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NGT48 アイドルの「覚悟」と、センターとしての「プライド」と、グループの「未来」と

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「地元密着・地元貢献」をテーマに掲げ、活動するNGT48に集まる注目
「世界はどこまで青空なのか?【Type-A 初回仕様(CD+DVD)】」(12月6日発売)
「世界はどこまで青空なのか?【Type-A 初回仕様(CD+DVD)】」(12月6日発売)

快進撃を続けるNGT48の2ndシングル「世界はどこまで青空なのか?」が、12月6日に発売されたが、早くもファンからは「神曲」として話題を集めている。ひと足先に公開されたMUSIC VIDEO(以下MV)も、注目の映像クリエイター・山戸結貴監督が手がけた、12分という大作だが同じく「感動した」と、メンバーの“本気の姿”が絶賛されている。今回、念願だったセンターを務める荻野由佳と、彼女を支える本間日陽の二人にインタビューし、「世界~」とMVに込めた想いを聞いた。

「「世界~」のMVには、NGT48全体の未来に賭ける思いが詰まっている」(荻野)

――「世界は~」のMVはアイドルとは?という事に、真正面からぶつかっているまるで短編映画のような濃密さで、荻野さんとして、NGT48の心の中をさらけ出している、一人ひとりのセリフが心に刺さりました。

荻野由佳
荻野由佳

荻野 本当にその通りで、台本はあったのですが、山戸監督と色々とお話をしながら撮って行って、多分私の話を聞いて、監督がセリフをその場で変えた部分もありますし、アドリブもあります。12分って長いと思うかもしれませんが、そう感じさせない仕上がりで、オール新潟ロケだったので、新潟の美しい景色もたっぷり楽しめます。

――「私達、どこにもいけないんだよ」とか「夢見てないで、現実見なよ」といった、リアルなセリフが並んでいますが、デビューして結果を出して、でも決意を新たにこれからも突っ走るという、NGT48の所信表明のようなMVになっています。

荻野 今の自分にもすごい合っていると思っていて。私が主役というよりは、セリフひと言ひと言に、NGT48全体の、未来に賭ける思いも詰まっていると思っていて、監督が私達の事をよく見てくれていると思いました。

――ラストの荻野さんが号泣しているシーンは、グッときました。

荻野 泣きじゃくるシーンだと言われて、でも集中して感情移入しないと、そんなに泣けないと思いながら、どうしたらいいのかわからず戸惑っていたら、監督が声を掛けて下さって。撮影場所のグラウンドの周辺を、一緒にお話しながら5周くらいしました。監督が、自分は本当にトップの監督になりたいと思っていて、でも色々辛い事ともあるし、自分よりもっとすごい人もいるけど頑張るという、自分自身の話をして下さって、「由佳ちゃんは今、ずっと目指していた位置にいて、ましてやグループを引っ張る先頭の人になってどう思う?昔の自分にどう言い聞かせてあげたい?」とか色々聞いて下さいました。そうしたら、昔の事とか、グループに入って悔しかった事とか、色々な事を思い出してきて、感情が一気にブワーって込み上げてきて、涙が出てきて、その時、監督が「今だよね、イケるよね。今なら荻野さんのアイドルとしての全部をセリフに捧げられるよね。」って背中を押されて、カメラを急に回されたのがあのシーンです。

「私には普通の青春なんて必要ない。だったらアイドルで一生いたいという気持ちがある」(荻野)

――嘘偽りない荻野さんの心の叫びですね。

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荻野 あのセリフはすごく私に合っているなと思っていて、ただ、「人間じゃない、アイドルに生まれてきたの」というところは、さすがに言い過ぎじゃない?って周りから言われました。でも私には普通の青春なんて必要ないし、それだったらアイドルで一生いたいという気持ちが自分にもあったし、自分に当てはまっている言葉だったので、感情移入できました。

――あのシーンは感情の高ぶり方が尋常じゃなかったですが、カットがかかった後は、すぐに普通の状態に戻れましたか?

