プロ野球公式記録配信の危機と日本野球機構の解体<前篇>

果たして公式記録配信の行方は?
果たして公式記録配信の行方は?

一般社団法人日本野球機構(NPB)は去る7日、プロ野球公式記録配信システム「BIS」を作動させられないことが判明したため、17、18日の日本代表チーム・侍ジャパンと広島、西武との間で行われる強化試合および23日から始まるオープン戦は記録を配信しないと発表した。3月29日に始まる公式戦から記録を配信するとしている。

本件、読者がご覧になっているYahoo!でも、オープン戦の記録を閲覧できない事態であり、2ch.あたりもだいぶ賑わしているようなので、状況を整理してみたい。

「BIS」とは、ベースボール・インフォメーション・システムの略。1988年、大手コンピュータ会社・日本IBMと大手広告代理店・電通の提案により、それまでスコアシートなど紙で管理されていた日本プロ野球の記録を、「記録の神様」と呼ばれたBISデータ本部初代室長、故・宇佐美徹也氏の主導の下、電子化。IBMのスポンサーにより「IBM-BIS」として運用を続けていた。

当初は、独立したデータベース(以下「DB」とする)に過ぎなかったが、インターネット時代の到来とともに、通信社を始め、新聞社、テレビ局などの各メディア、ゲーム会社さらには球団へもデータを受け渡す、公式記録配信システムへと性格を変えて来た。一時、IBMのスポンサー撤退により、赤字事業だったとされるが、昨今では数億円の利益を上げる、NPBの安定収益源へと成長。

この「安定収入源」に最初に目を付けたのは、ソフトバンクと聞く。「電通を外せば、廉価で運用でき、NPBの増益につながる」と触れまわった。これに喰いついたのが、読売と楽天。読売に至っては、読売新聞の元運動部長をNPBの事務局次長として送り込む入れ込みようだ。システムの知識のない他球団に「電通が要求する運用費の半額で、BISの運用は可能」と甘言を弄し2011年、伊藤忠系のシステム会社に、新規にBISを開発させる決定へと誘導。この決定からNPBは、電通に対し、BISの運用契約は「2012年度まで」と通達する。電通はこの一連のNPBの動きを不服とし2012年度のみの契約は無効とすると、NPBは電通に仮処分をかける事態へと発展。

この事態を重く見た加藤良三コミッショナーは2011年の年末、収拾に乗り出した。NPBは仮処分申請を取り下げ、事態は終息したかに思われた。

ところがNPBは2012年、伊藤忠系システム会社への新規BIS発注を中止することなく、再度電通に対し、2014年度以降契約の延長がないことを通達する。これを受け、電通は11月にBIS運用の契約解除を通知した

新規BIS開発の責任者は、阪神から出向している沼沢正二事務局次長。NPBは、この事態の打開のため、電通が運用して来たシステムそのものの移管を受け、独自運用を目指していた。つまり、2013年シーズンは移管されたシステムで記録を配信し、2014年シーズンからは新たに構築した伊藤忠系のシステムに移行する予定だ。しかし、NPBは移管したシステムを運用できないという醜態を晒すに至り、7日の発表となったわけだ。

問題は2013年、NPBの発表通り、公式戦から記録を配信することが可能かどうか。BISはプロ野球公式記録のDB、つまり日本プロ野球の基幹システムと考えてさしつかえない。基幹システム運用変更や移管には常にリスクが伴う。大がかりなプロジェクトとしては、みずほ銀行の件が記憶に新しいところ。

下田事務局長は7日、「公式戦に向けて最大限の努力をする」としたが、オープン戦で運用できなかったシステムを、公式戦でぶっつけ本番で運用するのは、さらなる大きなリスクとなる。みずほ銀行の例にも見られるように「システム管理運用」の重大性を軽視している。

<続き>プロ野球公式記録配信の危機と日本野球機構の解体<後篇>

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