定額音楽配信サービスの先駆者AWA「音楽業界との関係を深化させ、AWA発のアーティストを発信する」

定額型音楽サービスが好調。先駆者AWAは、音楽業界との関係をさらに深化させていく(写真:アフロ)

先日、アプリ市場データを提供するApp Annie(アップアニー)が、2016年のアプリの収益額ランキング上位52社を発表した。その日本国内収益ランキング(非ゲーム)で、サブスクリプション型音楽配信サービスのLINE MUSICが7位に、そしてAWAが10位にランクインしたことが、ニュースになった。AWAは2015年国内でサブスクリプション(定額)型音楽配信サービスの先駆けとしてスタート以来、様々サービスを打ち出し、邦楽・洋楽がバランスよく揃うラインナップやそのデザイン、世界観のカッコ良さで、若いユーザーを多く獲得することに成功している。しかし、「まだまだサービス自体が根付いていない」と語るのはAWA株式会社取締役・小野哲太郎氏。Spotifyも本格参入し、いよいよ日本もサブスクリプション型音楽配信サービスの戦国時代に突入した。そんな中で間もなく2周年を迎えるAWAはこの戦国時代の中で、音楽業界との関係をどう深化させていき、どう戦っていくのか。立ち上げ以来同サービスの指揮を執る小野氏に話を聞いた。

「それまで知らなかった音楽と出会い、そのアーティストに興味を持ち、ライヴに行くなど”次の行動”に繋がって欲しい」

――昨年9月、Spotifyがローンチして、サブスクリプション(定額)型音楽配信サービス戦争が、いよいよ本格化してきました。当初は音楽業界は、配信のおかげでCDの売上げが落ちると、なかなか積極的ではなく、ようやくシフトチェンジして本気で取り組み始めた感じですが、小野さんはプロダクション、レコード会社などの音楽業界と、音楽配信サービスとの関係は、今はどう捉えていますか?

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小野 おっしゃる通り、元々音楽配信サービスで楽曲を配信するとCDが売れなくなるという発想があって、それは今でも一部ではまだありますが、先進的なアーティストの方が配信を積極的にやった時に、CDの売上げが果たして落ちたのかというデータを、AWAを一緒にやっているエイベックスさんのアーティストで検証しました。でも売上げは落ちておらず、そのデータを元に、各レコード会社さんに説明をして、徐々に、でも確実に理解していただけていると思っています。

――AWAさんは、2015年にサービスインをされて、“音楽との出会いと再会”をキャッチフレーズにしています。

小野 こういうサービスの良いところは、目の前にある約4千万曲が、960円で聴き放題というところですが、でもほとんどのユーザーが実際そんなにたくさんは聴けないですし、何を聴いていいのかわからないという状態だと思います。そういうユーザー一人ひとりの好みの音楽を、高い精度でリコメンドして、それまで知らなかった音楽と出会っていただく事で、そのアーティストに興味を持って、ライヴに足を運んでみるなど、“次の行動”に繋がると嬉しいなと思っています。音楽って「自分はロックしか聴かない」みたいなこだわりとかポリシーがあることが、ある種カッコイイという側面があると思いますが、そんな事はなくて、絶対もっとたくさん聴いたほうが楽しいはずです。知らないだけの食わず嫌いがなくなれば、もっと色々なアーティストにスポットが当たって、シーンとして盛り上がっていけるのではないかと。弊社代表の藤田も、とても音楽好きで、特に日本語ラップを好んで聴いていましたが、AWAをリリースしてからは、様々なジャンルの音楽に出会えているようです。

――多くのアーティストにスポットが当たることで、アーティスト側にお金が流れ、それを原資にまたいい音楽を作って欲しいという事ですよね。

小野 それが一番大事だと思っています。どうしても日本の市場は、違法とは言い切れないまでも、違法性の高い音楽サービスもたくさんあるので、若いユーザーが無意識にそればかり使っていると、音楽を作っている人達にしかるべき利益が届かず、次の音楽を作る事ができなくなる恐れがありますよね。音楽が生まれなくなることはありませんが、本来生まれるはずだった良い音楽が、生まれなくなる可能性はあると思っていて。それは避けなければいけない。ただ難しいのが、僕らもIT企業なので、世の中が絶対便利な方に流れていくという事は、身をもって体感していますし、そこがビジネスチャンスである事は間違いありません。今起きている世の中の流れを止める事に必死になるのではなく、それを利用し、かつ全員がハッピーになる方法を作る事が、僕らの大命題だと思っています。

