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野宮真貴 楽に、美しく人生を楽しむ方法教えます 「何事もほどほどでいい さり気なさが素敵」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
”さり気ない”とは”ほどほどである”という事

CD、本、リーディンググラス、ライヴ…”ビューティ・エンターテイメント”を提案

野宮真貴が“野宮真貴、渋谷系を歌う”というコンセプトで、90年代に流行っていた“渋谷系”のヒット曲と、そのルーツミュージックを歌う、という彼女のライフワークともいうべきシリーズの第5弾『野宮真貴、ホリデイ渋谷系を歌う』が、10月18日に発売された。さらに25日には、“おしゃれのカリスマ”と呼ばれる野宮だからこそ語れる、目から鱗の、美と人生を楽しむ方法を教えてくれる著書『おしゃれはほどほどでいい 「最高の私」は「最少の努力」で作る』(幻冬舎)を発売。さらに、エレガントに年齢を重ねる人に向け、リーディンググラス(老眼鏡)をプロデュースするなど、「アルバムを聴いて欲しい。そしてリーディンググラスで『おしゃれは~』を読み、参考にしてもらい、自分なりのおしゃれをして私のライヴに来て、人生を楽しんで欲しい!」と、“ビューティ・エンターテイメント”を提案してくれた。そんな野宮にインタビューし、人生をもっと楽しむ方法を教えてもらった――「何事もほどほどがいい」――。

『野宮真貴、ホリデイ渋谷系を歌う。』(10月18日発売)
『野宮真貴、ホリデイ渋谷系を歌う。』(10月18日発売)

『野宮真貴、ホリデイ渋谷系を歌う。』は、今年は5月に発売した『~ヴァカンス渋谷系を歌う。』に続いて、季節感を感じさせてくれる、渋谷系の冬の名曲のスタンダードカバーアルバムだ。渋谷系のルーツともいえるはっぴぃえんどの細野晴臣と大瀧詠一が、それぞれソロになってからカバーした童謡「雪やコンコ」を、大瀧アレンジのフィル・スペクターサウンドでカバーしたものがオープニングナンバーで、このアルバムの“色”を提示してくれている。「渋谷系って夏の曲、夏っぽい曲は多いのに、冬の渋谷系とそのルーツミュージックは意外と少なくて。そんな話を小西(康陽)さんにしたところ、この曲の存在を教えてもらって。それで大瀧さんのアレンジをそのまま使わせていただき、元々インストだったものに歌を乗せました」。ポップな「雪やコンコ」の他にも、いしだあゆみがティン・パン・アレイと作り上げた、1977年の名盤『アワー・コネクション』から、「ウィンター・コンサート」をカバー。「歌謡曲を聴いて育ったせいもあって、自分の声や歌い方も割と、歌謡曲的な要素もあると思うので、こういう感じの曲も意外とハマるんです」と、このシリーズは自身の音楽のルーツを辿る旅でもある。

鈴木雅之、高野寛、横山剣、渡辺満里奈とデュエット

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このアルバムでは豪華なデュエットも聴きどころのひとつだ。高野寛とは「Winter’s Tale~冬物語~」、鈴木雅之とは槇原敬之の名曲「冬がはじまるよ」、バート・バカラックのクリスマスソング「ザ・ベル・ザット・クドゥント・ジングル」は小西康陽が日本語詞を手がけ、渡辺満里奈とデュエット。冬のスタンダードナンバー「おもて寒いよね」は、クレイジーケンバンド横山剣とデュエットとしている。「「Winter’s~」は、オリジナルアレンジで歌うのは久しぶりなので新鮮だったと、高野さんが言っていました。高野さんの声も全く変わっていなくて、90年代初期の華やかでワクワクする感じが出ていると思います。「ザ・ベル~」の小西さんの日本語詞は、原曲の世界観を変えずに、でもシンプルで伝わる言葉で表現してくれて、歌っていて本当に素晴らしいと思います。(渡辺)満里奈さんの声も当時と全然変わらなくて、新鮮です。「おもて寒いよね」は、絶対に剣さんと一緒に歌いたいと思ってお話をしたら、剣さんもこの曲が大好きだったみたいで、二人でデートをしているみたいに楽しく歌えました。今回、三人の男性とデュエットしていますが、偶然にもマーチンさんがちょっと年上で、剣さんが同い年、高野さんがちょっと年下という、三人のジェントルマンと共演できて、女冥利に尽きますね。」。

