Yahoo!ニュース

【インタビュー】野宮真貴 効率よく美人になる方法教えます 「雰囲気美人」は「リアル美人」に勝てる!?

田中久勝音楽&エンタメアナリスト

「作戦勝ちです」――そうクスッと笑いながら野宮真貴が言った。野宮は「リアル美人」ではなく「器量に自信がなかった」自分を、美人に見せ続けてきた「雰囲気美人」だと言い、そういう意味での作戦勝ちなのだ。しかもコツコツ努力して…というのは苦手な性分で、いかに「効率よく」それができるかをテーマに、自分流の方法で、自分を磨いてきた。そんな野宮流の“効率的に美人になる方法”を、全ての女性に参考にして欲しいと書き下ろしたのが『赤い口紅があればいい』(幻冬舎)だ。野宮の優しく飾らない文章は、色々な事を気づかせてくれ、目から鱗の言葉の数々は、前に踏み出す一歩を後押ししてくれる。

美人に見えるようにトライ&エラーを重ね、身につけたテクニックを集めたアドバイス集

――まずこの本を出そうと思ったきっかけから教えて下さい。

10/1「口紅美人と、甲冑女。~野宮真貴とジェーン・スーが女を語る~」
10/1「口紅美人と、甲冑女。~野宮真貴とジェーン・スーが女を語る~」

野宮 書き下ろし本は2007年に『おしゃれに生きるヒント~50 Tips to Live in a Fashionable Way』を出して以来、約10年ぶりですが、45歳からの10年間はちょうど更年期ということもあって、女性は色々と体調に変化があるんです。女性ホルモンが少なくなっていくと、肌や髪に潤いが失われたり、嬉しくない変化が色々あるんです。でも私はシンガーとして人前に出る仕事なので、その時々でなんとか美人に見えるように工夫してきました。そんなトライ&エラーを重ねて身につけたテクニックがずいぶん蓄積されたので、このあたりでみなさんにお伝えしてもいいかなと思い書いてみました。

――アーティストでもあり母親でもある野宮さんは、憧れの存在でありながらも発言が“普通目線”でリアリティがあります。「私もこうなれる、私にもできるんじゃないとじゃないか」と思える人が多いのではないでしょうか。

野宮 そうであってほしいと思っていますし、私は元々あまりこつこつ努力するタイプではなく、簡単で効率よく美人に見える方法みたいなことを、自分なりに追及してきました。なので、どれも簡単で、ちょっとした工夫でできるものなので、取り入れやすいと思います。

――気づかせてくれる感じです。本当は誰もができることなんですが、つい手を抜いたり、見逃していることを改めて気づかせてくれる、そのテクニック集のような、優しい感じの本です。子供のころはコンプレックスしかなかったと書かれていました。今の野宮さんを見ていると信じられないです。

野宮 全然社交的ではなくて、人見知りでほとんどしゃべらなかったですね。体も小さくて、痩せていて顔も全然好きではなく…。でもデビューする前にバンドを組んで、ライヴをやったりコンテストに出るようになり、ビジュアルにも気を遣い始めました。オシャレは子供の頃から好きでしたが、自分が見られる立場、ステージに立つ側になって、人と違う個性のあるビジュアルを目指していました。

――この本は全ての女性に読んで欲しいと思いますが、特に35歳以上の女性に響きそうです。「40代は若さと加齢の狭間で微妙な時期」と書いてあり、確かにと思いましたが、野宮さんもこの時期は色々ありましたか?

『赤い口紅があればいい』(幻冬舎)
『赤い口紅があればいい』(幻冬舎)

野宮 精神的に不安定ということはありませんでしたが、失っていくものが増えていく時に、それを補うために色々と時間とお金を費やしたという感じです。今思うと頑張りすぎというか、それがいきすぎてしまうと、きっと美魔女みたいになってしまうんでしょうね。加齢に抗って、若くみせる事ばかりに意識がいくと、いつしか客観性を失って、かえって老けて見える可能性があります。

――自分に色々な負荷をかけていって、でもそれって違うんじゃない?って思い始めたのが50歳になってからですか?