――若い人たちが、使えるお金が少ないという事もありますが、違法アプリを使って、音楽をダウンロードしている中で、でも逆にいうとそれよりも魅力的なサービス、コンテンツを構築していかなければいけないという事ですよね。

小野 利便性を第一に求めているユーザーが多い世の中ですので、音楽の違法ダウンロードは大問題ですが、ユーザーが手軽に、無料で聴けること自体を悪だと決めつけると、ただ世の中の流れに逆らうだけになって、発展がないと思います。まだ答えが出ていないのですが、そこをどう上手く料理して、全員がハッピーになる仕組を作れるかというのが、僕らを含めて同業他社もみなさん一生懸命考えているところだと思います。

「この市場を1000億円規模にしなければ、売れているアーティストには興味を持ってもらえない」

――昨年Spotifyが本格参入してきて、いよいよ音楽配信サービスが揃い踏みという感じですが、これは危機感を持って臨むのか、それとも大きなチャンスなのか、どう捉えていらっしゃいますか?

小野 まず日本では定額制音楽配信がまだまだ根付いていないので、根付かせるために高品質なサービスを提供するプレイヤーが増えるということは、いい事だと思います。2016年のライヴを除いた日本の音楽市場は3,000億円程度。うち定額制音楽配信の市場規模は200億円程度でまだまだ2%にも満たない状況です。そこはもっと大きくしていかなければいけないので、競争が激しくなるのは大歓迎です。今はとにかく市場規模を広げたいという気持ちが強いです。さらにいうと、市場規模が伸びていかなければ、より多くのアーティストに参加いただけるようにもなっていきません。現時点でも定額音楽元年と呼ばれた2015年と比較すると、参加アーティストの数は格段に増えました。でも、いわゆるトップアーティストは、CDも売れますし、ライヴも動員できるので、配信に対しては興味が薄い方もいます。そのトップの方達に配信サービスに参入してもらうためには、少なくともまずは1,000億円規模のマーケットにしなければいけないと思っています。

――今年1月には若い人達から絶大な支持を得ているONE OK ROCKが、AWAさんに参加したり、海外の音楽配信サービスの方にビッグなアーティストがどんどん参入しているように、日本でも人気アーティストの興味が、徐々に配信の方に向いてきている状況です。

小野 今年度に入ってからも、誰もが知る何組かのトップアーティストの方々に、AWAで配信開始をするという決断をいただいており現在準備を進めています。確実にアーティストやレーベルのご協力のもと、良い流れが作れていると思っています。

――AWAさんは、今楽曲数は4千万曲を超えていて、ダウンロード数は1千万を超え、この成長スピードについてはどうお考えですか?

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小野 楽曲数に関しては順調に増えていますし、ダウンロード数についても着実に伸びてきています。ただ定額課金収益は伸びているもののまだまだ規模は小さく、サブスクリプション型の音楽配信サービスという新しい音楽の聴き方が浸透していない結果だと捉えています。ただ、新しい文化の浸透には時間が掛かるものなので、腰を据えてサービスを展開していかなければと考えています。

――今AWAは何人で運営されているのですか?

小野 現在、システムエンジニアも含めて60人で、平均年齢は25~26歳と若いチームです。若い感性を生かしながら、激しく変化していくマーケットの中で、スピード感を持って、日本の音楽業界全体の盛り上げを目指してサービスの進化に取り組んでいきたいです。

「AWAならではのアーティスト、新人を発掘し、世の中に広げていきたい」

――ザ・ウィークエンドのように、ネットからメインスストリームにのぼりつめたアーティストがいるように、是非AWA発のヒット曲や、AWA発の新人に出て来て欲しいですよね。

