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錦鯉の『M-1』最年長優勝で到来する、「おじさん芸人」の時代

田辺ユウキ芸能ライター
(写真:アフロ)

オール巨人が錦鯉を高評価「50歳でも進化できる」

12月19日に開催された『M-1グランプリ2021』(ABCテレビ・テレビ朝日系)は、錦鯉の優勝で幕を閉じた。

ボケの長谷川雅紀は1971年生まれの50歳、ツッコミの渡辺隆は1978年生まれの43歳。過去の『M-1』の最年長優勝は、2017年大会のとろサーモンの久保田かずのぶ、村田秀亮の当時38歳(1979年生まれ)。錦鯉は大幅にその記録を更新。ファーストラウンドのネタ終わりの審査員評ではオール巨人が「50歳でも進化できる」と、初決勝で4位だった2020年大会からの成長を讃えた。

「中年の星」と言われる錦鯉の優勝は多くの人に勇気を与えたのではないだろうか。ちなみに2020年大会では、40代ユニット・おいでやすこがが準優勝。お笑い界では若手芸人が次々と台頭しているが、今大会をきっかけに「おじさん芸人」の時代が本格的にやって来そうだ。

実際、いくつになっても進化している「おじさん芸人」はたくさんいる。

「お笑い界のBIG BOSS」になれるか、46歳のTAIGA

「おじさん芸人」のブレイク候補の筆頭格は、46歳のピン芸人・TAIGAだ。『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の1月21日放送回「40歳過ぎてバイトやめられない芸人」で注目され、じわじわと光が当たるようになってきた。

バラエティ番組に出演しても、家族のことを考えるとすぐに号泣してしまう純情キャラ。11月10日放送『バチくるオードリー』(フジテレビ系)では、妻への感謝と謝罪の気持ちを込めた歌詞を披露して涙腺決壊。TAIGAと付き合いが長いオードリー・若林もつられて大泣きした。

オードリー、ぺこぱら多くの芸人から慕われる兄貴肌。ルックスは、リーゼントヘアに赤いジャケットで、その派手さはプロ野球の日本ハムファイターズ・新庄剛志監督を彷彿。新庄監督はバリ島生活でその気前の良さから「BIG BOSS」と呼ばれたが、TAIGAも人気獲得で「お笑い界のBIG BOSS」になれるか。

今でも若手にボコボコに負ける、ヘッドライト

2000年結成のヘッドライトは、48歳の和田友徳と町田星児によるコンビ。『M-1グランプリ』には第1回から出場し、10回挑戦して準決勝進出は7回。2005年からは5年連続でセミファイナルへ進んだ実績を持ち、初期の『M-1』ファンには知られた存在だ。

「私が和田です」の決め台詞が一部でおなじみの和田は、10月11日放送のバラエティ番組『なるみ・岡村の過ぎるTV』(ABCテレビ)に出演した際、現在は駐車場でのバイトで生計を立てていることを明かし、「仕事ができ過ぎて、お金の管理を任されている」と胸を張った。

同番組内では「今でも、劇場で若手にまじってネタをやってボコボコに負けるときがある」と周囲にイジられていたが、そうやって若手に挑み続ける姿は、一発逆転を諦めていない気持ちのあらわれだ。

「関西のファッションモンスター」全国進出なるか

54歳のティーアップ・長谷川宏は、『なるみ・岡村の過ぎるTV』に出演するたびにTwitterでトレンド入りを果たしている。全国的に、もっとおもしろがられても良い芸人だ。

長谷川は、同番組内でシーズンごとに企画される「オシャレ過ぎる長谷兄 NGKコレクション」に登場。抜群のスタイルとファッションセンスを披露しており、それがきっかけで2021年8月にブランドも立ち上げた。

関西では「長谷兄」の愛称だけではなく、「関西のファッションモンスター」の異名もとっている。

40代コンビのTOKYO COOL、なすなかにし

45歳のカンカン、前すすむによるコンビ・TOKYO COOLは今年、勢いがついた1組だ。所属事務所は錦鯉と同じSMA。結成は2015年で、『M-1』は3回戦までが最高。2021年大会は2回戦で敗退している。しかし息のあったネタは「ひょうきん漫才」と言われており、おっさん臭さをうまく生かして『M-1』決勝を狙う。

40代コンビ・なすなかにしも盛り返してきている。若手時代は実力派のしゃべくり漫才コンビとして、『上方お笑い大賞』の新人賞、『ABCお笑い新人グランプリ』の新人賞などを受賞。『M-1グランプリ』は2003年から5年連続で準決勝進出。関西で成功をつかみながら東京進出でつまずき、2010年の改名(「いまぶーむ」)で認知度を落とす結果に。名前を戻したのが2011年。最近は情報番組『ラヴィット!』(TBS系)などに出演。再浮上の気配が漂っている。

中年が全力でバカをやることのおもしろさ。紆余曲折のドラマ。『M-1グランプリ2021』の錦鯉のネタにはさまざまな人生経験が乗っていた。錦鯉は2022年、さらに売れることになるはず。その流れで「おじさん芸人」が続々とブレイクするかもしれない。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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