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「『R-1』には夢がない問題」が浮上した要因、「敗者復活」からの優勝がないことも理由か

田辺ユウキ芸能ライター
(提供:アフロ)

「敗者復活」からの下剋上優勝はゼロ

ピン芸のナンバーワンを決める『R-1グランプリ2023』決勝戦が3月4日に開催される。

今回のファイナリストは、きょん(コットン)、都留拓也(ラパルフェ)、永見大吾(カベポスター)、田津原理音、サツマカワRPG、寺田寛明、Yes!アキトの7名。そして、決勝戦前日から当日にかけておこなわれる敗者復活戦を勝ちあがった1名を加えて優勝が争われる。

『M-1グランプリ2022』王者のウエストランドが同決勝戦の漫才中に言い放った「『R-1』には夢がない」という言葉がすっかりキーワード化した、今大会。『R-1』には夢があることを証明するのにうってつけの存在は、敗者復活枠のエントリー者ではないか。

2009年、2010年は「サバイバルステージ」、2015年からは「復活ステージ」の名称で実施されている敗者復活戦。2009年は岸学、夙川アトム、2010年は山田與志(COWCOW/2013年に「善し」へ改名)、2015年はヒューマン中村、マツモトクラブ、善し、2016年はマツモトクラブ、ルシファー吉岡、サンシャイン池崎、2017年はおいでやす小田、紺野ぶるま、サンシャイン池崎、2018年はマツモトクラブ、せいや(霜降り明星)、2019年は岡野陽一、マツモトクラブ、2020年は大谷健太、2021年はマツモトクラブ、2022年はYes!アキトが返り咲いた。

ただ敗者復活からの優勝はこれまでひとりもなく、最高位は2015年のマツモトクラブ、2017年のサンシャイン池崎、2020年の大谷健太の2位となっている。

『R-1』に夢がないとされる要因は、勝者がブレイクできるかどうかだけではなく、『M-1』のように敗者復活からの優勝がないことも理由なのかもしれない。「下剋上優勝」はドラマとしてもキャッチーなところがある。だからこそ『R-1』史上初の快挙達成も、この「夢問題」に終止符を打つためのひとつのポイントであるようにも思える。

こたけ正義感、たくろう赤木、エルフ荒川らに注目

今回の敗者復活にエントリーされたのは23名。TVerのアプリ内で公開される復活ステージのネタ動画を鑑賞した視聴者の投票によって、決勝進出者1名が決まる。

では、23名のなかで注目芸人は誰なのか。

最有力候補に推したいのは、こたけ正義感。現役弁護士という経歴を生かし、実際にある「おかしな法律」などを紹介。たとえば「民法742条 次の場合は、婚姻は無効となる」というお題が書かれたフリップを出し、「人違いの場合」という答えに対して「どういう状況⁉」と悲嘆にくれるように叫ぶ。こたけ正義感にしかできない法律を扱ったピン芸で、2022年の『第43回ABCお笑いグランプリ』では準優勝に輝き、バラエティ番組『ゴッドタン』(テレビ東京系)2022年6月26日放送回の今のバラエティで売れそうな芸人を特集する「この若手知ってんのか!?」でも第2位に選ばれた。

自身のYouTubeチャンネル『こたけ正義感のギルティーチャンネル』も好評で、企画「M-1のネタ全組リーガルチェックしてみた」ではファイナリストたちの各ネタが法律的に問題ないのかを説明してみせた。

スタイルである「フリップ芸」は『R-1』では激戦区だ。ただ、あくまで準決勝を観る限りだが今回の決勝戦では用紙を使ったフリップ芸はそれほどないと予想される。手法的に見慣れる感じもないことから、決勝進出を果たせば大逆転劇は十分にあり得る。

もうひとり飛躍を期待したいのが、赤木裕(たくろう)だ。コンビでの漫才時では、相方の木村バンドの振りに対してオドオドとした態度で反応するなど、ぎこちない間合いが特徴的。ピン芸でもたどたどしさで笑いを起こしている。テンパりすぎてどんどん自己完結へと向かっていく話の内容と様子が抜群におもしろい。

準決勝でも爆笑をあつめたが、全国的にはそれほどまだ知られた存在ではなく、そういった部分の新鮮味も追い風になるかもしれない。

荒川(エルフ)も準決勝では、持ち前のギャルマインドとポジティブさで突っ走りながら、意外な角度から飛び道具を放りこんでくるなどして瞬間最大風速級の笑いが起きていた。「夢がない」というネガティブな印象が植えつけられた『R-1』を前向きなものに変えるのは、もしかすると荒川のような「陽キャ芸人」なのかもしれない。

ほかにも、2022年に『M-1』と『THE W』の2大会でファイナルへ進出した誠(ヨネダ2000)、ピンで出場した『IPPON女子グランプリ』(2022年/フジテレビ系)でも終盤の猛追が印象的だったイワクラ(蛙亭)、2021年大会で決勝進出を経験した森本サイダー、ブチギレ芸で知られるたかの(きしたかの)、熱狂的な支持を集めながらも1月にコンビを解散した元コウテイのシモタ、圧倒的な身体能力がピンネタでも垣間見ることができる山口コンボイ(ケビンス)など復活候補が目白押し。

「『R-1』ドリーム」は誰がつかむのか。敗者復活の行方にも注目したい。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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