野宮 50歳の壁って結構大きいですね。40代はまだぎりぎり、ちょっと頑張れば現役感を出せるのですが、50代になると例えば髪質が変わったり、そういうことが如実に表れるというか。

――逆に自分を“緩める”ことを、50代になって実践していった感じですか?

野宮 髪の毛にツヤがなくなったり、細くなったり薄くなったりするのですが、それを若く見せようとアイロンで伸ばしてツヤツヤに整えると、逆に顔の衰えを強調してしまうんですよね。50代になってそのことにはたと気づきました。後姿は20代なのに……ということにはなりたくないですからね。

「リアル美人」と「雰囲気美人」

――言われてみると、そういう人、意外と多いかもしれません。

野宮 私もそれに気づかず突き進んでいたら、美魔女と言われている人達の仲間入りをしていたかもしれませんね(笑)。一歩引いて客観的に自分を見ることが大事です。かたくなに若い頃と同じ髪型やメイクを変えないとか、自分にはこれしか似合わないという思い込みも、現実の自分が見えていないからですよね。私は50代になって、年相応の図々しさと開き直りも身につき、もっと楽にいこうと思えて。もちろん何もしないということではなく、失ったものを微調整して、姿勢、表情、清潔感を意識することで年相応の雰囲気美人に見えればよしとしました。もし客観性に自信がなければ、自分を輝かせてくれるプロデューサーを見つけることです。私自身、職業柄とはいえ、今までにたくさんのその道のプロにプロデュースをしてもらって今があります。プロデュースをしてもらうというのは一部の有名人に限られたものではありません。例えば美容院でセンスのいい美容師さんを見つけてアドバイスしてもらう。時にはプロである第三者に委ねることが大切で、髪も洋服もオシャレに関することは、積極的にその道のプロの力を借りるのが早道です。

――本の中ですごく印象的だったのが、「リアル美人」と「雰囲気美人」という言葉です。生まれつき美人の人と、そうじゃないムードとかモードで美人を演出できている人がいて、最初から美人だった人と、雰囲気美人だった人の立場が年を重ねていくにつれ、逆転していくという部分は、インパクトがありました。

野宮 美人かそうでないかはそれぞれの主観なので何とも言えませんが、年を重ねるのは誰もが平等なので、リアル美人も年齢には抗えませんから。顔のパーツが整っている美人も、加齢によって微妙にバランスが変わってしまうし、シミやシワも出てくるじゃないですか。そうするとリアル美人と、雰囲気美人が同じスタート地点に立つことになると思うんですよね。そして、今までコツコツと自分磨きをしてきた雰囲気美人の知恵と努力とテクニックがものをいうわけです。リアル美人に逆転も夢じゃない(笑)。

――なるほど。同窓会に行くとそういうシーンを見かけることがありますよね。

野宮 当時は目立たなかった子が、すごくきれいになっていたりすることありますよね。みんな自分にないものを求めるというか。誰でもコンプレックスの一つや二つは持っていると思いますが、実はコンプレックスとは個性でもあるんですね。それをチャームポイントとしてアピールしていくことで、その人らしい魅力になっていくと思っています。

――ないものねだりみたいなところが多いですよね。そこは男性も同じだと思います。「雰囲気美人」は外見をよく見せるとか、心身共に健全でいる事とか、生き方そのものを改めて教えてくれている気がします。

野宮 あまり考えすぎないで色々トライしてほしいですね。例えば赤い口紅も、自分には似合わないからと決めつけないで、まずつけてみようよという気持ちが大切です。考える前に、塗れ!です(笑)。

――考えすぎないでもう少し楽に生きる事が大切だと。

野宮 もっと女性であることを楽しんでいいと思うので。世間の目線に晒されて傷ついたり、諦めたりする必要はなくて、美人になることに照れないで、オシャレに関しても、もっと自由に楽しんでもいいんじゃないかと思います。

「自由になるために美人になる」――失うことを嘆かず、楽しみを見つけていけば人生が楽しくなる

――「自由になるために美人になる」という言葉も、いい言葉ですよね。

野宮 リアル美人である必要はなくて、その人の魅力を見つけて伸ばしていけば、雰囲気美人になれるのですから。すると、自分に自信が持てるようになって、より自由になれると思います。日本では特に若い女性のほうがちやほやされたりしますが、だからといって年齢を重ねると“女”諦めちゃう必要はありませんよね。失うものばかりを数えていないで、年齢を重ねることで増える楽しみを見つけていくことです。実際自分も精神的に楽になったり、新しいおしゃれが増えたり、歳をとるのも悪くないと思っています。そしていつでも今が一番いいと言える自分でいたいと思うし、そのためにオシャレも楽しもうと思います。

