倒伏、根上がり……街路樹は根元に注目すべし

街路樹は見上げるだけでなく根元も注意!

街路樹がいきなり倒れた、という事件をよく耳にする。

それも、ケヤキやイチョウなどの結構な大木が多い。通常これらの樹木は、何百年もの寿命があるのに、植えてまだ40~50年程度で倒れるのだ。そのため通行人などが巻き込まれて大怪我をしたり亡くなった人も出ている。

調査によると、樹齢のわりに老朽化が進み、内部が空洞になっていたほかベッコウタケやサルノコシカケなどの腐朽菌が広がっているケースが多い。

なぜ若い樹木が弱るのか。原因はひどい剪定の仕方や車などの衝突による傷、さらに日当たりや空気の影響まで多岐にわたるが、忘れてならないのは根系だ。

意外と勘違いされがちだが、樹木の根はそんなに深く伸びない。高さ10mの木なら根も深さ10mくらいある……と思っている人もいるが、実際はせいぜい土壌のある1~2mくらい。大木なのに根は地中30cm程度しか伸びないという樹種だってある。その代わり広く横に伸びる。樹冠の3倍くらい遠くまで根を伸ばすことも珍しくない。

結局、根鉢(根系とそれが包む土)の大きさが樹木の倒れにくさを決めるのだ。

樹木の根は、本来地中浅く広がるもの
樹木の根は、本来地中浅く広がるもの

ところが街路樹では、根を拡げるスペースが極端に狭い。なぜなら、植樹枡と呼ばれる街路樹を植えるスペースが決まっているからだ。

植樹枡は、単独枡、連続枡、花壇型などいろいろあるが、歩道の幅によって決まってくるため、1辺が1m内外の場合が多い。深さもしれている。樹冠は直径3~4mに広がり枝葉を伸ばしているのに、その根元は極めて小さい。

その結果「根上がり」の目立つ街路樹が少なくない。街路樹の根が盛り上がって、周囲の歩道など舗装部分を持ち上げたり、逆に街路樹の植えられた枡からはみ出した状態だ。

植樹枡いっぱいに太り根上がりしている
植樹枡いっぱいに太り根上がりしている

そんな街路樹の根上がり現象を調査したのが、京都府立大学大学院博士課程の瀬古祥子さん。京都市内の通り別に街路樹2340本(イチョウ、トウカエデ、ユリノキの3種に限定)の根上がり状況と、樹木の幹周囲や植樹枡の形状や大きさ、土質、舗装の種類などを調べて解析した。

それによると、通りによっては5割を越えるほどの頻度で起きていた。部分的(河原町通り四条~五條間)では8割近かった。少ないところでも1割近く、多くが4割に達していたという。

根上がりがよく起きているところは、まず樹木が大きいこと、それに比して植樹枡が小さいことが調査から浮かび上がる。また日当たりがよく樹木の成長がよいところや、植樹枡の土が柔らかい有機質土や砂質土ほど根上がりしやすい。また水位が低いほど根上がりする可能性が示された。

「植樹枡の周囲の歩道や車道の下は、たいてい建設残土などを入れて堅く撞き固められています。また水道管やガス管など地中埋設物のスペースも設けられているので、根が広がれないのです。また地表は舗装でほとんど水を通しませんが、地下水位が高いと根腐れを起こしやすいし、低ければ水分の吸収が十分にできません」

日本唯一? 街路樹研究に取り組む瀬古祥子さん
日本唯一? 街路樹研究に取り組む瀬古祥子さん

街路樹の根上がりがただちに倒伏につながるわけではないが、関連はあるだろう。根鉢が小さければ重心が高くなるだけでなく、樹木の健康にも響く。もちろん根上がりが歩行の邪魔になり危険という点も留意しなければならない。

全国的に街路樹の根上がりや倒伏が問題となり、その対応策として大きくならない低木樹種に植え替える動きがある。

また都市樹木の根上がりを防ぐ「根系誘導耐圧基盤」という道路づくりも登場している。道路下の土層を改変するもので、大粒径の粗骨材をかみ合わせて上部からの圧力に耐えられる構造ながら、骨材の隙間に生育助材を入れて、根が自由に伸長できる空間を確保するのだ。

ただ、どこの自治体も財源不足。街路樹関連の予算と言えば剪定するのが精一杯だ。これらの対策が、全国の街路樹のある歩道に普及するには長い期間がかかるだろう。

日本全国に街路樹は約675万本あるという。それらのうち健康的に根を伸ばしているのは何割くらいだろうか。人は木陰や景観を求めて街路樹にも大木を期待する声があるが、樹木の立場からすると、地上は梢や枝を伸ばしたら刈り取られ、地下は狭い空間に押し込められるのでは、さぞかし窮屈だろう。