「Jリーグが抱える問題点」~夏野剛氏に訊く(後編)

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玉乃 具体的にどういった仕掛けが今後なされていくのでしょうか?

夏野 まあ、いろいろやりますから(笑)。

具体的な話はできないけど、見ようと思えば必ず見られるという仕組みを作りたいですよね。とにかく、BSとかCSとか契約しなくても見られるというのが大前提。だってもうそういう時代ですから。で、なおかつお金も回るようにしなければならない。サッカーを取り巻く環境はいいですよ。やっぱりライブコンテンツっていうものは、もう世界中で価値がどんどん上がっていますから。だってバスケットボールにあの値段がつきますからね。Jリーグはもっと思いっきりいけますよ。ライブコンテンツ、スポーツコンテンツの価値は成熟社会になると上がっていく。ネット配信も民放ぐらいの威力を持てるようにしたい。 あとは、スタジアムの問題も結構大きいですよね。市が運営しているような競技場なんて行かないでしょ。でもガンバの新しいスタジアム一度行くと、また行こうってなるじゃないですか。ピッチのまわりに陸上トラックがあるようなところじゃ見たくない、選手は米粒サイズですし、迫力にも欠けます。アーティストのコンサートじゃないのだから、レディガガかよって(笑)。もうちょっと間近で見たいでしょ。あれでは本人かどうかわからない。

玉乃 レディガガはスタジアム問題を語る際の持ちネタですか?(笑)

夏野 埼玉のスーパーアリーナって席が意外と遠いんですよ。これじゃあ豆粒じゃん、レディガガ?みたいな(笑)。飛び跳ねているのは果たして本物かなって(笑)。陸上トラック付きのスタジアムもまさにそんな感じですよ。

玉乃 内部にいると意外としがらみがあって、そういうことを思ったとしても言えない環境なんです。

夏野 それはそうかもしれませんね、だからこそ我々が代弁しているんですよ。やれば、ガンバみたいなスタジアムをちゃんと作れるわけだから。あれは民間のお金を使って、上手いこと枠組みを作って、できたスタジアム。一つ吹田みたいなスタジアムができたということは、光明がさしていると思いますよ。ただ欲を言えば、吹田は交通の便が悪すぎます、遠すぎる。まあ隣が三井のショッピングモールですから、まだいいけれど。

引退後こそ、真摯さが問われる

玉乃 日本のサッカー界って、ピラミッドのトップの人達がもっと潤えるようなサッカー界にしていかないと厳しいと思うんです。引退する平均年齢25歳前後ですから、そこで引退した人達にとっては難しいセカンドキャリアが待っていますからね。

夏野 まさにそこですよね。これまでと同じことをやっていちゃダメなので、さらに一段上に行くためにやれることは全てやりたい。今、観客動員数が1チーム平均1万人台。それが3万人台にできたらビジネスとしては倍増なのですよ。その周辺でやれることも増えるし、その影響力も増えるわけです。そうすると引退して解説者になるだけじゃなくて、いろんなビジネスができるようになります。既に国民的スポーツになっているサッカーの周辺産業を作っていくためにも、もっともっとサッカーをお金の回る「産業」にしていかなければならない。お好み焼き屋とかラーメン屋を開くとか、サッカーから離れた方向に行くんじゃなくてね。

玉乃 経営者の観点から見ると、25歳で引退しました、学歴もない、社会経験もない、そんな僕たち元プロサッカー選手はどう写りますか?そこから、どう這い上がっていけばいいのでしょうか。

