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インディアンス・きむ、笑い飯・哲夫に「後輩の中で一番おもんない」と言われた男が『M-1』王者を狙う

田辺ユウキ芸能ライター
(写真:アフロ)

インディアンスの猛獣使い、きむ

『M-1グランプリ2021』の決勝に進出したインディアンス。初めて決勝進出を果たした2019年大会は9位。2020年大会は敗者復活戦を勝ち上がり、トップバッターをつとめて7位。3年連続の決勝進出となった今大会では優勝候補の一角に挙げられている。

インディアンスの漫才の大きな特徴は、田渕章裕がすさまじい勢いでボケまくるところ。2020年大会では、審査員・松本人志(ダウンタウン)も「『うるさいわ』の(ツッコミの)タイミングが絶妙。我々が『うるさいわ』と思うタイミングと一緒で。その瞬間からどんどんノッていって(胸につけている)花が開いていく」とテンポの良さを褒めた。

スピーディーな漫才は、客を置いてきぼりにすることもある。しかしツッコミ・きむが、的確な受け答えでその漫才に客をちゃんと同乗させ、さらに田渕のテンションも加速させていく。今回の『M-1』の結果は、猛獣使いのように田渕をコントロールする、きむの手腕にかかっているのかもしれない。

笑い飯・哲夫「後輩で初めてのおもんないやつ」

コンビの命運を握るきむ。だが、YouTubeチャンネル『インディアンスのぃやぁっとうー!TV』の2021年5月8日更新回「尊敬する先輩・笑い飯を語り尽くす!」では、笑い飯・哲夫からかつて酷評を浴びた、ほろ苦いエピソードが明かされている。

同回で、田渕は哲夫について「『オールザッツ漫才』(毎日放送)のときも収録が終わったら廊下に立っていて、ひな壇に座っていた芸人が帰るとき、一人ひとりに『ありがとうな、あそここういう風にやった方が良かったな』『今日ちょっとフリが少なかったな。今度、振るわな』と、全員のことを覚えていて話しかけてくれる。こんな先輩いますか? いかつい(すごい)なって」とその優しさに感銘を受けたという。きむも「出たての若手に対して、おもしろがるセンサーが早い」と感覚の鋭さに驚いたと語っている。

田渕曰く「哲夫さんは、どんなやつでも絶対におもしろいところはある(と考えている)」とのこと。そうやって若手を温かく見守る哲夫が唯一酷評した相手が、きむだった。

きむが哲夫に初めて会ったのは、インディアンス結成前。とろサーモン・久保田かずのぶに連れられ、哲夫をまじえて食事をしたときのことだった。

哲夫は、きむと喋る前から「こいつ、後輩で初めてのおもんないやつ」と感じたそうだ。そして久保田に「木村(きむ)ってやつだけは絶対に可愛がるな」と忠告。哲夫が後輩のことをそんな風に言ったのは、「後にも先にもそのときしかない」と田渕は番組内で話している。

きむの成長に、哲夫も感動「お前、おもしろくなったな」

先日、筆者が笑い飯にインタビューしたとき、そのエピソードについて哲夫に尋ねた。

哲夫は「もちろんノリで言ったところもあるんですけど、でも確かに今まで会った後輩の中で一番おもんない空気が出ていたんです。あくまで僕の嗅覚なんですが。あそこまでおもんない後輩は初めてでしたよ」と笑いながら振り返ってくれた。

そして「久保田が可愛がっていると聞いて、『あかんで』と本当に言いました。まったくおもしろみがなかったですから。芸人の雰囲気ではない気がしました。まあ、僕はそういうやつをイジるのが好きではあるのですが」と、違う意味できむのことを目にかけていたようだ。

きむは2009年にインディアンスを組み、少しずつ力をつけていく。哲夫は「インディアンスとして再会したとき、ちょっと感動したんです。『お前、おもしろくなったな』って」と彼の成長を心から喜んだ。

強烈な個性とスター性を放つ田渕。一方、きむは決して派手なタイプではない。『M-1グランプリ2021』の決勝記者会見でも、司会・川島明(麒麟)から「きむさんは今年、ほくろを取りました」と話題を振られたが、その受け答えをしたのも田渕だった。

かつて哲夫から「今まで会った後輩の中で一番おもんない」と言われたこの男。だが、そんな彼が今年の『M-1』で王者に輝き、「今もっともおもしろい芸人」になるかもしれない。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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