買い物に行く際にはエコバッグを持参するようになった。レジ袋が有料になったからだ。

 レジ袋有料化は、店側がレジ袋の経費を惜しんだからではなく、国の方針としてできるだけ使われないようにするためである。プラスチック製のためゴミとなっても分解されずに自然界に残るうえ、石油製品であることから脱炭素の流れにも合致しなくなったのだ。

 ほかにも世界的にストローやフォーク、スプーン、コップなどプラスチック製のカトラリーも減らす方向が強まっているのは、ご存じのとおり。その代わりに木製や紙製のそれらが使われだした。その方が物質循環しやすく、いずれも国連の定めたSDGs(持続的な開発目標)に則しているとされるからだろう。

 こうした世界的な時流自体に文句はない。ただ、それなら抜け落ちていませんか、といいたくなることがある。

割り箸はもったいないから生まれた

 それは箸だ。今や飲食店で出される箸はほとんどがプラスチック箸になってきた。いや家庭で使われる塗り箸と称するものも、安物の多くがプラ製。本来の塗り箸とは木製の箸にウルシなどを塗ってあるものだが、現実にはプラスチック製か、石油系の合成樹脂塗料のものが多い。

 飲食店も、かつては望めば割り箸も出してくれたが、最近はそれも減ってきたように思う。

 なぜ、自然素材である木製の割り箸を使わないのか。ゴミになっても自然分解するし、燃やしてもカーボンニュートラルである。焼却炉ではたいてい重油などで生ゴミを燃やしているが、そこに可燃物である割り箸が混ざっていれば重油の量も減らせるのではないか。

 割り箸は、2000年代に入ると使い捨てがケシカランと、急速にプラ箸に置き換えられた。しかし割り箸の原料となる木材は、建築材にならない間伐材や、製材時に出る端材である。そもそも製材する過程で出た端材をもったいないと無駄にしないようにするために生み出された。もったいないから、割り箸として使うことで有効利用しているのだ。

 つまり割り箸こそ、SDGsに合致したカトラリーではなかろうか。

コロナ禍でも衛生的な割り箸

 加えて、コロナ禍で衛生管理が厳しくなっていることからも、割り箸の有効性を見直すべきだろう。

 なお飲食店は、プラ箸にしたら洗浄の手間が増えて、コスト面でも貢献していないという調査結果も出ている。また寿命も、だいたい1年で交換だそうである。表面に傷が増えてくると、洗っても汚れが落ちにくいし、見映えが悪くなるからである。つまり交換の度に莫大なプラ箸が廃棄されている。

 逆に考えれば割り箸は、必ずしも一度で使い捨てしなくてもよい。自宅用なら洗えば十分長持ちする。我が家では、だいたい1週間ほど使う。昼と夜使うとすると、14回の使用だ。一人年間50膳ぐらいの消費だろう。無駄遣いとは思わない。

 そこで現在の割り箸の年間需要量を調べてみた。

 ところが、まったく見当たらない。統計が見つからないのだ。そもそも私が割り箸の本を出版した2007年時点で毎年の生産量などが示されていた。また13年に調べた際にも、簡単に見つかった記憶がある。森林・林業白書にも取り上げられていたが、今はどこにも記されていない。

激変!2013年の「割り箸はもったいない?」

 もし現状を知っている人がいれば教えてほしいが、2005年に259億膳で、これがピークだった。13年時に出た11年時の統計では、約195億膳。おそらく、その後も減り続けているだろう。昨年、今年は、コロナ禍で飲食店の休業も多くなったから、とくに減っているはずだ。

持ち帰り用途で増加の傾向

 しかしテイクアウト用や宅配では、割り箸の需要は増えている。たいていは中国製の安いシラカバ製や竹製だが、多少とも食事を豊かな気分にしたいと国産の高級割り箸を付けるケースも徐々に出てきた。割り箸販売会社には、SDGs絡みで使用を検討する問い合わせが増えているそうだ。

 国産割り箸は、スギ製やヒノキ製、それに北海道のトドマツ製が多い。いずれも木工品としても優れている。手に直接触れる木肌は水分を適度に吸収してくれるし、軽くてつかみやすい。

 価格は中国産より高いが、1膳数円程度にすぎない。レジ袋を購入する感覚なら、たいして負担感はないのではないか。

 気になるのは、このところ国産割り箸の生産量が落ちる一方で、価格が上がっていることだ。理由は原材料不足のためである。国産割り箸は、丸太を製材した際に出る背板などの端材や、細くて製材に向かない間伐材から作られる。ところがそうした木材は、今やバイオマス発電の燃料として引く手あまたなのだ。FITで価格が嵩上げされているから、割り箸用に出荷するより有利になってしまっている。しかし付加価値を付けずに燃やすことが環境に優しいと言えるのか。

 残念ながら製造元の減少が続く。国産割り箸の一大産地である奈良県吉野の製造元も、10年前の約3分の1、30社ほどまで減ってしまった。

 一方で、新たに国産割り箸の分野に参入する例も各地に出てきた。高級割り箸に特化して、贈答品や自宅遣い用という分野を開こうとするメーカーもある。「割り箸は使い捨て」のイメージから脱して、持続可能な社会を築き、人々に木肌の心地よさを伝えるアイテムとして見直すべきだ。

 今こそ、割り箸復権の時代ではないのか。