荻野 戻れないです。戻れなくて、ずっと放心状態でした。実は6回くらいあのシーンを撮り直して、6回も号泣したので、気持ちがなかなか戻らなくて。でもそのカットの後すぐに別のシーンを撮らなければいけなかったので、フラフラしたまま次の撮影に向かいました。

「アイドルを目指している子がこのMVを観て、中途半端な気持ちでは務まらない、相当な覚悟をもって臨むべきとわかった上で、どんどん挑戦して欲しい」(荻野)

――過酷だけど、でもそれがアイドルの仕事という事ですよね。

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荻野 こんなにもセリフに、魂を注ぎ込んだのは初めてだったので、本当にあれは私の全てです。アイドルになりたいと思っている子はたくさんいると思いますが、でもアイドルになったから終わりではなく、なってからの方がすごく厳しくて難しいんだなという事を、私もNGT48に入って実感しました。競争の世界だし、何かちょっとでもスキャンダルとかあったとしたら、そこで終わりだと思っています。ファンの信頼を失う事をしたら、それ以上上がる事は絶対にないと思うので。本当にアイドルになったら、アイドルに人生を捧げる事になったら、周りの友達のように恋愛も普通にはできないし、友達と好きな時に遊ぶという事もできないし、それを覚悟した上で、アイドルというものをやらなければいけないと思っています。アイドルになりたい子はこのMVを観てもらって、中途半端な気持ちでは務まらないという事を少しでもわかってもらった上で、是非挑戦して欲しいです。実際、MVが公開されてから、女の子からInstagramやTwitterへのメッセージがすごく多くて。「AKB48第3回ドラフト会議」の審査で落ちてしまった子から「もう諦めたようと思ったけど、これを観てもう一回目指そうと思いました」というメッセージが、大袈裟かもしれませんが100件くらい来ました。私はこのMVはもちろん、悔しい思い、苦しい思いをしている人、自分の中で葛藤を抱えている人に届けたいという思いがありますが、一番はアイドルを目指してる女の子達に伝えたいなと思っていたので、それが本当に伝わったんだなって思って、すごく嬉しかったです。

――荻野さんも苦労して、やっと掴んだセンターの座だと思いますが、その荻野さんがここからが大変というのを実感しているという事が説得力があるし、一番伝わってきますよね。

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荻野 センターに立ったから、何がどうとかまだ全然よくわからなくて。でもセンターになった以上は、もちろんNGT48全体が好きで、推してくれている方にも、例えば私がセンターになった事で、「なんで?」と思った方ももちろんいると思うし、そういう方の意見もちゃんと受け止めなければいけないし。ここで挫折したり、落ち込んでいられないので、やっぱりそういう全ての事を受け入れるという覚悟と気合がないと、やっていけないと思っています。

「グループに入ってずっとセンターをやりたいと思っていた。でも私なんかがそういう事を口にしてはいけないと思っていた」(荻野)

――1stシングル「青春時計」ではセンターを獲れなく、その時はやっぱり悔しいという思いが強かったですか?

荻野 もちろんこのグループに入った以上、センターを目指したいというのはいつも思っていましたが、私なんかがそういう事を言っていい立場なのかな、私なんかがセンターになりたいなんて、夢にもほどがあると思っていました。だからなかなかファンの人の前でも、センターになりたいですという事は言えなくて、メンバーにもそういう思いを伝えたりする事ができなかったので。

「センターというポジションは、自分が目立つのではなく、周りを輝かせられる存在でなければいけない」(荻野)

――その気持ちを押し殺して、でも総選挙で光が差してきて。

荻野 総選挙があってから、今の私だったらこのグループを引っ張っていけるという気持ちがなぜか強くなって、だからそこでセンターになりたいという事を、ファンの方にはモバイルメールで伝えた事は、一度だけありました。でもなかなか送信できなくて。文章も何回も書き直して、炎上しないかなとか、私なんかがセンターになりたいって言ったら、「無理に決まってるじゃん」って思われないかなと不安でした。私、実はすごくネガティヴで。何があってもへこたれないとか言ってるわりには、むちゃくちゃネガティヴで、へこたれる人なんです。

――そうだったんですね。意外です。

荻野 自分に暗示をかけているんです。センターは、ただ真ん中で歌って踊って、自分だけが目立てばそれでいい、というものではないと思っていて。センターに立ったことによって、自分だけではなく、周りも輝かせられる存在になりたい。周りがセンターの引き立て役ではなくて、逆に私がみんなを引き立ててあげなければいけないという思いがあって。万華鏡ってどこを見ても美しくて飽きないじゃないですか、NGT48をそういうグループにしたいです。

――春には北原里英さんの卒業も控えていて、プレッシャーをかける訳ではないですが、ますます責任重大になってきますね。

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荻野 そうなんです。今後の事もみんなで考えなければいけないし、私ひとりだけが目立っても、絶対100%グループのためになるかと言われたら、そうではないので。みんな個性が強いメンバーなので、だから今回の「世界は~」の振付にもそれぞれの個性が出ています。17人全員が違う振付があって。私もセンターになって、正直自信がないという相談をダンスの先生にもして、それが反映されているどうかはわからないのですが、振付に私が後ろを振り返って、みんなが私の方を向いて1対17になるシーンがあって。それでみんなが一斉に私を指差すのですが、それは「荻野、センターで引っ張っていけるのか!」という意味なんです。逆に私は「あんたたちこそついてこれるの!」という意味の1対17の振付で、私に勇気を与えてくれる振付、お互いに高め合っていける振付だと思っています。

