【インタビュー】WEAVER 空白の1120日――何がバンドを進化させたのか?自由と希望に満ちた新作

初のプラネタリウムライヴ「Rainbow Lounge」(2/11神奈川)

前作から約3年のブランク。WEAVERに何が起こったのか

例えば、何かひとつの事を続けていて、次のステージへステップアップしようとしている時、それまでの勢いそのままに行くのもいい。とにかく突っ走る感じ。でもそれまでの道程で、どこかに違和感を感じていたり、何か不安な部分があるとすれば、一度立ち止まって考えるのも一手だ。立ち止まることは決して後ろ向きなことではない。立ち止まって、更に後ろに下がってもいい。そこから助走をつけてジャンプすればいいのだから。一度しゃがみこんでしまうのもいい。ゆっくり考え、納得がいった時、勢いを付けて高くジャンプすればいいのだから。動きを止めることは決してマイナスでもなんでもない。

バンドが3年間アルバムをリリースしないということは、何を意味するのか。それが例え前向きな充電期間としても、ファンはもちろんメンバー自身が一番不安に思うはずだ。10年、15年、20年のベテランアーティストなら、また事情も変わってくるかもしれないが、デビューして4年が過ぎたばかりのバンドの、目まぐるしく変化していく音楽シーンの中での3年は、“たった”3年なのか、それとも長すぎる3年だったのか?

杉本雄治(P&Vo)
杉本雄治(P&Vo)

3ピース・ピアノロックバンドWEAVERの約3年ぶりのニューアルバム『Night Rainbow』(2月10日発売)を聴いた時、そんな事をふと考えた。2009年にメジャーデビューして今年で7年目の彼らは、どちらかといえばそれまで順調に歩んでき、ライヴの動員も増やし続けてきた。そんな中で2014年、突然半年間のイギリス留学。

奥野翔太(B&Cho)
奥野翔太(B&Cho)

たった半年という捉え方もできるが、一体何が彼らに起こり、彼らは何を想いながら創作活動を続けていたのだろうか。その答えがニューアルバム『Night Rainbow』になるわけだが、そこには3人の突き抜けた気持ちと、とびきりの自由さを感じることができ、進化という言葉しか思いつかないほど、彼らのキャリアの中でも特にポイントになる一枚になることは間違いない。

2月11日、このアルバムの発売を記念して神奈川県「はまぎん こども宇宙科学館 宇宙劇場」で初のプラネタリウムライヴ「Rainbow Lounge」を行った。ライヴ直後の興奮冷めやらぬメンバーにインタビューをしたが、そこにはこのアルバムを完成させたことと、それをいち早くファンの前で披露できた喜びに満ち溢れる3人、でも冷静に今の自分達の気持ちを吐露する3人の凛とした、まっすぐな姿があった。

河邉徹(Dr&Cho)
河邉徹(Dr&Cho)

ロンドン留学で得た感覚をきちんと一枚の作品にしたかった

――3年ぶりのアルバムです。充電期間だったとはいえバンドとして3年間アルバムをリリースしなかったということに対して不安はなかったですか?

杉本 2014年に半年間ロンドンに留学していたのですが、その時も不安と焦りしかありませんでした。もちろん作品を出したいという気持ちは強かったのですが、やはりロンドンに行って精神的にもそうですし、作るサウンドがどんどん変わっているなぁということは自分達でも感じていました。ロンドンに行く前も曲は作っていましたが、それは一旦置いておいて、ロンドンで書いた曲をきちんとした形にして次のアルバムは作りたいという気持ちがありましたので、そういった意味でもちょっと時間がかかってしまいました。

――前作『Handmade』(2013年1月16日)が実は最初のフルアルバムでした。まだまだやらなければいけない事、やるべきことがたくさんあったと思いますが、そう考えるといい充電期間になったということですね。WEAVERはピアノロックバンドで、でもいつも歌がしっかり立った作りで、今回のアルバムはいつも以上にそれを感じます。ドラム、ベース、ピアノの音が歌に寄り添っている感じはしますが、それぞれの音がしっかり主張している。

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杉本 僕たちは歌ものが大好きで、ポップな部分というのは根っから三人が持っているものなんです。でもバンドとしてメジャーデビューしてからはそのポップさが、バンドが本来持っていたオルタナティヴな部分を消してしまうんじゃないかという、勝手なコンプレックスを抱きながらずっと曲を作っていました。でもロンドンから帰ってきてからは自分達がポップであることのよさと、その中に今の自分達だったら洋楽的な要素も詰められるという真の自信というかそういうものがしっかりできたので、ポップスはポップスとしてちゃんと響かせることができるし、トリッキーな曲は振り切って作ることができたし、そういう気持ちの切り替えというか、楽曲の色の立て方というかそういうものを3人が明確にイメージして作れるようになったというのが大きいと思います。

バンドとしての行き詰まりを感じていた。想像もしていなかったこと=海外で生活をして、味わったことがない感覚を取り入れることが必要だった

――そもそもなぜロンドンだったんですか?

