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2017年、特に印象的だったライヴ10+1

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
桑田佳祐ツアーファイナル 12/31横浜アリーナ(Photo/西槙太一)

2017年も素晴らしいライヴをたくさん観させていただきました。ライヴ、フェス、イベント合わせて148本。どのライヴも、アーティストとファンの想い、そして作り手の情熱とがひとつになって、忘れられない時間を作り出し、感動を与えてくれました。その中でも特に印象的だったものをピックアップ。もちろん観ていないライヴの方が多いわけで、そんな中、10本+1本を紹介するのも、なんだか偉そうで、申し訳ない気持ちがあるのも事実。でも、いいものはいいとはっきり書き残す事で、「そのアーティストのライヴ、まだ観た事がない」という人に、少しでもアーティストの音楽、ライヴに興味を持ってもらえれると嬉しい、という想いを込めた。新人、中堅、インディーズ、様々なアーティストのライヴを観させてもらったが、結果的にキャリア豊富な、いわゆるビッグアーティストのライヴが並んだ。でもやっぱり、多くの人から長年支持され続けているワケ、意味を、改めてしっかりと感じる事が大切だと思った。

■桑田佳祐『この夏、大人の夜遊びin日本で一番垢抜けた場所!!』(7/10ビルボードライブ東京)

キャパ300人のライヴハウスで、桑田佳祐の歌を、メッセージを聴けたこと自体が奇跡だった。しかし、この後、40万人を動員したツアー

7月10日ビルボードライブ東京(Photo/岸田哲平)
7月10日ビルボードライブ東京(Photo/岸田哲平)
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『桑田佳祐LIVE TOUR 2017「がらくた」』の11/12東京ドーム公演と、12/30横浜アリーナ公演を観たが、気づいたのは、桑田に会場の大きさは関係ないという事だ。常に身体を張って全力でフザけ、懸命に素晴らしいポップスとそこに込められたメッセージを、ソロになって30年間伝え続けてきた。鋭くもユーモアと愛情溢れる“視線”で、移りゆく時代、社会を見つめ、切り取り、歌にしてきた。その歌は誰からも共感を得、浸透力の強い“大衆音楽”=ポップスとなり、愛されている。それを一回一回のライヴを通し、懸命に“伝える”。この圧倒的な伝達能力の高さこそが、桑田が不世出のポップスターと言われる所以なのではないだろうか。ビルボードライヴでの桑田の姿を思い出し、そう強く感じた。

桑田佳祐、ファン600人と”大人の夜遊び” ソロ30周年、シンガーとしての魅力が剥き出しになった瞬間

■UVERworld『UVERworld KING'S PARADE 2017』(2/11さいたまスーパーアリーナ)

2月11日さいたまスーパーアリーナ
2月11日さいたまスーパーアリーナ

UVERworld恒例の男性限定ライヴ。過去最高、23,000人の男共と真剣勝負を繰り広げるメンバーは6人は勇敢であり、そこから生まれる空気、熱気は今まで感じた事がない、鳥肌が立つほど感動的だった。汗と涙にまみれた23,000人の男達全員が肩を組み、大合唱するシーンはグッときた。「ここで見つけたパワーを自分の生活にぶつけてください。この扉の向こうに持っていかなければ意味がない」と、最後の最後までファンを鼓舞させる言葉を投げかけるボーカルTAKUYA∞の姿は、まさにカリスマだった。12/25に日本武道館で行われた、恒例のクリスマスライヴの熱さも尋常ではなかった。熱さを更新し続け、ファンの心に大きなものを残す、圧巻の“バンド力”は唯一無二だ。

男性限定ライヴに史上最高の2万3千人が集結 UVERworldが今一番熱いバンドと言われる理由

■スピッツ『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』(10/1宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ)

10月1日宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(Photo/内藤順司)
10月1日宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(Photo/内藤順司)

