Yahoo!ニュース

"今、一番聴きたい声” 、秦 基博が愛され続ける理由

田中久勝音楽&エンタメアナリスト

「鋼と硝子でできた声」=”選ばれた声”

“歌は世につれ 世は歌につれ”という言葉がある。歌は世情を移す鏡だということだが、もちろんその歌詞やメロディが“時代の気分”を反映させ、その時聴いている人の想いと重なって、その人にとって忘れられない歌になったりするものだが、結局、その歌を聴き手の心にドラマティックに伝えるのは、歌い手の「声」が大きな役割を果たしている。声は生まれ持ってのもの、神様から与えられた才能だ。鍛えようがない。昔、声をハスキーにしようと消毒液や焼酎でうがいをして……というアーティストもいたが、やはり声は天からの授かりものだ。だから自分の声の良さや、他の人にはない何かを持っていると気づき、歌い手になろうと思った人には、“表現者”として、様々なメッセージを聴き手に伝え、その人の心を豊かにする“使命”があるとつくづく思っている。それは“選ばれた人”だからだ。何千人、いや何万人に一人の“選ばれた人”だから、その声、歌で聴く人の背中を押し、勇気を与えるビタミンとなり、時には涙や悲しい気持ちを優しく包む、癒しの存在であったり、感動を与える存在であって欲しい。

デビュー当時「鋼と硝子でできた声」というキャッチコピーがつけられた秦 基博の声を初めて聴いた時、“その人”だと思った。選ばれた表現者だと。“鋼”で、決してブレない力強さを、“硝子”でどこまでも透き通った繊細さを表現した、素晴らしいキャッチコピーだと思う。繊細でありながらも突き刺さるような声質。どこまでも突き抜けていく高い声、そしてザラつきのあるハスキーボイス。さらに芯のあるファルセットは、極端に声量が落ちることがなく伸びやかで、なんて表情豊かな声なんだろうと思う。ライヴも何度か観ているが、アコースティックなスタイルでもバンドスタイルでも、まずはあの声に包み込まれ、そこから様々な感情を掻き立てられ、感動を運んでくれる。

”みんなが聴きたい、唄いたい曲”「ひまわりの約束」

彼のそんな声が最大限に発揮されたのが、昨年大きな話題を集め、自己最高のヒットになり、さらにロングヒットを続ける珠玉のバラード「ひまわりの約束」だ。

ISUMブライダルミュージックアワード2015授賞式
ISUMブライダルミュージックアワード2015授賞式

映画『STAND BY ME ドラえもん』の主題歌として書き下ろされ、映画も大ヒットし、この曲で秦の存在は一気にお茶の間に拡がっていった。優しさと温もりに満ちた歌詞とメロディが、老若男女問わず愛されている。「側にいたいよ」というストレートなフレーズで始まる印象的なサビ、熱くも温かで穏やかな愛情が優しい言葉で歌われている。聴く人全ての心が動かされる。

「ひまわりの約束」は、配信の累計が100万ダウンロードを突破し、数字は今も伸び続けている。また国民的番組NHK『のど自慢』ではこの曲を歌う人が多く、さらに結婚式でも欠かせない曲になっているようだ。ISUMブライダルミュージックアワード2015「2015年結婚式でもっとも人気の曲/アーティスト」(男性部門)を受賞し、テレビの音楽番組などで彼がこの曲を歌うと軒並み最高瞬間視聴率を記録したり、とにかく“みんなが聴きたい、歌いたい曲”として認知が拡がっていった。

また、「ひまわりの約束」の大ヒットを受け、秦の元には様々なタイアップの依頼が殺到し、結果的に2015年は一年中、映画、テレビで秦の歌声が流れていた。

◆NHK Eテレ『人生デザインU-29』テーマソング「ROUTES」

◆東京西川『&Free』TVCMソング「アイ~Acoustic Session with KAN~」

◆映画『あん』(監督;河瀬直美、主演;樹木希林)主題歌「水彩の月」

◆大東建託「みんなの想い」篇TVCMソング「デイドリーマー」

◆クラシエ『いち髪』TVCMソング「恋はやさしい野辺の花よ」(カバー)