(ここで本間日陽がインタビューに合流)

「このMVは私も含めて、メンバー全員の経験と世界観に合っていて、胸に来るのものがあった」(本間)

――荻野さんとは「世界は~」のMVの話から、センターの覚悟とはという話になっていました。前作に続いてオール新潟ロケですが、新潟出身の本間さんにとっては懐かしい場所があったそうですね。

本間日陽
本間日陽
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本間 そうなんです。階段で踊るシーンを撮った場所は、小さい頃から家族で遊びに行っていたところで、慣れ親しんだ場所でMV撮影ができたのはすごく嬉しかったです。田んぼの中でも撮って、新潟満載になっているので(笑)、新潟の魅力的なところが発信できていると思います。

――あのMVを観ると、NGT48は、相当の覚悟を持って集まった女の子達だという事が伝わってきますよね。

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本間 そうですね。NGT48は他のグループさんに比べて、今まで何度も48グループのオーディションを受けてきた子達が多いと思うので、今回のMVの世界観にすごく合っていると思います。このMVを観た時に、アイドルになる前を思い出しました。私は新潟県の一番北の市の出身で、すごく田舎なんです。何もないところで、アイドルというただただ漠然とした大きな夢をどこかで持っていて、でもクラスメイトや友達は普通に大学に進もうとしてる中で、そんな夢を持っているのは間違いなんじゃないかって思ったり。やっぱり自分も進学して、その夢は捨てた方がいいんじゃないかなっていう葛藤を乗り越えてNGT48に応募して。だから(荻野)由佳ちゃんがMVの中で言っている、アイドルになりたいという気持ちと、周りの反応というのが、自分の経験と重なっていて、すごく胸に来るものがありました。

――アイドルを目指している人の中には、本間さんと同じような悩み、葛藤を持っている人がたくさんいると思うので、そういう人達に是非観て欲しいですよね。

本間 それはすごく思います。でもやっぱりそれを訴える事ができるのは、由佳ちゃんがセンターだからだと思うし、由佳ちゃんがセンターだからこその、この世界観だと思うので、今のNGT48にすごくピッタリだと思います。

「総選挙後からは、色々な方から声を掛けていただける機会が増え、一グループとしてアイドルシーンを突き進んでいる実感がある」(本間)

――目覚ましい活躍なので、もっとシングルを出していると勝手に思い込んでいたら、まだ2ndシングルなんですね。グループがどんどん成長、進化しているという実感は肌で感じていますか?

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本間 総選挙が終わった後からは、それをすごく感じています。総選挙があって、一気にNGT48という名前を、世間の方が耳にする、見る機会が増えたと思います。それでありがたい事に「NGT48が今キテる」と言ってもらえる事も増えて、この夏も、フェスとか色々なところに出演した時に、他のアイドルグループさんから「総選挙見てました」と声を掛けて下さる事も多くて、そういう時に私達も、一グループとしてアイドル界を突き進んでいるんだなという事を実感しました。

荻野 やっぱり総選挙の影響がすごく大きかったです。握手会でもNGT48のレーンがすごく混んでいて、NGT48みんな頑張ってるなって感じました。順調に進めていると思っていますが、今後はどうなるかわからないですし、今がピークではなく、ピークをずっと更新できるようなグループでありたいと思います。

――たくさんの人に見られると、心身共に強く、美しくなりますよね。

荻野 本当に心も強くなりますよね。私と日陽は、AKB48の選挙で選抜に入らせていただいて、色々なTV番組に出演させていただく機会があって、その分、一般の方の目にも留まるという事なので、色々な批判もあります。でもそういう事も含めて、ひとつずつ乗り越えてきたと思っているので、ハートは強くなりました(笑)。

――全てを糧にして、それを強さに変えて。

本間 また48グループに、新しい顔が出てきたなって思ってもらえたら嬉しいです。

――NGT48は、個性的集団と言われるくらい、逸材が揃っていますよね。

荻野 本当に変な子が多いんですよ。面白い子が多くて飽きないと思います。

――あのMVで印象的だったのが、やっぱり北原さんとか柏木由紀さんという先輩の存在感、ちゃんと見守ってくれているというところが出ているところです。

荻野 里英さんとの演技で、「覚悟はできてるの」って言われた時に、演技だとわかっていてもむちゃくちゃ怖くて。でも凄く伝わってきました。

――あとは頼んだよ、とバトンを渡されたような感じですね。

荻野 その気持ちがすごく伝わってきて、そこでよっしゃー!って思いました。やってやるぞっていう気持ちでいっぱいになりました。

「「ナニカガイル」は大滝(友梨亜)さんが参加する最後の曲なので、そこでセンターに立てた事と、何より一期生全員でMVを撮影をできた事が思い出」(本間)