――男性側からみてみると、女性の色々な事に気づいて、言葉をかけてあげる事によって、女性がさらに輝きを増すと。自分の彼女や奥さんが輝きを増すと男性も嬉しいし、男性にもできることがあるということですよね。

野宮 その通りですね。フランス女性が羨ましいのは、歳を重ねるほどモテるし、60歳になっても70歳になっても恋愛ができるところです。そういう成熟した社会には憧れますね。でもそこには、「生きている限り、一生女である」という意識をフランス女性が持っているからで、だから男性も年齢ではなく、いくつになっても一人の女性として見ることができるんでしょうね。日本では年頃の女性は、結婚や出産が視野にある場合、男受けのいいモテファッションやモテメイクをするのは当然ですよね。より良い男性をゲットするためですから。でも結婚をして子供を産んでお母さんになったら、旦那さんから一人の女性として見てもらえないなんて寂しいですよね。それには、育児に大変でも出来る範囲でいいので、女性はキレイを諦めないこと。男性はその努力を見つけてとにかく褒めることが大事ですね。

――それと「姿勢と表情と清潔感が若々しさを保つ最も大切なこと」だとおっしゃっています。これもすぐに実践できる事ですよね。

野宮 そうですね。この3つを制すれば確実に10歳若く見えますよ。好感度も手に入りますし。逆にいうと、この3つを意識しないと、いくらメイクが上達してもおしゃれに磨きをかけても、おばさん度が高まります(笑)。

「一歩踏み出す勇気の象徴が赤い口紅」

――「一歩踏み出す勇気の象徴が赤い口紅」という言葉も印象でした。

画像

野宮 去年の夏、MiMCというオーガニックコスメブランドから2色の赤い口紅をプロデュースしたのですが、その評判が良くて。なぜ口紅を作ったかというと、私自身が年齢を重ねて肌がくすんだり、シミやシワと言った嬉しくない変化が訪れた時に、赤い口紅を差すと顔もパッと華やいで、若々しく元気に見えることもあって、女性にとってとても大切なものだと思ったからです。赤は気持ちを上げる色ですし、50代になってから赤い口紅をつけることが多くなりました。1980年代に一度赤い口紅が流行って、その時も使っていましたが、若い頃とは違う説得力とこなれ感を演出できるようになったと思います。それから、女性は一生で7本の口紅を食べているという説があって、もしそれが本当なら心配だなと思いオーガニックのものを作りました。オーガニックで鮮やかな赤を表現するのは難しいのですが、研究を重ねてオーガニックなのにモードな赤い口紅を作ることができました。唇だけ真っ赤で悪目立ちすることもないので、それも喜ばれています。口紅は誰でも簡単に手に入れることができるけれど、つけるのには少し勇気がいるので敬遠される女性が多いのも事実なんです。でも一歩踏み出す勇気があれば新しい自分に出会えるし、何と言っても最も手っ取り早く美人に見せるアイテムなのでオススメです。

――赤い口紅ってそれこそメイクとかヘアスタイル、洋服まで選ぶというイメージがあります。

野宮 みなさんそんな風に心配しますが、以外にもどんなスタイルにもマッチします。赤い口紅をつけるときのメイクのポイントはすべてを整えすぎないこと。ファンデーションはナチュラルに仕上げて、眉を少し整えたら、赤い口紅を塗るだけです。それだけで、”こなれ感”が演出できます。赤い口紅=フォーマルと考えないで、カジュアルに使うといいですよ。赤い口紅をつけた自分の顔を見慣れるということも大事なので、まずは家でつけて慣らしていくことも提案しています。究極はつけなくてもいいと言っています。たとえつけなくても、ポーチの中に赤い口紅が入っていると思えば、いつでも女性としてのスタンバイOKです。そんなお守りとして持つのもいいと思います。