杉本 メインは語学の取得でした。何年か前から海外でライヴをする機会が増えていまして、もちろん音楽だけでもつながることはできましが、他の部分でも言葉できちんと伝えたいと思い、3人それぞれ英語の勉強はしていたのですが、やっぱり日本ではなかなか仕事をしながらというのは難しく…。それと、ロンドンに行く半年前あたりから3人の中で行き詰っている部分があり、どうしていったら今の伸び悩んでいる部分、次の壁を乗り越えられるのだろうというのが見えてなかったんです。スタッフさんとも話し合いを重ねて行くうちに、今まで自分達が想像もしていなかったことをやった方がいいんじゃないかという話になり、それは例えば海外に住むとか、今いる場所から離れて全然違う感覚を取り入れることによって何か見えて来るんじゃないかという話が出てきました。もちろん知らない場所に行く不安は感じていましたが、それ以上に自分達がそこに行ったら変われるという期待感のほうが大きかったので、話が出て次の日には行くと決断していました。

奥野 行くまでの手続きは結構時間がかかりましたけど、行くという話が出てから行こう!って決まるまでの瞬発力は凄かったなぁと思います。

河邉 ロンドンにしたのは3人ともコールドプレイやレディオヘッドが好きで、U2もずっと聴いていてUKの音楽が大好きだったということもあります。そういうアーティストが活動している場所に行くことによってその空気感とか、音楽ってその土地の天気とかにも影響されるものだと思いますので、だからあんな陰鬱な音楽ができるんだって向うに住んでわかったこともありますし、そこで暮らしてパブに行ったり、音楽が生まれる瞬間に遭遇したりしたというのはすごく大きな経験になりました。

「バンドとして行き詰っていた」――順調にステップアップしていた感じがしていたバンドのメンバーの口からこの言葉が出るとは、確かにショックな事ではあるが、どのバンド、アーティストも抱えている現実問題だ。でも「伸び悩んでいた」と冷静に見つめることができ、それをきちんと言葉にできるということはメンバー同士、そしてスタッフとの絆、信頼関係が存在するからに他ならない。なんとかしなければいけない――だからこそ動きを一旦スローダウンさせ、空気を入れ替えてみようという、勇気ある決断を下すことができた。

マジメすぎる優等生的な部分がコンプレックスだった。だから無理に尖ろうとしていた

――でも半年というのは結構思い切りましたよね。その間リリースはありましたが…。

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奥野 活動休止しているようなものでしたからね。

――手ぶらじゃ帰れないぞという状況に自分達を追い込んだ感じもありましたよね、きっと。

河邉 凄かったですそれは(笑)。どう変わって帰ってくるの?っていう周りからの期待感も感じていましたし、君たち英語ぺらぺらになって帰ってくるんでしょ、みたいなプレッシャーみたいなものもありました(笑)。そういう精神的な追い込みは感じていましたので、逆に向うで暮らしている間は貪欲になれたという部分もあったと思いますし、向うのアーティストと一緒にスタジオに入ったり、僕はドラムを教えてもらったりして、日本に帰ってきてからそれがプレイにいい感じに出ていると思いますので、行ってよかったと思っています。その間、日本ではもしかしたらバンドとしては一歩下がってるような状態だったかもしれませんが、でもその期間があったからこそ遠くへ跳べるんじゃないかなと今は思えます。

――デビュー当時からどこか“ちゃんとしている”というか優等生的な雰囲気がありましたよね。どんな音楽をやっても“きちんとして”まっすぐなイメージが強かった。今回のアルバムは、バンドとして大切な変わらない部分を守るために、変わらなければいけないという強い意志を感じました。

杉本 自分達が元々持っている芯の部分をやっと受け入れられた感じがあります。今まではちょっと優等生的な部分というか真面目な部分というかそれがコンプレックスでした。だから何かやって尖っていこうとしていました。

河邉 真面目に尖るっていう(笑)