夏野 実を言うとこれは、「25歳で東京大学をでました、どこかの会社に3年間勤めています。」っていう人と同じなのです。引退して自分のキャリアの作り方にポジティブに向かえる人はいいですけど、折れちゃう人もいます。だから折れないっていうことを、選手で早くに引退された人に植えつけて欲しいのです。野球界でもそうなのですけど、日本っていうのは、名選手が良いコーチであり良い監督であるっていう誤解が多くある。それって嘘じゃないですか。選手とコーチ・トレーナーこれは全然違う。欧米諸国を見ると、名選手じゃない人が名監督・名コーチになっているケースが非常に多い。選手としての序列がセカンドキャリアにも影響するというのはちょっと安易すぎると思います。逆に言うと選手経験者からレフェリーになったり、指導者になったりするケースをもっと多様化して作っていくべきじゃないかと。海外にコーチとして行ったり、海外で指導者としての道を学んだり、選手たちにはセカンドキャリアにも貪欲でいて欲しいです。そのためにはせっかくサッカーやっているのだから、語学はやっておいて欲しいですよね。英語だけじゃなくて、もう1ヶ国語ぐらいは欲しい。スペイン語とか中国語とかですかね。語学っていうのは全く頭の良さは問われない。やるかやらないかですから。僕はね、このセカンドキャリアの問題というのは、サッカー界と選手、両者に問題あると思うのです。サッカー界はシステムを整えないし、選手も引退時はあまりポジティブじゃないし、サッカー以外のことを学ぼうとしない。モデルと合コンばっかりやっているから悲惨な目にあうんですよ(笑)。

玉乃 大変失礼ながら、インタビュー前は、サッカーというスポーツを理解されないで、好き勝手に過激な発言をされているのではないかというイメージを持っていました。本当にすみません。謝ります。ものすごく精密に内情把握されていますね(笑)。

夏野 もちろんですよ、サッカー選手ひいてはスポーツ選手の方々はリスペクトしています。そんな選手たちに対して思うのは、試合中の真摯さを引退後ほど大切にしていったほうがいいよ、ということ。スポーツを極めた者だし、体格にも恵まれているんだから。だからこそ、それを生かして一生やれる仕事につなげることが重要です。コーチは一生やれる。海外で語学ができたらもっと通用する。今後はチームや協会の運営側もどんどん人が必要になってくる。解説者ももっと人が必要になる。全試合生中継やりますから。そうやってお金が回り始めたら、産業としてもサッカー界の未来は絶対明るいですよ。アジア圏の優秀な選手をバンバン獲得したりとかね。もちろん一枠とか言わないで、無制限に。アジア圏の選手だけで構成されたチームなんていうのもできたらいいじゃないですか!(笑)

玉乃 夏野さんとお話ししていたら、少し人生がイージーに思えてきました(笑)。

夏野 そうだよ!悩んだり立ち止まったりしたら、もったいない、もったいない。東大卒のドワンゴの3年目と、元Jリーガーの25歳なんてなんら変わりはない。「俺のピーク終わった。」って悲観しない方がいい、引退後。なんにも終わっていないから。

玉乃 (握手)ありがとうございます。僕もちょうど平均引退年齢の25歳で引退して、ずっと付き合ってきた彼女にフラれて、その後そのコが東大卒のお医者さんと結婚してしまったという過去があって(笑)。

夏野 それは彼女が正解だったかもね(笑)。 冗談冗談(笑)。

腐らないで、ポジティブでいれば道は絶対明るい。僕なんて大変ですよ。32歳で会社潰して、財産もなくし、プライドもズタズタで、奥さんにも逃げられ、そこからですからね。一生懸命やって、まだまだ道半ばではあるけれども。大事なのは最大限に努力してチャンスをつかんで120パーセントの力を出すこと。とにかく腐らない。腐らない人にはいくらでも光が当たる。本田選手みたいにチーム買っちゃうとか、長友選手も会社作りましたよね。こうなってくると面白い!選手として成功した人は、会社はうまくいかなくて、25歳で引退した人のほうがうまくやれるかもしれない。こういうのがあっていいじゃないですか!!

夏野剛(なつの たけし)プロフィール

1988年、早稲田大学政治経済学部卒業後、東京ガス入社。1993年にペンシルバニア大学経営大学院(ウォートンスクール)へ留学し、1995年同校にてMBA取得。IT系ベンチャー企業の副社長を経て1997年NTTドコモへ。「iモード」「おサイフケータイ」などの多くのサービスを立ち上げる。現在は慶應義塾大学、政策・メディア研究科で特別招聘教授をつとめるほか、カドカワ、トランスコスモス、セガサミーホールディングス、ぴあ、グリー、DLE、U-NEXT、日本オラクルなどの取締役を兼任し、経済産業省所轄の未踏IT人材発掘・育成事業の統括プロジェクトマネージャー、一般社団法人未踏の理事などIT系有識者として数々のポストをつとめる。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会参与をもつとめるスポーツ界にも一石投じる超著名ご意見番。2015年にJリーグのアドバイザーに招聘される。