――やはり赤い口紅とハイヒールが、女性として精神的にも見た目にも美しくいるための最高の武器ですか。

野宮 赤い口紅やハイヒールは女性の特権ですよね。自分の中の女性を意識するためには必要なものだと私は思っています。でも、毎日つけたり履いたりする必要はなくて、どちらもいざという時身につけられる自分でいることが大事だと思います。ハイヒールはもともと歩くために作られていないデザインも多いですし、私は観賞用のハイヒールも大事にしています(笑)。私は今56歳、10年前に本を書いていた頃の事を思い出すと、40代も半ばになり若さを失っていくことに翻弄されていた自分を思い出すと、頑張りすぎていたなと思います。そういうことで悩んでいたわけですけど、56歳の私から見たら、まだまだ若さが十分あるわけです。ということは、今の自分も10年後の自分が見たらまだ若いわけです。だから失くしていくものばかりに気を取られて人生を無駄にしないで、常にその時々で一番いいと思える自分でいるために、その時を楽しむことこそが大切だと思います。私はよく、「体型が変わらなくていいですね」と言われる事がありますが、実際はかなり体型は変わっています。でもそう言って頂けるということは、変わってしまった部分はうまく隠したりと、少しずつ微調整していてるのですが、その作戦が成功しているということですよね(笑)。

――この本を読んで身につまされる人も多いでしょうし、気づかされる人も多いでしょうし、男性が読んでも面白いと思います。

野宮 私は目の錯覚を利用した省エネの美容でもいいと思ってますが、本当に努力している女性もたくさんいます。そうやって頑張っている女性が多いので、男性は是非女性を褒めてくださいね。勇気を出して赤い口紅をつけているのですから、決して「今日はどうしたの?」なんて言わないことです。男性がもっと素敵になれば、女性はもっと輝きます!

――そういうダンディさを、ある程度の年齢の男性には持って欲しいですよね。

鈴木雅之と
鈴木雅之と
横山剣(クレイジーケンバンド)と
横山剣(クレイジーケンバンド)と

野宮 そうですね。先日アルバム『男と女〜野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。~』(8月31日発売)で、鈴木雅之さん横山剣さん(クレイジーケンバンド)とデュエットしていますが、お二人ともダンディな大人の男性ですよね。今では貴重な存在かも(笑)。女性のみなさんには、この本を読んで自分のチャームポイントを見つけて、美人になって自由を手に入れて欲しいと思っています。あなたにとっての「赤い口紅」が見つかりますように。

画像

<Profile>

ピチカート・ファイヴの3代目ヴォーカリストとして、90年代に一斉を風靡した「渋谷系」ムーブメントを国内外で巻き起こし、 音楽・ファッションアイコンとなる。 2010 年に「AMPP 認定メディカル・フィトテラピスト(植物療法士)」の資格を取得。現在、音楽活動に加え、ファッションやヘルス&ビューティーのプロデュース、エッセイストなど多方面で活躍中。

デビュー35周年記念アルバム『男と女~野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。~』
デビュー35周年記念アルバム『男と女~野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。~』

2015年に発売したアルバム『世界は愛を求めてる。~野宮真貴、渋谷系を歌う。』はオリコン・ウィークリー・アルバムランキング<ジャズ部門>で1位を獲得。2016年8月31日には「渋谷系スタンダード化計画」の発展形ともいうべき<フレンチ渋谷系>の2枚組『男と女~野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。~』をリリースした。

またプロデュースしたMiMCオーガニックコスメ「サプリルージュ」は、全国コスメキッチン リップ部門2015年間売上1位に輝いた。2016年9月23日にデビュー35周年を記念した10年ぶりの書き下ろしエッセイ『赤い口紅があればいい』(幻冬舎)を発売し、重版も決定。11月3日には『ゴロウ・デラックス』(TBS系)に出演する。この時期恒例のツアー『野宮真貴、渋谷系を歌う−2016−。“男と女”』を、11月4日(金)ビルボードライブ大阪を皮切りに、5日(土)愛知・名古屋ブルーノート、11(金)・12日(土)ビルボードライブ東京で行う。今年のテーマは”サウンドトラック渋谷系”。

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

田中久勝の最近の記事