「曲を作る杉本から、ある種のエゴが出てきたことがバンドとしての追い風になった」

奥野 周りの人たちからももっとこういうことをしないととか、もっと尖らないととか言われたこともありましたし、一体どれが正解なのかわからなくなった時期もありました。元々真面目な3人ですのでそれは根にあると思いますが、それを隠しても仕方ないし、その上で、これが今回アルバムを作る上で一番明確だったのですが、杉本が作ってくるデモで「これはこうしたいんだ!」というある種エゴみたいな部分が、今まではなかった感じが出てきて。今回のアルバムのリード曲「KOKO」はEDMが入ってきたり、バンドとしてはすごくチャレンジングな事だと思うのですが、それでもこれを出していきたいんだという杉本の譲れない想いがあって、アーティストってそういう部分がないといけないとも思いますし、それが今回は強く出ていたのがバンドとしてすごく追い風になったと思います。

“地頭”がいい3人は、器用で吸収力、対応力に優れていて、“できすぎる”がゆえに、どこか優等生的なイメージが付きまとっていた。でも優等生というのは決して悪い意味ではなく、どこまでも真っ直ぐということだ。そういうところが、逆に面白みに欠けるという捉えられ方をされていたのかもしれない。でも真っ直ぐに、誠実に音楽に向かい合っている3人なのだからそこは変えようがないし、変える必要がない部分だ。今回のアルバムには3人が異国の地でそれまで感じたことがなかった空気や音楽に触れ、ライヴ、街の雑踏や人々の息遣い、天気、そんな肌で感じたこと全てを吸収し、それを何に縛られることなく、自由に音と言葉に反映させているから“強い”作品に仕上がっている。

今までは”誰かにいいと言ってもらうため”にやっていた。音楽は自分が楽しまなきゃ――好きな事をやらないで後悔はしたくない

――「KOKO」「さよならと言わないで」「クローン」はエレクトロの要素が強く、それはライヴで盛り上がることを見据えて作ったとライヴのMCでも言っていましたね。

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杉本 ロンドンに行っている間に、今までは音でしか聴いていなかったものをライヴで観ることができて、例えばEDMの一体感とか幸福感とか、それは自分達がライヴで作りたかったものと実は一緒だったんだということに気付いたんです。日本でやるライヴの一体感ももちろん大好きなんですが、やっぱり音楽ってもっと自由なものなんじゃない?というのが根本的に抱いていた気持ちで、お客さんの音楽の楽しみ方は自由でいいと思っていて、海外のアーティストのライヴはお客さんそれぞれが踊ったり体を揺らして楽しんでいるんですよね。僕らも、そこにいる人たちが感じるままに楽しめる音楽を作っていって、そこから自分の楽しみ方を見つけてもらえたらいいなと思います。

――3人の気持ちが突き抜けた感じがアルバムから感じられます。

杉本 自分達がやりたいことをやれているという感じはあります。これは優等生という部分につながるかもしれませんが(笑)、“誰かにいいと言ってもらうため”に何かをやっていた部分が少しありました。でもそうではなく音楽って自分が楽しむものでしょという単純なところに行き着きました。それはロンドンでのつらい経験も色々ありましたし、デビューしてバンドがうまくいかない時期があって、その中で今自分がやりたいことを曲にしないといつか後悔するだろうなぁという想いも感じて。だからそういう悔しい部分や反骨心からもっとわがままに自分の好きな事をやってやろうと思えるようになったと思います。

バンドのフロントマン=ボーカル杉本のこの言葉が、3人の想いそのものだと思う。誰かを楽しませるために、自分達が音楽を楽しむことを忘れてしまっていたという言葉が胸に突き刺さる。ミュージシャンとしての矜持を持って音楽と向かい合っていたはずなのに、どこかでズレが生じていた。このアルバムのリード曲「KOKO」の冒頭、“行き場のない焦り 鍵はすでに失くした 明日へ続く 扉の前”という歌詞がある。さらに“本当の自分は誰だろう?誰なの?”と、当時の3人の胸の内を描いているようで痛みさえ感じる。でも杉本が言うように、辛い思い、様々な経験をしてきたからこそ今、好きな事をやるんだという前向きな気持ちも“目を開いて 動き出した 景色を追いかけて進む 手を伸ばして指が触れた 鍵がない扉”という、希望に満ち溢れた言葉で綴られている。

変わってはいけないところを守るために変わっていく、進化していく――そう決めた3人の想いが溢れる言葉とメロディ

――今回のアルバムに収録されている曲には「歌」「歌う」「音楽」「言葉」という言葉が随所に出てきて、今の3人の気持ちの表れというか、ファンに届けたい、ファンと共に音楽を楽しみたいという、改めての意志表示のような感じがします。