――本間さんはType-Cに収録されている「ナニカガイル」でセンターを務めています。

「世界はどこまで青空なのか?【Type-C 初回仕様(CD+DVD)】」
「世界はどこまで青空なのか?【Type-C 初回仕様(CD+DVD)】」

本間 さすがに当日の朝に言われるなんて思っていなかったので、いいポジションだといいなっていう感じで朝、撮影現場に行って、そこでいきなりセンターは本間さんですって言われ、驚きました。すぐ振りを入れて、撮影してという感じで、あっという間1日が終わりました(笑)。

――表題曲の撮影が2日間あって、その次の日で。

荻野 やばかったよね、3日連続で。

本間 なので本当に頭が追いつかないまま終わっていったという(笑)。

――制作側は、勢いはもちろん、そういう戸惑いにどうやって立ち向かって乗り越えていくのか、その瞬間を押さえたかったのかもしれないですね。でもそういう画が観ている方には伝わってきますよね。

荻野 確かにそうかもしれないですね。

本間 でも逆に変に気負わず撮影に臨めたというか、デビューシングルのカップリング曲でセンターを頂いた時は、表題曲じゃないけど私がセンターなんだ、センターだからちゃんとしないと、ダンスも間違えたらいけない、どうしようどうしようという感じでした。だから撮影中は、静かにして集中しているこ事が多くて、でも今回は一期生25人でっていきなり言われて、いつも通り楽屋に全員揃ったという安心感が大きくて、大滝(友梨亜)さんが卒業する前の最後のMVで、一緒にいられるのも嬉しかったです。でも今こうやって一緒に撮影しているのに、これをみなさんに観てもらう時には、大滝さんはもういないんだと思うと、淋しくて不思議な感覚でした。

――「ナニカガイル」は本間さんにとっても宝物になりましたね。

本間 一期生25人で歌うこんなに素敵なかわいい曲のセンターをできる事は、もちろん嬉しいですし、振付はライヴで絶対盛り上がると思うので、ライヴでもどんどん披露していきたいです。

「NGT48は決まったスタイル、イメージを作りたくない。色々な面を見せなければ、激動のアイドル界を生き抜いていけない」(荻野)

――「世界~」は、2ndシングルにして、NGT48の代表曲になりそうな一曲です。まだまだスタートしたばかりのNGT48ですが、もっと上に行くためには何が一番必要だと自分達で考えていますか?

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荻野 NGT48はこうだというものは作りたくないんですよ。例えばAKB48だったらかわいらしい王道のアイドルという感じで、HKT48だったら元気というイメージがあると思いますが、NGT48はあまりそういうのを作らない方がいいと思っていて。色々な面を見せられるグループでありたいです。今回のシングルのようなカッコいい感じや、1stシングル「青春時計」のさわやかで優しい感じ、「Maxとき315号」のような元気な感じ、そうやって色々な一面を見せていけるグループでなければ、他にもたくさんアイドルグループがいる中で、埋もれしまう気がしていて。これからもセクシーな感じとか、色々なものに挑戦して、新たなNGT48をたくさん観せたいという気持ちが自分の中にはあります。見ていて飽きないグループでありたい。

本間 それは私も思っていて、これまで出してきた曲はセンターが全て違います。だからこの人がセンターだからこそ見えるNGT48というものを、毎回観せる事ができている気がしていて。これからも色々なNGT48を観てもらいたいです。そうする事でますますキラキラ感が増していくグループになれると信じています。

「由佳ちゃんは前面に立って、NGT48の事を外にアピールしてくれている。だから新潟に帰ってきた時は、私に頼って欲しい」(本間)

――今日話を聞かせてもらって、二人とも強い言葉を持っているなと思いました。この言葉が他のメンバーにもしっかり伝われば、NGT48のグループ力はますます強くなると思います。

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荻野 しっかり者の本間が隣にいるので、頼りながらも一緒に引っ張っていけたらなって思います。

本間 由佳ちゃんは今前面に立って、NGT48の認知度を上げていってくれているので、疲れる事もあると思います。だから新潟に帰ってきた時くらいは、日陽に頼って欲しいです。

荻野 ありがたいですね。とことん頼るつもりです(笑)。

NGT48オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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