◆東野圭吾原作映画『天空の蜂』(監督;堤幸彦)主題歌「Q & A」

◆ハウス『北海道シチュー』(出演;松坂桃李)TVCMソング「聖なる夜の贈り物」

◆GLOBAL WORK TVCMソング「Sally」

クリエイターの感性をくすぐる声

クリエイターの感性をくすぐり、またユーザーに自社商品を届けるために秦の声、歌の力を借り、感動と共に伝えようとする企業……業界、伝え方は違えど、しっかりユーザーに訴求するためにはどうすればいいか、ということを考えた結果、秦の声が起用されるわけだ。

秦が作る曲は「ひまわりの約束」もそうだが、例えば切ない曲はただ切なさを感じさせてくれるだけでなく、とにかく“泣ける曲”になり、アップテンポの元気系の曲は、明日という日を希望あるものに変え、だから頑張っていこうという応援歌になる。それはやはり彼の声の影響が大きく、スッと聴き手の心に入ってきて、でも決して押しつけがましくなく、さり気なく感動を残してくれ、それが大きな存在としていつまでも残るのだ。

秦は、12月16日には約3年ぶりとなるオリジナルアルバム『青の光景』をリリースする。「ひまわりの約束」はもちろん、前述のタイアップソングの多くも収録される。ミディアム、スロー、アグレッシヴ、様々なタイプの曲は、凄腕ミュージシャンが弾き出す音と、秦の歌声とが相まって生まれた素晴らしいグルーヴを感じさせてくれる。「ひまわりの約束」を聴き、秦のファンになったという人も多いだろう。そんな人にとっては彼の才能を改めて感じることができる一枚になり、昔から応援している人にとっては、成熟しさらに深みを増した声の素晴らしさと表現力の豊かさを感じることができる。

2006年11月にメジャーデビューした秦は、来るべき10周年という節目の年を前に、「ひまわりの約束」というスタンダード=最強の武器、を手に入れ、さらに歩幅を広げて前へ、前へと進もうとしている。

画像

画像

【リリース情報】

アルバム『青の光景』 2015年12月16日リリース

<収録曲>

1. 嘘

2. デイドリーマー (大東建託『みんなの想い編』CMソング)

3. ひまわりの約束 (映画『STAND BY ME ドラえもん』主題歌)

4. ROUTES (NHK Eテレ『人生デザインU-29』テーマソング)

5. 美しい穢れ

6. Q & A (映画『天空の蜂』主題歌)

7. ディープブルー

8. ダイアローグ・モノローグ

9. あそぶおとな

10.Fast Life

11.聖なる夜の贈り物 (ハウス『北海道シチュー』CMソング)

12.水彩の月 (映画『あん』主題歌)

13.Sally (GLOBAL WORK CMソング)

■初回生産限定盤(CD+DVD)

デジパック+三方背仕様+32Pスぺシャルブックレット

AUCL 192~193

¥4,167(税抜) ¥4,500(税込)

【DVD内容】

「Behind of“青の光景”~interview, recording & live~」

・LIVE映像 (世界遺産劇場-縄文あおもり三内丸山遺跡ー)

「Q & A 」、「ひまわりの約束 」

・MUSIC VIDEO

「言ノ葉-Makoto Shinkai / Director's Cut-」

アルバム制作時のドキュメント映像に加え、秦 基博が語る“青の光景”制作ヒストリーや参加ミュージシャン(あらきゆうこ・皆川真人・鈴木正人)との対談ほか、今年9月青森県三内丸山遺跡にて行われた2015年唯一のワンマンライブのドキュメント&ライブ映像、さらには新海誠監督制作「言ノ葉」のミュージックビデオなど、見ごたえ満載、総尺60min.を超える特典映像を収録。

■通常盤(CD)AUCL 194

¥3,000(税抜) ¥3,240(税込)

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

田中久勝の最近の記事