結成30周年記念ツアーのファイナルは、言葉にできないほどの切なさと、ロックバンド・スピッツが作り出すポップスに感じる豊潤さに、改めて感動。開幕戦の7/1静岡・エコパアリーナ、8/16日本武道館公演も観たが、「まだまだ通過点。これからもおもろい曲、不思議な曲をたくさん作るので期待してて」という草野マサムネの言葉通り、常に新鮮さを追求し、心から音楽を楽しむ4人の想いが、強固でしなやかなバンドアンサンブルとなって伝わってきた。メンバーチェンジも活動休止もせず30年。「こんな僕らが30年間なぜ残る事ができたのか、僕らでいいのかな?と思ったけど、役割を与えられてるという事だと思うので、引退しません!」という草野の言葉が心に残った。

スピッツ 結成30周年記念ツアースタート 「まだまだ通過点」と未来を感じさせる、”希望”に満ちた時間

■aiko『aiko Live Tour「Love Like Rock vol.8」』(9/6ZeppTokyo)

9月7日ZeppTokyo(Photo/岡田貴之)
9月7日ZeppTokyo(Photo/岡田貴之)

aikoのライヴを観る度に思う事は、彼女が作り出す曲が湛える瑞々しさは、並大抵ではないという事。だからどんなに時間が経とうとも決して色あせない。翌日に行われたファイナルで、8月の新潟公演で骨折(全治3か月)していた事を明かし、しかし残り7本をやり遂げた。踊り、ジャンプし、走っていた彼女…全く気付かなかった。そのプロ根性には頭が下がる。今年は20周年、どんな曲を聴かせてくれ、ライヴを観せてくれるのか、本当に楽しみ。

■玉置浩二『KOJI TAMAKI PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2017-THE GRAND RENAISSANCE-』(5/16東京文化会館)

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ソロ30周年を迎えた玉置のツアー初日を、幸運にも目撃する事ができた。大友直人のタクトに呼応し、力強く優雅で、繊細な音で圧巻の“響き”を作りだしていた東京フィルハーモニー交響楽団と、玉置の迫力ある強靭な歌唱力、情感豊かで圧倒的な表現力の歌とがひとつになると、得も言われぬ感動が生まれ、ホール全体を包み込んだ。その“余韻”は今も肌と心に残っている。最強ボーカリストの、凄みと深みに触れる事ができた幸せな時間。

ソロデビュー30周年 ”表現者”玉置浩二の、底知れぬ才能

■平井堅『Ken’s Bar2017』(12/24横浜アリーナ)

12月24日横浜アリーナ(Photo/古渓一道)
12月24日横浜アリーナ(Photo/古渓一道)

昨年「ノンフィクション」という名曲を作り上げ、音楽番組で度々披露し、お茶の間に感動を与えてきた。恒例の『Ken’s Bar』でも、強く凛としたアコギ一本の音色でこの曲を披露し、曲が持つメッセージの強さ、切なさ、儚さに完全にヤられた。この曲を初めて生で聴いたのは確か4/19の日本武道館公演だったが、さらに“大きく”なっていた。何か飛び出すかわからないカバー曲とリクエスト曲、お客さんとのやりとりの面白さ、泣かせて、笑わせて、平井の人間味あふれるこのライヴが、毎年楽しみでならない。

【インタビュー】平井堅 「”歌謡歌手”のような存在として、自分を捉えている」

■GLAY『GLAY ARENA TOUR 2017 "SUMMERDELICS"』(10/27日本武道館)

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GLAY史上最もトリッキーかつ、進化し続ける事の意志表明でもあるアルバム『SUMMERDELICS』を引っ提げてのツアーは、斬新かつ新鮮、そして“GLAYらしい”温かく熱いライヴだった。デビュー23年を迎えたバンドの未来を提示する事に成功したツアーだったはずだ。12/27に観たTAKUROのソロライヴ『GLAY TAKURO Solo Project 2nd Tour"Journey without a map 2017"』は、ジャズ、ブルースを奏でるヴィンテージギターの、薫り立ってくるような音色がとにかく心地よかった。

