今年4月から伐採届の様式が大幅に変更された。

 伐採届というのは、林業などで立木を伐採する場合、事前に地元の市町村に森林所有者などがその予定地の状況や伐採計画、および伐採後の造林計画などを届け出るものだ。

 もっとも、これまではほとんど紙の上だけのもので、行政窓口も書式とか連絡先などをチェックするだけで終わっていた。また伐採完了後、届けられた計画どおり再造林されたかどうか疑わしいことも多かった。

 ところが今回の改定では、伐採完了後、造林完了後も状況報告をしなければならないようになった。それも伐採者、造林者がそれぞれ伐採計画書、造林計画書を提出する。内容も細かく伐採方法や伐採率、集材方法、あるいは造林の方法、樹種、期間などを記さなくてはならない。

 届出違反があった場合は、100万円以下の罰金(森林法第208条)なども課せられる。

ウッドショックで盗伐増加

 なぜ、こんなに届出が厳しくなったのか。それは盗伐対策のためである。

 全国的に違法伐採が後を絶たない。とくに昨年から木材価格が高騰する「ウッドショック」が続いているが、これまで安すぎて儲からないと放置されていた山が金になると気づくと、他人の山であろうと勝手に伐採して木材を盗むのだ。もちろん素早く終わらせようと乱暴な施業をするので、山肌を荒らし土砂崩れを招いたり、水質汚染を引き起こしたりしがちだ。

 とくにスギ生産量日本一が30年続くと自慢する宮崎県では頻発しており、いったい市場に出てくる木材の何割が盗伐なのかと嘆かれる有様だ。

 その手口は様々だが、目立つのはごく小さな面積の森林伐採計画を届け出て、その許可を元に大幅に逸脱して周辺を広く伐るもの。私が見た宮崎県の例では、伐採届ではほんの30坪ほどの土地の伐採のはずが、周辺の他人の土地1ヘクタール近くを勝手に伐ってしまっていた。もちろん跡地は造林もしないで放置されている。

近県の連携やGoogleEarth活用

 そして最近では、ほかの各県でも広がり始めている。目立つのは九州だが、中四国や、東北北海道でも盗伐があったという情報が伝わってくる。

 そうした中で伐採届の記載を厳しくし事後の報告も求めたのは、わずかながらも一つの方策だろう。

 GoogleEarthを活用したモニタリングシステムも、試行を終えて4月より運用を開始している。撮影時期の違う衛星画像を突き合わせることによって、各地の伐採状況を把握する仕組みだ。伐採届の出ていない山が伐られていたら、違法伐採の疑いが濃厚になる。

 そのほかにも、少しずつ対策が取られている。宮崎県、鹿児島県、熊本県、大分県の九州4県は、これまで違法行為で立件されるなどした業者をリスト化し、情報共有する取り組みを始めた。

 宮崎県の盗伐被害者の会でも、県内に留まらず隣県の行政や県警と面談して、取り締まり強化を訴えている。

警察が取り締まらない不思議

 もちろん、これで違法伐採を十分に抑えられるかと言えば、まだまだ心もとない。そもそも伐採届を出さない・偽造して盗伐するケースもあるし、所有者が自分の山が勝手に伐られたことに関心を持たない場合もある。

 また警察の取り締まりが極めて弱いのも違反業者を増長させている。とくに宮崎県では際立っている。

 宮崎県警は、被害届さえ受理しないのである。また警察が示談を勧めたり、被害者を追い返したりするそうである。その様子については、これまでも様々なメディアに記してきた。

盗伐しても不起訴。その背景に透けて見える林業の闇を探る

宮崎の山は無法地帯か。盗伐被害者の声を聞く

横行する盗伐、崩れる山林 林業県・宮崎の闇

 ただ一時、盗伐業者の摘発が進んだ時期もある。

宮崎盗伐事件の潮目が変わった! 海外からも向けられる厳しい目

 ところが昨年よりまた被害者届の受理をしなくなり、また先に受理していたものもすべて不起訴になった。同時期に県警本部長の交代があったが、それが関係しているのかいないのか。

 それにしても宮崎県には、古川禎久法務大臣や、江藤拓(前)農林水産大臣など盗伐問題に関係の深い役職に就く国会議員もいる。彼らのお膝元で頻発しているというのも情けない話だ。

盗伐は産業の構造的腐敗

 盗伐を、単に「樹木の無断伐採」行為と表面的に捉えると「小さな窃盗犯」(すべての伐採木の価格を算定できないので、立件しても被害金額は数万円~数十万円程度)扱いで終わる。マスコミも一過性のニュース扱いになってしまう。

 しかし、ことは重大な環境破壊であり、盗伐された木材が堂々と流通に乗っているのだから産業の構造的腐敗だ。たとえば自動車会社の性能偽造とか検査不正、あるいは証券会社のインサイダー取引などと同じレベルで捉えるべきだろう。社会的なインパクトは大きいのだ。

 やはり必要なのは、役人が伐採届を机上で処理するのではなく、現場をチェックする態勢だ。伐採予定地の事前・事後を目で確認して、届け出どおりに作業を行ったことを証明することである。伐採届の監査や受理・不受理は、伐採業者に対して行政側の大きな権限となる。また担当官が林業に関する知識を持ち、常日頃から山林を巡回していたら、怪しい動きを早く察知できるだろう。

 小さな市町村では、それを行える人材がいないことを指摘されているが、林野庁や総務省では、県庁OBなど林業業務に詳しい人を地域林政アドバイザーとして活用する制度も設けた。また奈良県では、森林地帯を巡検し伐採届もしっかりチェックする「奈良県フォレスター」の育成を進めている。盗伐の抑制のため、やれることはまだまだある。

 今回の改正を受けて、現場の一層の奮起を促したい。