違法・グレー木材の締め出しはエンドユーザーから

ボルネオの熱帯雨林で切り捨てられた木々

今年の6月末に、ボルネオ島サラワク州ので先住民の運動家ビル・カヨン氏(43)が暗殺された。

日中、車で信号待ちしていたところ、ショットガンで窓越しに撃たれたという。カヨン氏は、野党・人民公正党(PKR) の幹部であったが、先住民族の土地所有権を擁護する運動を展開するダヤク人協会で活動していた。州警察本部特捜班は、後に容疑者6人を逮捕したと発表したが、詳細は不明のままだ。

サラワク州では昨年5月にも、人民公正党のテオ議員がバットで襲われ骨折する事件が起きている。こちらの事件の犯人は、まだ捕まっていない。

このニュースを知ったとき私が感じたのは、まだ、こんな事件が起きているのか……ということだ。

1980年代、私が初めて訪れた海外は、ボルネオ島だった。目的は、野生のオランウータンを観察することだったが、何より熱帯のジャングルに対する憧れがあった。そのため伐採キャンプに居候しつつ毎日ジャンクルに通ったわけだが、結果的に目にしたのは、生きたオランウータンよりも丸太を満載した巨大なトラックだった。その木材はほとんど日本に輸出されると説明を受けた。

それを機に、私はボルネオの熱帯雨林を巡る問題に眼を向けるようになった。伐採反対運動も広がり、ボルネオでは先住民が林道を封鎖する事件も続発した。しかし、それに対して警察や軍まで出動して実行者の逮捕が相次ぎ、さらに運動家に対する暴力や暗殺事件まで起こるようになった。

だが、世界的に熱帯雨林の破壊が問題となり始め、地球サミットでも取り上げられた。そして、少しずつだが野放図な伐採は規制されるようになった。森林資源そのものが底をついてきたという事情もあって、先住民と伐採会社の対立は下火になった……と思っていたのだ。

それなのに、30年も後戻りしたかのような事件が起きているとは。

この事件の裏には、州政府が木材会社に伐採権を乱発している事実がある。先住民は、昔からその森を利用してきたことを証明しないと権利を主張できない。ときには先住民が暮す森を「人は住んでいない」と環境影響評価することもある。

つまり伐採は“合法的”なのだ。先住民側が州政府と会社を提訴しても、係争が続く間は伐採が止まらない。裁判が長期化すれば、その間に貴重な木は全部伐られてしまう。

日本の企業が伐採している、日本が木材を買うから伐られる、という批判がされたこともあった。しかし、現在はもっと複雑だ。

たしかに以前は日本の商社などが直接伐採を進めていた。やがて現地の会社が伐採した丸太を購入するようになった。そして現在は、現地の会社が生産した合板等の製材品の輸入に変わっている。

おかげで、熱帯雨林の伐採と日本の関わりが見えにくいのである。

それでもサラワク州から輸出する合板の59%が日本向けだという。そして日本の輸入合板の46%はボルネオのサラワク州製。その中には、係争中の森林から伐り出されたものも含まれているはずだ。イギリスの王立国産問題研究所では、2013年に日本が輸入する木材の約12%が違法である可能性を試算している。

やはり必要なのは、破壊的な手段で生産された木材を購入しないことだろう。生産側に自主規制を求めるよりも、購入側が厳しい目を向けて経済的に違法・グレーな木材を締め出すことだ。

国際社会は、違法伐採木材の輸入規制を進めてきた。欧米では少しでも疑義のある木材を輸入した会社には厳しく処罰対象にしている。

日本でも今年の伊勢志摩サミットの直前に「クリーンウッド法」が国会で可決した(発効は来年から)。だが、合法の基準は原産国の法令に適合していることで、登録業者を定めることになっている。しかし登録は任意であり、合法性の確認は努力義務に過ぎず、罰則もない代物だ。これではグレーな木材に対応できるように思えない。

日本の企業にも、仕入れ先の現地を訪れて森林状況を調査するなど努力しているところはある。しかし、全体として本気度が伝わってこない。

かくなるうえは、木材・木材製品の輸入業者だけではなく、それらを使用する、よりエンドユーザーに近い建築業者、そして消費者自身が使われる木材の出所に厳しい眼を向けられないか。すでにサラワク産の合板を忌避するゼネコンや住宅メーカーは出てきている。違法・グレー木材を使った建設業者や施主を公表するような仕組みをつくったら、もう少し真剣になるかもしれない。