“変化”と“王道”の鮮やかなコントラストを楽しむ――デビュー23年、自由に躍動し続けるGLAYの強さ

■THE YELLOW MONKEY『THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2017』(12/10東京ドーム)

約17年ぶりとなる東京ドーム公演は、開演前から新旧ファン5万人のワクワク感とドキドキ感が支配し、素晴らしい空間に。4人の佇まい、色気のある音と歌、まさに日本語ロックの最強バンドが、ドームでロックンロールショウをやるとはこういう事だと、見せつけられた気がした。10月に、彼らの復活を追ったドキュメンタリー映画『オトトキ』を観ていただけに、全てにおいて“説得力”を感じ、胸に響いた。

■『服部克久 傘寿の音楽会』(10/2昭和女子大学人見記念講堂)

孫でヴァイオリニストの服部百音と共演が実現(10/2昭和女子大学人見記念講堂)
孫でヴァイオリニストの服部百音と共演が実現(10/2昭和女子大学人見記念講堂)

昭和の時代から日本の音楽シーンを支え、多くの人々に愛されてきた数々の“服部メロディ”を、世に送り出した名音楽家・服部克久。その80歳(傘寿)を記念したコンサートは、総勢40名のオーケストラが作り出す、心にも体にも優しく美しい“幸せな音”の洪水だった。そして服部の音楽人生と、日本のポップス史を重ねた3時間の時間旅行だった。“豊かな音楽”に包まれるこういうコンサートこそ、若い世代に観て欲しい。

"服部メロディ"に包まれた夜 ――服部克久傘寿記念コンサートで、三世代共演が実現

■『INAZUMA ROCK FES 2017』(9/16滋賀・烏丸半島芝生広場)

T.M.Revolution(9/16滋賀・烏丸半島芝生広場)
T.M.Revolution(9/16滋賀・烏丸半島芝生広場)

2016年に、荒天により途中で中止となったライヴを「イナズマロック フェス 2016 リターンズ」として、9/15に開催。その日のチケットを持っていたファンを無料で招待し、“完結”。『~2017』の初日9/16は、朝からあいにくの雨。THE ORAL CIGARETTES、UVERworldらが熱いパフォーマンスで客席を沸かせたが、終演後の21時に、翌日の開催中止を発表した。改めてこの時期の野外フェスの難しさを教えられたのと同時に、主催者T.M.Revolutionn 西川貴教の胸中を考えると、忘れられないライヴに。

■『バズリズムLIVE2017』(11/5横浜アリーナ)

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日本テレビの人気番組『バズリズム02』から派生したフェス。2日目のこの日は、UVERworld、BLUE ENCOUNT、My Hair is Bad、WANIMA、オープニングアクトLenny code fictionという、フェスのコンセプトがはっきりとわかるラインナップ。どこまでも強いメッセージを持ち、それをとにかく伝えたいという熱い気持ちと術(すべ)とを持ち合わせている、“ザ・バンド”と新鋭との競演。最初から最後まで出演者と作り手の想いが生み出す情熱が会場に充満し、素晴らしい時間に。

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最後に、5月21日に行われた『TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2017(メトロック2017)』(東京・新木場 若洲公園)のメインステージ・WINDMILL FIELDで、圧巻のステージを観せてくれた関ジャニ∞の名前も挙げておきたい。野外フェス初出演の彼らだったが、その演奏力の高さに客席の空気が一変して、温度が一気に上昇した事を覚えている。「純粋に音楽を届けに来た」(村上信五)関ジャニ∞の想いが、ロックファンに伝わった瞬間だった。

関ジャニ∞ 初野外フェスで見せた、ロックバンドとしての強さとプライド、アイドルとしての覚悟

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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