この他にも“Francfranc 2017 Christmas Song”や“サントラ渋谷系を歌う。”のライヴ音源、渋谷区基本構想の歌「夢みる渋谷」の盆踊りバージョンなどが収録されている。野宮はこのアルバムの制作と並行して、本の執筆も行っていた。それが、好評だった前作『赤い口紅があればいい』をバージョンアップした形の、簡単に楽して効率的に美しくなる、もっと楽しく人生を謳歌するためのヒントが詰まった一冊『おしゃれはほどほどでいい』だ。

「”ほどほど”って、さり気なくて、でもきちんと手を掛けていて、余裕のある自分でいるという事」

『おしゃれはほどほどでいい 「最高の私」は「最少の努力」で作る』(幻冬舎)
『おしゃれはほどほどでいい 「最高の私」は「最少の努力」で作る』(幻冬舎)

この“ほどほどでいい”というキーワードがポイントだ。「何事もやらなすぎてもやりすぎても良くない、ほどほど、60パーセントくらいがちょうどいいといつも思っていて。ほどほどって、さり気なくて、でもきちんと手を掛けていて、余裕のある状態の自分ということ。それがエレガントな立ち振舞に繋がると思うんです」と、野宮の普段から心がけている考え方だが、さらに本を書いて、もっと伝えたいと思うきっかけになったのが、前作「赤い~」の発売記念トークショーで共演した、作家ジェーン・スーの言葉だったという。「ジェーンさんは「おしゃれがわからない」と。私はおしゃれが大好きで、着こなしに悩むという事がなかったので、ジェーンさんの言っている事が今ひとつ理解できなかったんです。それで「自分が好きと思う、かわいいと思う服を着ればいいんですよ」という感じの事を言ったら、「自分が何が好きなのかすらわからない」と言われて。すごくショックでした。その時に「どう説明すれば、どういう風に言ったら伝わるのかな」と考えていたら、自分も苦手な事があって、それは料理で、料理を洋服に置き換えて考えてみました。洋服のコーディネートはすごく想像力が働くのに、料理に関しては想像力が全く働かないのはなぜだろうって」。

ある料理本に出会い、気持ちが楽になった。「おしゃれがわからないと悩んでいる人は、料理の献立が組み立てられないと悩んでいる自分と同じなんだと気づいた」

そんな時に一冊の本に出会った。それが料理研究家・土井善晴の著書『一汁一菜でよいという提案』だった。これを読み、目から鱗だったという。「料理に対する苦手意識というか、何品も食卓に並べなければいけないという強迫観念みたいなものから解放されて、フッと楽になりました。具だくさんの味噌汁があればそれがおかずになるし、栄養もきちんと摂れて、具を変えれば毎日食べても飽きないんです。あ、そうかと思って、おしゃれがわからないという人は、私が料理の献立が組み立てられない事と同じなんだと思って(笑)」。目先を変えると見えない事が見えてきた。その“腑に落ちた”感じを、多くの人に伝え、楽になって欲しかった。「一汁一菜という基本があれば、味噌汁の具の中では、色々な遊び、工夫ができる。そうするとすごく想像力が働くようになりました。つまりおしゃれが苦手という人にも、その基本をまずわかってもらえば、すごく楽になるのではと思って、今回はより実践的なものにしたくて、イラストもたくさん使いました」。

「40~50代の女性を想定して、もう一度きれいになることに一歩を踏み出して欲しいと思い書きました。何もしないというのも女性として淋しいし、でもだからといって美容オタク、健康オタクにみたいになってしまって、いつも準備ばかりしている人が多い気がしていて。あなたの本番はいつなのか?今を一番きれいで、楽しく過ごすためには何をすればいいのか?という事が大切だと思うんです。「ほどほどでいい」というのは、“今きれいに見える”ために面倒な余計な手順を踏まなくてもよい、もっと効率的なおしゃれになる方法がありますよ、という提案なんです。

