Yahoo!ニュース

サザンオールスターズ「東京VICTORY」×「8K:VRライド」が作り出す、かつてない映像体験

田中久勝音楽&エンタメアナリスト

「東京VICTORY」を聴きながら「8K:VRライド」で過去から現在、2020年の東京を時空移動

7月10日、桑田佳祐が初めてビルボードライブ東京のステージに立った『この夏、大人の夜遊びin日本で一番垢抜けた場所!!』を観て、その興奮冷めやらぬ中、今度は、「3月に行われた『SXSW2017』(サウス・バイ・サウスウエスト)でも公開された「8K:VR Ride featuring “Tokyo Victory”」を体験しませんか?」というお誘いを受け、『SXSW2017』での様子を伝えるニュースもチェックし、気になっていたので、体験してきた。サザンオールスターズの「東京VICTORY」を聴きながら、過去から現在、そして2020年の東京を時空移動してきた。

ヘッドマウントディスプレイを使わずにVR体験

画像

「8K:VR Ride featuring “Tokyo Victory”」は、Sphere 5.2というドーム型のワイドスクリーンと座席=モーションライドで体験できる。VRというと、どうしてもヘッドマウントディスプレイを装着するイメージが強いが、今回のシステムはそれを使用しないで、8Kによる高精細映像がワイドスクリーンに直接映し出され、VR体験できるというもの。

画像

映像に合わせ、座席が動くのでシートベルトを締め、いよいよ“出発”。座席がゆっくり上昇し、足が浮き上がり、上から風が吹いてくるなど、ワクワク感とドキドキ感に包まれ、遊園地のアトラクションに乗っているようだ。サザンオールスターズの「東京VICTORY」のイントロが流れてくる。映像は1964年、前回の東京オリンピックが行われた年の首都高速道路が映し出される。車の動きに合わせ、左右に揺れ、細かな振動も伝わってきて、高速を飛んでいるような感覚。気がつくとレインボーブリッジ、新宿の高層ビル街、渋谷スクランブル交差点、浅草、上野、東京スカイツリー、東京タワーと、現代の東京の街並を巡り、行き交う人々を眺めたり、空へ向け急上昇し、ビルの間を抜けて行ったり、座席が激しく揺れ動くわけではないのに、ジェットコースターに乗っているようなスリルを感じさせてくれる。ドーム型ワイドスクリーンとモーションライド、5.1chが生み出す立体的な音響とが一体になって、映像の中を駆け抜け、飛び回っているような感覚を生み出している。

桑田佳祐が、過去から現在、未来へと移りゆく東京の姿に思いを馳せ、描いた「東京VICTORY」

「東京VICTORY」は、東京オリンピック開催決定をきっかけに、過去から現在、そして未来へと移りゆく東京の姿に思いを馳せ、桑田佳祐が手がけた2014年に発売された作品。「♪Wow…」という雄叫びに似た歌い出しで始まる力強く、昂揚感に満ちたスケール感とそしてスピード感、華やかさを感じさせてくれるポップスだが、移り変わっていく風景を映し出す映像と絶妙にリンクし、胸に迫ってくるものがあった。サザンオールスターズは1978年にデビュー以来、シーンのトップを走り続けて来年40周年を迎える、まさに“大衆音楽の王者”だ。そんな時代を超えて愛されるバンドだからこそ表現できる、新鮮さと懐かしさ。それが「東京VICTORY」という楽曲には色濃く出ている。

この曲について、桑田は当時のオフィシャルコメントで「この「東京VICTORY」は、象徴的に「東京」という言葉を使っていますが「日本」や「ふるさと」を思って作った曲です。そのきっかけは2020年に開催される東京オリンピックでした。私たちが36年以上も音楽を作り続けてきた千駄ヶ谷ビクタースタジオのすぐ近くにある国立競技場が建て替えられることの寂しさや無常感。そして華やかなイベントの影に隠れがちな、世の中が抱えているさまざまな問題。そういったことに目を向けると、どうしても気持ちも沈みがちになります。ですが、せっかく世界がひとつになる国際的なイベントが、わが国で開かれることが決まったのですから、そこに向けて、歌詞にもあるように“みんな頑張って”前を向いて行こうよ! というのがこの曲のテーマです。「いろいろ大変なこともあるだろうけど、みんなで未来へ向けて走り出そう!」と、曲を聴いてそんな 気持ちになっていただけたら幸いです」と、語っている。単なる応援歌ではなく、どこか日本の原風景を感じさせてくれる、情緒あるメロディには、リスナー一人ひとりが、東京の風景の向こう側に、自分の故郷の景色、匂いを感じ、胸を熱くし、ポジティブな気持ちになるのだ。

最新テクノロジーと名曲が作りだす、かつてない映像体験

そんな「東京VICTORY」の歌詞と映像とが連動しているところも、この「8K:VRライド」が、感動を増幅させるポイントになっている。「海の青さ」という歌詞では、海を映し出し、「川の流れのように」という歌詞では隅田川を臨み、<時が止まったままのあの日の My home town>という歌詞では、明かりが消え、暗闇に包まれた渋谷スクランブル交差点が映し出され、あの日、2011.3.11を思い起こさせ、熱いものが込みあげてくる。約5分間の時間旅行の最後は2020年にタイムスリップし、美しく鮮やかな打ち上げ花火と、「VICTORY」の文字でまさに大団円。息をのむ美しい風景とスリル、そして「東京VICTORY」から感じる、“ポップな切なさ”とが、心と体を潤してくれる、究極のリアリズムを感じさせてくれる“東京観光”だった。

かつてない映像体験だったが、同時に音楽の、歌の持つ力を、改めて感じさせてくれた。そして来るべく2020年7月24日、東京オリンピックの開会式で、さらに進化したテクノロジーを駆使した演出の中、“大衆音楽の王者”・サザンオールスターズが歌う、東京を、日本を、さらに世界を想う「東京VICTORY」を聴きたいと、素直に思った。

10月に一般公開が予定されているこの「8K:VR Ride featuring “Tokyo Victory”」、是非体験して欲しい。そして多くの人と感動を共有したい。

「8K:VR Ride featuring “Tokyo Victory”」オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

田中久勝の最近の記事