河邉 僕たちはいつもメロディ、サウンドが出来上がってから歌詞を考えていたのですが、そういう言葉が出てきたというのは、やっぱりさっきも出てきましたが、杉本が作るデモが明確でしかも音楽に対する愛が溢れているからそれを聴いていて、「音楽」という言葉が合うと思いましたし、この曲でお客さんを迎えてあげることができるんじゃないかとか、そういう想うことも多々ありました。それで自然と今回のアルバムの中には「音楽」とか「歌」というキーワードが出てきたんだと思います。

――中でも、「言葉」という言葉がよく出てきますが、これはとにかく聴き手にきちんと伝えたいんだ、という溢れる想いと受け取りましたが。

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河邉 僕らはボーカルではなくドラムが詞を書くという珍しいスタイルのバンドで、その意味というものを僕自身もアイデンティティではありませんが見出したいという想いが強く、小さい頃から歌=歌詞の印象が強く、みんなにそういう風に思ってもらえる歌詞ってどういうのだろうといつも思っていました。結果、やっぱり「言葉」が好きなので、そういう言葉が並んでいるのかもしれません。

――今回初めて杉本さん作詞の「Hellow Goodbye」が収録されていますが、詞を手掛けるのが初めてというのが意外です。

杉本 僕は河邉とは違って、今までは言葉というよりは逆にメロディ、音に救われてきたのでその部分を追求して曲を作ってきていました。でもデビューしてからは、やっぱりボーカルが歌詞を書いてそれを歌う強さってあるなというのを、他のアーティストのライヴを観て感じていましたし、自分も書きたいなというポジティブな気持ちに自然となっていました。それは自分の音楽に自信がついてきたのもあると思いますし、僕らのことをずっと応援してくれている人達に、言葉を伝えていかなければいけないなと感じ始めていましたので、それが今回歌詞を書く背中を押してくれたのだと思います。

――これから増えそうですか?

杉本 そうですね。最初の1曲はどう書いていったらいいんだろうという難しい部分はありましたが、書いてみると、そんなに考えすぎずにチャレンジしてみたらどんどん面白いものができるんじゃないかなと感じました。でも今まで3人でWEAVERの作品、物語を作ってきた良さというのは絶対あると思うので、そこはいいバランスでこれからもやっていけたらいいなと思っています。

大きな意味でのリセットを経験した3人の”初期衝動”が詰まったアルバムは、バンド史上のターニングポイントになる一枚

『Night Rainbow』は3人のロンドン留学の証、それだけのアルバムではない。もちろんそれは大きな要素ではあるし、精神的にも音楽的にもタフになって、自由度を増して帰ってきた3人が全面に出ているが、帰国後、全国ツアーを行ったり、精力的にフェスに出演したり、ライヴを重ねることでしっかりと“芯”の部分を改めて鍛え、原点を見つめ直したからこそ出てきた12曲がパッケージされている。様々な音楽が内包され、バラエティに富んだ、生き生きとした曲が揃っている。それは葛藤と戦い続け、勇気ある決断をしてのロンドン生活を経て、大きな意味でリセットしてきたともいえる3人の、いわゆる“初期衝動”が詰まっているともいえる。だからどこまでも瑞々しいし、自由で、その“勢い”は美しくさえある。間違いなくWEAVER史上のキーポイントになる作品だ。

アルバムタイトルの『Night Rainbow』という言葉は、収録曲「Welcome!」の“「夜にかかる虹を見たことあるかい?」”という一節からきている。それを目にしたものにはシアワセが訪れるという。「くちづけDiamond」「Boys & Girls」にも「虹」という言葉が出てくる。それは3人の希望に満ちた“今”の想いでもある。バンドとしての絆をより強固なものにした3人はさらに強くなり、バンドとして変わらない、変えられない部分を守るために変わっていく、進化していかなければいけないというそのプライドを改めて提示してくれている。それはWEAVERがファンと共にシアワセをつかむために、次への一歩を力強く踏み出した証でもある。そしてそのシアワセをファンと共に共有するために、4月からこのアルバムを引っ提げて全国9都市を回るツアー『WEAVER 11th TOUR 2016「Draw a Night Rainbow」』が始まる。WEAVERの終わりなき旅は続く。

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《PROFILE》

2004年兵庫県下では屈指の進学校である神戸高校の同級生として出会い、4ピースバンドWEAVERを結成。 2007年、現在の3人編成となり、3ピース・ピアノバンド『WEAVER』としてライブハウス神戸VARITを中心に活動をスタート。

2009年10月にデビューダウンロードシングル「白朝夢」にてデビュー。

WEAVERオフィシャルサイト