桑田佳祐、明石家さんまが、桂雀々の40周年記念公演で夢の共演 ビッグに愛される人気落語家の魅力とは?

桑田佳祐と桂雀々(Photo/岸田哲平)

これぞエンターテイメント、そういわずにはいられない一夜だった。人気落語家・桂雀々の『桂雀々 独演会 芸歴40周年記念公演「地獄八景亡者戯2017」が22日、東京国際フォーラムホールCで行われ、スペシャルゲストに明石家さんま、シークレットゲストで桑田佳祐が登場し、なんとも豪華で盛大な40周年のお祝いになった。

シークレットゲスト桑田佳祐は新曲「若い広場」を初披露

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超満員1,500人の観客からどよめきと歓声が上がったのは、雀々が大ネタ「地獄八景亡者戯2017」を熱演している時だった。桑田佳祐がネタに合わせ、白装束に額烏帽子、「まだまだひよっこ」と書かれたタスキをかけステージに現れると、予期せぬゲストの登場に客席は何が起こっているのか一瞬理解できず、呆気にとられていた。そして現在オンエア中の、NHK朝の連続ドラマ『ひよっこ』の主題歌「若い広場」のイントロが流れると、大歓声が沸き起こった。桑田が「若い広場」をライヴで披露するのはこの日が初めてで、途中から客席は大合唱になり、会場のボルテージは一気に上がった。歌い終えた桑田は「35 年前サザンの打ち上げで会ったのがきっかけで、親しくさせていただいています。お兄さんおめでとうございます。「若い広場」を今日初めて歌います。いいお客さんですね。こんな(天冠)のつけてね」とお祝いのメッセージ。そして「20分巻いただろう?」とクレーム。実は「地獄~」を披露していた雀々が、途中から舞台袖をしきりと気にするようになり、それは桑田が登場するためのネタふりをしたものの、桑田のスタンバイが間に合わず、雀々が手品などを披露し、場をつなげるというハプニングが起こっていた。しかしそれは雀々のステージが、予定よりも15分以上巻いていた事が原因だった。

「地獄~」は雀々の師匠、三代目桂米朝の十八番で、亡者一行が、三途の川や閻魔様の前で、地獄の沙汰も笑い次第とばかりに、死してもなお笑いにこだわるという、1時間を超える、上方落語屈指のスケールの大きい噺だ。閻魔様の前で芸を見せ、面白ければ極楽行きというシーンの中で、桑田が登場し、歌を披露するというシチュエ―ションだった。雀々は段取りが狂った事を、「早く出さなくちゃと思って」と言い訳をすると、桑田が「バカヤロ~」と返し、笑いを取っていた。

桂雀々と桑田佳祐の素敵な関係

桑田と雀々の関係は、サザンオールスターズのシングル「チャコの海岸物語」が発売された1982年当時、大阪のラジオ局の番組スタッフを通じて、雀々がサザンオールスターズのライヴの打ち上げに参加したり、また今では桑田の家に招かれ、サザンのメンバーやスタッフの前で落語を披露するなど、プライベートでも親交を深めている。「いつもギャラを払うと言っても、絶対受け取ってくれないんですよ」と桑田が話すと、「だから今日も払わないよ」と雀々が返し、「話が違う」と絶妙のコンビネーション。桑田は落語好きで有名で「波乗亭米祐」として、番組で落語を披露した事もある。桑田がステージを去り、雀々は「地獄~」のまとめに入る。最新の時事ネタを多く入れ、客席は爆笑に次ぐ爆笑で、1時間を優に超えるまさに熱演だった。

スペシャルゲスト明石家さんまは、次々と降りかかる不幸をネタに、爆笑に次ぐ爆笑

桂雀々と明石家さんま(Photo/武藤奈緒美)
桂雀々と明石家さんま(Photo/武藤奈緒美)

第2部は明石家さんまが登場し、雀々とフリートーク。さんまは開口一番「付き合いだけで来てくれ、歌ってくれって桑田佳祐を出すなよ(笑)。俺には「頼んますわ、ここで1時間チャッチャと喋って」って、お前が思ってるより、桑田佳祐も明石家さんまも結構売れてんねん」と、まずは笑いをとり、マシンガントークがスタート。そして「今こんなところで喋ってる精神状態じゃない。今日は愚痴らせていただきますと」、自身の著書が原作となっているネットドラマが放送できなくなったり、冠レギュラー番組で、テレビ初出演だった俳優が逮捕され、編集を余儀なくされたり、先輩の間寛平が、イベントの最中に木から落ちて大けがをしたり等、最近自分や、親しい仲間の身に次々と降りかかる不幸を嘆いた。「これだけ色々続くと俺のせいじゃないかと思ってしまう」と言うと、雀々は「絶対兄さんのせいでっせ。兄さんだけ幸せになって周りがみんな不幸になる」と返すと、大爆笑が起こった。

