マイクを通して弾く楽しさももちろんあります。でも僕が本当に感動したライヴは、「原信夫とシャープスアンドフラッツ」が100人も入らないライヴハウスで、まさに“本気”のライヴをやってくれ、最後はミュージシャンがバテて吹けなくなるという感じで、それは忘れないくらいの感動でした。大きい会場でビッグバンドのスケール感や面白さを体験してもらって、小さいなハコで、マイクを通さないでこんなに大きい音が出ているんだと、その音圧を味わうのも面白いと思います」。

21人が作り出すオリジナルのスウィング。それが炸裂するエキサイティングなライヴは、一度体験すると病みつきになること間違いなし。まさに音楽の職人達が紡ぐ、温かくスリリングでゴージャスな音は、またひとつ新しい音楽の楽しさを教えてくれるはずだ。

アルバム『GFJB』特設ページ