『一汁一菜~』には、みそ汁を作るといっても、それぞれの素材から旨味が出てくるから出汁もとらなくていいし、味付けもその日によって、濃かったり薄かったりして、毎日違っていても、それはそれなりの味わいがあっていい、という事が書かれている。野宮も本の中で、おしゃれも、ファッションも美容も考えすぎず、もっと楽にできるだけ手間をかけずに、楽しくやろうと、気持ちを軽くしてくれる言葉で語りかけてくれている。「厚化粧を見ればわかるように、頑張りすぎてトゥーマッチになると、あまりおしゃれには見えません。フランスの女性が素敵に見えるのは、彼女たちは“さり気なさ“を意識的に演出しているからです。”さり気ない“とは”ほどほどである”ということですから、そういう考え方もこの本のヒントになっています」。

「私はシンガー・ソングライターではないので、歌う事以外の作業は、曲を書いている感覚に近いのかもしれない」

野宮は音楽でも本でも“人に伝える”事を大切にしている。自分が面白いと思ったものや、人のためになると思った事は、あらゆる方法で伝え、それが自身の成長にも人生を楽しむ事につながっているようだ。「仕事のメインはあくまでも音楽ですが、本を出したり、メガネをデザインをしたり、口紅を作ったりして、それは私がシンガー・ソングライターではないからだと思っていて。作品を一から作るという事をしていないから、本や口紅を作る事が、シンガー・ソングライターでいうところの歌詞を書いて、メロディを作るという事だと思っています」と、歌う事以外の作業は、楽曲を書いている感覚に近いと教えてくれた。歌で感じる野宮の、より“リアル”な部分を、音楽以外の作品で感じて欲しいという思いだ。

J!NS「BIJIN READING GLASSES」
J!NS「BIJIN READING GLASSES」

野宮のクリエイティビティは、全てその生活、経験から湧いてくるものだ。毎日使う赤い口紅は、なるべくオーガニックでモードな感じのものを使いたいけど、なかなかいいものが見つからない、だったら作ってみよう…。老眼鏡もそうだ。文字が見えづらくなってきて老眼鏡が必要になったけど、おしゃれなものがないし、まず老眼鏡という言葉が嫌かも…。だったらリーディンググラスという言い方にして、デザインも洗練したものをメーカーに提案してみよう、という具合に、自分が必要なもの、自分が欲しいと思うものが、全ての出発点になっている。「歳をとる事をネガティブに捉えると淋しいですが、でも老眼は避けられない老化現象で、見えづらいからといって眉間にしわを寄せていたら、それは素敵じゃないし、皺を作ってしまう原因にもなるので、痩せ我慢しないで早めに老眼鏡を使ったほうがいい。おしゃれしてレストランに行っても、そういうレストランって照明もちょっと暗めなので、メニューが見えにくくて、そういう時にショックを受けたりして(笑)。それで老眼鏡を買いに行ったら本当に欲しいものがなかったんです。いつもバッグに入れておきたいし、お部屋にも置いておきたい思うと、一個では足りなくて、そうなると手頃じゃないとだめで、それでJINSさんに相談に行ったところ、作りましょう!と言ってくださって」。少しでも使う事が楽しくなる、年を取ったからこそ使えるかわいいものを作りたかったという。

「鏡を見てちょっとでも「今日の自分、案外悪くないな」と思えたらいいい一日になる。その積み重ねで人生は楽しくなる」

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手っ取り早く美人になって、人生を楽しむためのアドバイスが『おしゃれは~』には詰まっている。「鏡を見て、ちょっとでも「今日の自分、案外悪くないな」って思えたら、その一日がいい気分で過ごせるじゃないですか。そういうちょっとした事の積み重ねで、人生は楽しくなると思っています」――まず、一歩踏みだす事が大切だ。簡単そうで難しい、でも大きな一歩なのだ。

冒頭の野宮の言葉だが、おしゃれをして、まず野宮のライヴに足を運んでみて、美しいメロディが特長の、渋谷系の音楽に包まれるのもいいかもしれない。それも変化の一歩になるかもしれない。

野宮真貴オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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