小野 おっしゃる通りですね。どうしても我々のようなサービスがメディアで紹介される時は、値段と曲数という部分が比較や評価の軸になりますが、実際どのサービスも全ての曲が聴かれているかというと決してそうではなくて。それより大切なことは、おっしゃって頂いた通り、AWAならではのアーティスト、新人を発掘し、世の中に広げるという事だと思っています。いい曲を歌っているのにまだまだ知られていないアーティストもたくさんいます。新人発掘と共に、そういうアーティストにもスポットを当て、世の中に広めたいです。もちろんみんなが聴きたい曲は用意しておかなければいけませんが、一方で新しい動きというか流れのようなものを作る事が、役割のひとつだとも思っています。僕らがもう既に売れている大物アーティストだけを追いかけて、曲を配信させて下さいと言い続けても、本質的には音楽業界にとってはプラスになっていなくて。「音楽業界の人気者に便乗して、サービスを流行らせようとしているだけ」という話になってしまいますよね。

――それこそAWAさんはユーザーが若い人が多いという事が、一番の売りになると思います。そういう人が聴いて選んだ新しいアーティスに登場してきて欲しいですよね。

小野 そうですね。自分のお気に入りのアーティストの楽曲でプレイリストを作って、人に聴いてもらうという事は、自分がアーティストを発掘する人になれるという事に似ているので、例えば、自分がオーディションの審査員やプロデューサーになった感覚で、AWAを使ってみて欲しいですね。

様々な企業との取り組みを加速させ、サービスを根付かせていく

――先日、マクドナルドの店舗で無料で使用できるFREE Wi-Fiサービスに接続すると、AWAさんが独占配信する人気アーティストの新曲が聴けるという、面白い取組みを発表しました。

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小野 若い方から家族連れまで、幅広い層の方に支持されているマクドナルドさんと提携することで、AWAの存在を広く知って欲しいという取り組みです。第一弾として、若い人から圧倒的支持を得ているダンス&ボーカルグループ「GENERATIONS from EXILE TRIBE」の新曲「太陽も月も」(4月12日発売)と、「THE RAMPAGE from EXILE TRIBE」の「FRONTIERS」(4月19日発売)の2曲を、独占先行配信します。AWAのStandardプランにご登録いただいている方と、トライアル期間中の方は、楽曲をフルバージョンで聴くことができ、Freeプランをご利用いただいている方も90秒バージョンを聴くことができます。GENERATIONSとTHE RAMPAGEの最新曲の他にも、今後もマクドナルドさん限定の、テーマ別のプレイリストを更新していく予定で、期間限定商品のテーマに沿ったプレイリストや、子供向けの楽曲を集めたプレイリストなど、マクドナルドさんと音楽を、より近づけるお手伝いができると考えています。また、高速モバイル通信サービス「BIGLOBE SIM」の利用者を対象にした「エンタメフリー・オプション」は、特定の動画や音楽サービスの通信料が、月額480円よりスマートフォンで視聴し放題になるオプションもスタートさせました。これにより、同オプションを契約された方は「AWA」の利用にあたっての通信量がすべて無料になり、「AWA」での楽曲視聴をはじめ、プレイリストの作成など、通信量を気にせずに利用できます。他にも、DENONが先日発売開始した新型のワイヤレススピーカー「HEOS by Denon」とも技術連携をさせてもらい、Bluetoothを利用することなく直接スピーカーがAWAのサーバーと通信を行い、楽曲を再生できるようになりました。これによりBluetoothを使って音楽を聴いている時のスマートフォンの電池残量を気にしたり、電話がかかってきた時などの不便さを解決しました。音楽という価値あるコンテンツを求めている企業はたくさんあって、色々なお声がけをいただいているので、今後もこういった他企業との取り組みを加速させて、AWAを使ってくれるユーザーを増やしていきたいと思っています。ただし、先ほども言った通り、これは新しい文化を根付かせる時間のかかる事業で、もっとも大事なことは当たり前ですが、ユーザーが何となく毎日ダラダラと使ってしまう中毒的なサービスに仕上げていくことなので、今後もサービスの磨き上げを最重要課題として取り組んでいきたいと思います。

「AWA」

■小野哲太郎 AWA株式会社取締役/プロデューサー。名古屋大学卒業後2007年度サイバーエージェントへ入社。2013年より投資事業担当として社長室長を経て、現在はAWA株式会社取締役/プロデューサー。