ハンターが減ったから獣害が増えた? いえ反対です。

シカやイノシシなど有害獣の駆除数は増えている。

近年、獣害の増加が農山村の重大問題になっている。

イノシシ、シカ、カモシカ、サル、それにクマやカラスまで野生動物による被害が増えているのだ。とくに農林業における損害は大きい。一夜にして収穫前の田畑の作物が荒らされ全滅する。林業にいたっては、40年50年と育ててきたスギや檜の樹皮をはがれて、木材としての商品価値を失う……。

これらが遠因となって、農山村から人がいなくなると言われるほどだ。先祖代々の農地や山林を守ってきた住人の生活の糧を奪われ、何より生きがいを消失して、故郷を捨てるのである。

なぜ獣害が増えたのか。

その理由によく挙げられるのが、ハンター(狩猟者)の激減である。これまで有害駆除をになってきたハンターの人数が、過疎高齢化もあって激減している。具体的には、1970年に53万人、1990年に30万人いたのが、2010年度は19万人だ。しかも平均年齢は、60歳以上の割合が66%に上昇した。

たしかに、これらの数字を見ると、ハンターの激減は獣害の増加の大きな要因のように感じる。だから、ハンターの養成を後押しする施策が目立つようになってきた。

昨年5月に鳥獣保護法が改正されて、狩猟免許の取得可能年齢は20歳以上から18歳以上に引き下げられた。長野県のように「ハンター養成学校」を開設する自治体もある。また都道府県税である狩猟税も、2015年には一部を廃止する方向が決定している。一方で「狩りガール」と呼ばれる女性ハンターも注目されるようになった。

だが、ハンターが増えたら獣害は解決するのか。実は、意外な数字がある。

1990年と2010年の駆除数を比べると、シカは4万2000頭から41万5500頭と10倍以上に激増。イノシシも7万200頭から39万500頭へと5倍以上も捕獲している。ハンターの数と野生動物の駆除数は必ずしも相関していないのだ。

つまり狩猟者が減少したにかかわらず、駆除数はうなぎ登りに増えた。減少し高齢化したにもかかわらずハンターは、大奮闘していると言ってよいだろう。なお狩猟と言っても、全員が銃を使うのではなく、わな猟が増えている。

もちろん行政の後押しもある。これまで禁止だった雌シカの捕獲を1999年に都道府県知事の判断で許可できるようになった。さらに2007年には完全に解禁した。有害駆除なら年間を通して可能にして、禁猟期間も事実上なくなった。

なぜ、これほどハンターが活躍し駆除数が増えたのに、獣害は多発しているのだろう。2010年の獣害額は239億円と過去最悪を記録している。これも届け出のあった分だけで実態を示しておらず、現実はその5倍、1000億円以上と言われる。

答は簡単。被害の元となる野生動物が、駆除される数をはるかに超えて増えているからだ。

全国の推定生息数(2011年)は、イノシシが約88万頭、シカは約325万頭。20年前の数字と比べると約3倍と約7倍である。

では、対策はあるのか。

もちろん完璧な手立てなどない。増加を抑えるために冬の餌となる農業廃棄物を減らす、確実な防護柵の設置などなどやるべきことはいっぱいだ。

私は、一つの方策として、ハンターの養成とともに報償金の増額を提案したい。

人数が減ったのに駆除数が増えた理由の一つに、報償金があるからだ。自治体によってまちまちとは言うものの、シカ1頭の駆除で1~数万円、イノシシやサルはさらに高いケースが多い。

もともと有害駆除は猟友会のボランティアに近かった。現在の報償金も、狩猟にかける経費を考えるとあまり割に合わない。しかし、額を数倍にしたらどうだろう。十分報われる金額になれば、狩猟に若手など新規参入を考える人も増えないか。そして中山間地で暮らす人々のの収入源となれば、頑張る動機にもなる。また田舎暮らしを希望する人にとっても新たな職になるかもしれない。

農地や山野を囲む全長数キロにわたる長大な防護柵を見かけることがあるが、柵は一か所でも破られると中に入った動物にとっては食べ放題。そして柵は必ずと言ってもよいほど破られる。その設置にかける費用対効果はどれほどのものだろう。

それよりも駆除の報償金を高めて、月に数頭仕留めれば生活がそこそこ送れる程度の収入になれば、狩猟が中山間地の副業として根付かないか。獣害を抑えると同時に、農山村で生きる道が開かれる。移住者も増やせるかもしれない。