この日さんまが着ていた着物は、勝新太郎が着ていたものを中村玉緒から譲り受けたもので、扇子は中村勘三郎が使っていたもの。仲間の大切な記念公演に、宝物ものを身に着け駆け付け、二人の関係の深さを感じさせてくれた。さんまと雀々の関係は、40年前、雀々が初めて弟子入りした時から、先にこの世界に入っていた5歳年上のさんまが注目をしていたという。以来二人の関係は一門を超え、芸を切磋琢磨しながら深くなり、雀々の35周年記念公演にもさんまはスペシャルゲストとして出演している。

最後は再び桑田をステージに招き入れ、豪華な3ショットが実現した。桑田とさんまが共演するのは数十年ぶりという事で、客席から熱い視線が送られていた。さんまが、当時他の人に楽曲提供をしていなかった桑田に、「アミダばばあの唄」(1983年)を書いてもらった時のエピソードを紹介したり、終演が近付いた事を知らせる鐘の音が、舞台袖から思いのほか大きく鳴り響くと、雀々が「えっ、今何時?」と客席に聞き、さんまが「そうね大体ね」と、サザンオールスターズのヒット曲「勝手にシンドバッド」の一節ですぐに返すと大きな拍手が起こり、息の合ったトークで、客席は終始笑いが途切れず、盛り上がっていた。最後はさんまが桑田に「また曲作っていただけませんか」とお願いし終了した。公演を終えた雀々は「舞台では、思いっ切りしゃべって、いい疲れでした。ビッグネームの先輩方に40周年の花を添えていただき、ありがとうございます。感謝の一言です。気疲れもしたので、これが続くとほんま痩せるわ!(笑)」と語っていた。この日の模様は、今夏、BSフジでオンエア予定だ。

大物が駆け付ける、桂雀々という落語家とは?

それにしても、桑田佳祐、明石家さんまという、この日本のエンタテイメントシーンを代表する大物二人を、自身の周年記念公演にゲストで呼ぶことができる桂雀々とは、一体どんな落語家なんだろうか。以前のインタビューにその人となりは詳しく書いたが、関西では確固たるポジションを築いていたが、その活動の場を東京に求め、51歳の時に拠点を移した。「大阪の落語家は約250人、東京は約600人、大阪にいるよりキャラが被らない東京で、色々な落語家さんと落語会をやりたかった」とさらに切磋琢磨するための環境を求め、勝負に売って出た。古典落語の原型はありつつ、デフォルメを重ねていき、笑いの濃度を高めている上方落語。それを大きなアクションと独特の描写の仕方で、登場人物がまるでそこにいるような錯覚を味わう事ができるのが、雀々の落語だ。古き良き伝統を進化させ、インパクトという大きなエネルギーを注入することで、極上の雀々流エンタテイメントに仕上げている。独演会や落語会を精力的に行い、どの会場にもファンが押し寄せる、“今最も人を呼べる落語家”のひとりだ。

そしてミュージシャンや役者など、その華やかな交友関係も雀々の武器のひとつだ。それは情熱が迸るその話術に、表現者達も熱いものを感じ、ひきつけられ、また、落語の世界に飛び込んで以来仕事でもプライベートでも「年上の人と絡む事が多かった」と言い、自然と年上から“かわいがられる”術を身につけていたのかもしれない。彼の事を尊敬と親しみの意味を込めて“人たらし”と言う人も少なくない。芸歴40年、その芸はますます冴え渡り、「還暦のお祝いを日本武道館でやりたい」という夢に向かい、エネルギッシュに進み続ける。

<Profile>かつら・じゃくじゃく。昭和35年8月9日、大阪市住吉区出身。小学生時代はテレビの視聴者参加型番組の常連となり人気者に。中学生時代はテレビ番組のコーナーに登場して勝ち抜き、チャンピオンに輝く。昭和52年、上方落語の桂 枝雀に入門。同年10月に桂 枝雀独演会にて初舞台を踏む。平成19年、「桂 雀々独演会 雀々十八番」をシアターBRAVAにて6日間開催。全公演完売の大成功を収める。平成22年、「五十歳五十箇所地獄めぐり」を開始、全国行脚の開催で大きな話題となる。芸歴35周年を迎えた2011年、拠点を東京に移し、独演会は毎回完売。落語以外でもTV、映画、舞台での出演に加え、教壇でも講師を務めるなど多方面で活躍中。今年は40周年を迎え、9月9日には日本特殊陶業市民会館で「桂雀々芸歴40周年記念名古屋公演」(ゲスト:柳家喬太郎、神田松之丞)を行う。出囃子は「鍛冶屋」。

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