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V6、最後のテレビ出演『学校へ行こう!2021』が感動できた理由とは?

田辺ユウキ芸能ライター
(写真:アフロ)

2021年11月1日の解散を目前に控えたV6が10月26日、3時間にわたる生放送特番『学校へ行こう!2021』(TBS系)で「最後のテレビ出演」を終えた。

『学校へ行こう!』は、リニューアルもはさんで1997年10月16日から2008年9月2日まで放送されていたバラエティ番組だ。そのタイトル通り、企画の中心となったのはV6と学生たちの関わり合いである。屋上に立った生徒が、校庭に集まった在校生に向けて気持ちを叫ぶコーナー「未成年の主張」はじめ、思春期特有の悩みを抱える若者をメンバーが応援。そのやりとりが笑いや涙をあつめた。

世代意識が強いV6にぴったりの番組

当時のジャニーズのグループは、SMAPが『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)でアイドルでありながらコントにも挑戦する積極果敢さと革新性を発揮し、KinKi Kidsは『LOVE LOVE あいしてる』(フジテレビ系)で吉田拓郎ら名うてのミュージシャンを交えながらトーク力や音楽的素養を向上。それぞれが、自分たちらしいスタイルで番組を展開していた。

V6は『学校へ行こう!』開始時、森田剛、三宅健、岡田准一が10代だったこともあり、番組に出演する中高生と同じ目線に立って交流。一方で坂本昌行、長野博、井ノ原快彦は年齢が上ということでお兄さん的な眼差しと懐の深さを見せた。

そもそもV6はComing Century(森田、三宅、岡田)、20th Century(坂本、長野、井ノ原)という世代別のユニットも組み、違う持ち味をあらわしていた。V6に備わっていた世代意識の強さも考えると、『学校へ行こう!』は彼らにぴったりな番組だったのではないだろうか。

名物企画「東京ラブストーリー」メンバーの変化

今回の『学校へ行こう!2021』で興味深かったのは、そういった世代、年齢、時代性にクローズアップしていたところである。特番には、以前番組をにぎわせた個性的なキャラクターたちが再登場。さながら「同窓会」のようだった。いずれの人物からも「それぞれが過ごしてきた時間の流れ」が感じ取れた。

名物コーナー「東京ラブストーリー」でかつて恋愛を繰り広げた面々は特に印象的だった。キザな男性・マサーシーは昔に比べて首回りが弛んだことをツッコまれながらも、「だけど今は会社の部長なんだよ」とキャリアを積み重ねていることをアピール。口癖がそのまま愛称になった男性・だぜは、愛妻とのあいだに子どもが3人誕生。しかし、ちょっぴり後退した頭髪をイジられる。バリバリのギャルだったサオリは「40歳でその髪の色は…」と言われるほど派手さが残っていた。

当たり前だが、時間の経過と共に見た目や自分を取り巻く環境は変化するもの。逆に、変わらないものだってある。「東京ラブストーリー」のメンバーからはそれらのことがひしひしと伝わってきた。ミホが出演できなかった理由が「仕事が忙しい」というのも、当時と現在の状況の違いをうかがわせた。

尾崎豆「実はイノッチより2歳上」

放送当時、5歳でありながら浜崎あゆみを彷彿とさせる格好をしていたことから「ちびあゆ」と呼ばれた女性も今回出演。26歳になった彼女は、ボディビルダーとして活動しているそうだ。あの頃の小さな姿からは想像できなかった未来図である。

ちびあゆは、森田から「覚えてる?」と話を振られて、一緒に組んでいたユニット・GOタリモ&ミニカレーの楽曲『恋の400Mカレー』(2001年)のダンスを披露。そしてふたりは延々と踊り続けた。どれだけ時間が経っても忘れることがない、その振付。このちびあゆのパートも、時間の経過を実感させながら、変わるものと変わらないものがあることに気づかせた。

尾崎豊をリスペクトする男性・尾崎豆はもっとも象徴的だった。彼は番組出演時、尾崎豊の名曲をパロディ化した『15の昼』を歌って笑わせていた。その曲内容が学校生活をもとにしていたことから、誰もが豆は10代であると考えていた。

しかし特番では、彼が出演当時アラサー(28歳)だったことが判明し、V6もその事実に驚がく。豆は「あと3年で50歳」、「イノッチ(井ノ原)の2つ上」と現在の年齢をネタにして歌いあげ、「(年下のイノッチとの)この差はさすがにきつい」と哀愁漂うメッセージを投げかけた。悲喜こもごものムードのなか、豆の感情の吐露を聞いた岡田は想いを込めた拍手を捧げていた。

V6とみのもんたの再会から感じたこと

レギュラー放送時に「校長」として出演していた、みのもんたのサプライズ出演は「時間」というテーマを大きく意識させた。

V6とみのが数年ぶりに会ったこと。視聴者が記憶しているみのの姿とはちょっと変化していたところ。そして、みのの「26年間、本当にお疲れさまでした。ありがとう」というV6への労いと感謝。そこにはいろんな意味での「時間の流れ」が詰まっていた。

何よりこの特番自体、V6というグループがたどってきた「時間」を表現していた。井ノ原が最後、「今まで関わってくださったスタッフさんがみんな(特番に)勢揃いしてくれた。第1回目のときの楽屋と今日はまったく同じだったので、あのとき若かったスタッフのみんなから『俺たちだって後がないんだからお前ら頑張れよ』とケツを叩かれたことを思い出しました」と放送開始時を振り返った。

その回想は、視聴者も含めてみんな同じように時間を過ごし、歳を取ってきたことを認識させるものだった。私たちは、V6と共にここまで歩んできたのだ。

過ぎた時間が巻き戻ることはない。11月1日を過ぎると、もうV6はいなくなってしまう。笑いがたっぷり詰まった特番を観ながら、そんなことを考えてちょっと切ない気持ちに襲われた。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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