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錦鯉に密着『情熱大陸』、視聴者が気になった渡辺隆のTシャツと本棚

田辺ユウキ芸能ライター
(写真:Paylessimages/イメージマート)

1月9日放送『情熱大陸』(TBS系)に登場したお笑いコンビ・錦鯉。同回では、『M-1グランプリ2021』で優勝を飾ったその前後に密着。番組側も「まさかこんなことになるなんて…」とテロップを出し続けたように、錦鯉は『M-1』で期待以上の結果をたぐりよせた。

番組では、ボケ担当・長谷川雅紀の貧乏エピソード、盟友・タカアンドトシに祝福されて感無量の錦鯉の姿、『M-1』ファイナルラウンドで披露したネタ「サルを捕まえる」のブラッシュアップの工程などを記録。

一方、視聴者の興味を引いたのがツッコミ担当・渡辺隆が着ていたTシャツと自宅の本棚だ。このふたつから、彼のコアなセンスがうかがえた。

渡辺隆のTシャツが『新幹線大爆破』と「勝新太郎」

まず、インパクトが強かったのがTシャツの好みだ。

2021年10月29日の初単独ライブ時に着用していたのが、映画『新幹線大爆破』のTシャツだ。同映画は1975年に日本公開されたパニックムービーで、高倉健、千葉真一らが出演。走行速度80キロを下回ると爆弾が作動する新幹線を舞台に、巨額の身代金を要求する犯人と、鉄道職員や警察らの攻防を描いている。

渡辺はこのTシャツを着ての打ち合わせを終え、番組スタッフに「僕らのネタ合わせ、いつもこんなんですけど張り合いがないですかね」と問いかける。確かに話の内容自体は淡々としていた。しかし『新幹線大爆破』のTシャツを堂々と着こなし、脚を組んで分厚い足裏をさらす渡辺の様子は、画的に十分、ネタになるものだった。

勝新太郎の名前と姿が大きくプリントされたTシャツも印象的。これは、番組スタッフが自宅に訪れたときに着用。彼の父親が、親子関係について「(隆のことは)阿吽の呼吸で、顔色を見ればわかる」と多くを語らずとも調子をつかめると明かした場面だ。

Tシャツのなかの勝新太郎は、1962年に始まった映画『座頭市』シリーズで盲目の侠客を演じているものだった。「隆の様子が雰囲気でわかる」という父親のその言葉は、気配を敏感に察して敵に斬りかかる主人公・座頭市にも結びつく(もちろん、これはこじつけになるが)。

本棚の上段には漫画『あしたのジョー』

番組スタッフが渡辺の自宅に訪問した際、彼の自室も映し出された。見逃せなかったのは、本棚の漫画、小説、お笑い関連の書籍などのタイトルだ。

きっちりと押さえられていたのは、『MONSTER』(小学館)、『バクマン。』(小学館)、『ブラックジャックによろしく』(講談社)、『キン肉マン』(集英社)、『進撃の巨人』(講談社)、荒木飛呂彦作品など少年漫画のヒット作。『賭博黙示録カイジ』(講談社)で知られる福本伸行の作品、新井英樹の『キーチ!!』(小学館)も確認することができた。

手の届きやすい本棚上段に並んでいたのは『あしたのジョー』(講談社)だ。不屈の精神で何度でも立ち上がるボクサーの物語は、挫折を繰り返しながらもお笑い芸人として諦めがつかず、そして『M-1』最年長優勝に輝いた錦鯉のヒストリーとシンクロするものがある。

アウトロー系漫画から歴史物まで

渡辺らしさがあったのは、「得体の知れない犬野郎ども」のキャッチコピーが表紙に躍る、人道外れた者たちを描いたルポ漫画『まんがどうかしている悪人たち 壊れてる人』(コアマガジン)や、風俗業界から一発逆転をかける男の物語『どぶ』(日本文芸社)が置いてある部分。

渡辺の本質は、実はこういったコアなアウトロー作品にあるのではないだろうか。

歴史物も好きなようで、漫画『信長』(小学館)、小説『竜馬がゆく』(文藝春秋)も揃えていた。

そのほか、美術書『ダ・ヴィンチ 天才の仕事:発明スケッチ32枚を完全復元』(二見書房)、DVD『喰いしん坊!2〜大喰い苦闘篇〜』(GPミュージアムソフト)など、どういった経緯で手に入れたのか気になるタイトルも数多い。

ダウンタウンをリスペクト、本棚には『VISUALBUM』

お笑い関連では、14歳の少年の葛藤を綴った千原ジュニアの自伝的小説『14歳』(講談社)、同じく千原ジュニアの大喜利集『千原ジュニアの題と解』(太田出版)、小林賢太郎と升野英知(バカリズム)のネタ本『大喜利猿』(河出書房新社)など。大喜利プレイヤーとしても評価が高い渡辺。このあたりの書籍は欠かせないところだろう。

そしてダウンタウンをリスペクトする渡辺だけに、取材カメラの映りがぼんやりしていても、松本人志のDVD『HITOSI MATUMOTO VISUALBUM』(よしもとミュージックエンタテインメント)の存在はしっかり認識できた。

渡辺は、2021年発売の錦鯉の自叙伝『くすぶり中年の逆襲』(新潮社)でも、ダウンタウンの発想力について「参考にしたくても、あそこまでの発想はできないよ。『笑ってはいけない』シリーズとか、『板尾の嫁』とか、他にも『ごっつええ感じ』のコントとかね。よくああいう発想ができるなと思う。特に松本さんの着眼点、よい意味での「ずれ方」は独特だしね」と憧れについて語っていた。

松本の傑作『VISUALBUM』も、きっと何度も鑑賞したのではないだろうか。

「押していいかどうか分からないボタンは、押せばいい」

Tシャツや本棚を見ると、渡辺の趣味が王道からディープなものまで、かなり幅広いことに気づく。

『情熱大陸』の終盤、長谷川が「高校の頃、よく分からないボタンを押したらデカいシャッターが降りてきて先生に怒られた。はたから見たら自分は頭がおかしい。でもなるようにしかならないし、できないことはできないけど、一生懸命やっていく」と思い出を絡めながら、今後について語った。

そのとき渡辺は「それでいいと思いますよ、俺たちは。押していいかどうか分からないボタンは、押せばいいんだよ」と、うっすら笑みを浮かべた。長谷川は「それは危ない」とツッコんだ。しかしアウトロー系作品も鑑賞し続けている渡辺にとって「笑い」とは、そういう「危なさ」のことなのかもしれない。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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