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プリンスホテル沖縄初進出のニュースに“いまさら沖縄?” 果たして勝算はあるのか、その実力は

瀧澤信秋ホテル評論家
4月12日に開業した「沖縄プリンスホテル オーシャンビューぎのわん」(筆者撮影)

いかに先入観を排するのかは評論の肝としているものの、プリンスホテル沖縄初進出と聞いて、正直どうなのだろうというのが訪れる前の印象でした。4月12日に開業した「沖縄プリンスホテル オーシャンビューぎのわん」は、プリンスホテル沖縄初進出となるリゾートホテル。とはいえ、既に沖縄にはご当地を知り尽くしたリゾートホテルがごまんとありますし、沖縄のイメージが全くなかったプリンスホテルだけに、ホテル好きの友人とも「今さらここで何ができるのだろうか…」という話になったりと、開業情報に接した際には様々な思いを抱きました。

那覇市街も望む(筆者撮影)
那覇市街も望む(筆者撮影)

ホテルの地図・アクセスを見ると、那覇市街からホテルまで車で約20分、人気の北谷エリアまでは車で約10分という地。恩納村以北のようなリゾートエリアに振り切れていない反面、那覇観光にはちょっと遠い場所です。近くにあるといえば、コンサートやプロ野球キャンプで有名な「ぎのわん海浜公園」、海水浴が楽しめる「トロピカルビーチ」といったところ。他方「沖縄コンベンションセンター」がメインに形成されているあたりが、“リゾートMICE”としてホテルの存在価値が高まるのではないかとは思料しました。

5つのポイント

そんな事前の印象を抱きつつ実際に訪れてみると、確かに課題はあるものの、ある種良い意味で期待を裏切る5つのポイントがありました。特にサウナなどは既存のリゾートホテルと比較しても相当高いポテンシャルでした。  

① 眺望

国道からは想像できない実はマリーナを見下ろす眺望(筆者撮影)
国道からは想像できない実はマリーナを見下ろす眺望(筆者撮影)

ホテルは地上14階建て全340室で、スーペリアフロア(3F~11F全270室)、クラブフロア(12F~14F全70室/専用のラウンジやインフィニティプールあり)という構成。交通量の多い幹線道路沿いに目立つかなり大きな建物で、気になったのが各客室に備えられているバルコニーの光景。リゾートホテルですしとりあえず付けてみましたといったところか?実際どこまでリゾート感があるのだろうか…

これが実は国道を走っていると全く気付きませんが、ホテルの目の前が沖縄最大級のヨットハーバー「宜野湾港マリーナ」で、客室バルコニーから素晴らしいハーバービューが広がっており、海外のリゾートにいるような気分にさせてくれます。目の前にヨットハーバー、海岸線には那覇市外の賑やかな眺望、北部は静かな海…果てしない茫漠とした海眺望は時に見飽きてしまいますが、アクセントある海の風景には新たな発見があります。

② プール

2Fインフィニティプール(筆者撮影)
2Fインフィニティプール(筆者撮影)

プールでいえば、宿泊者専用プールとして後述するクラブフロア専用インフィニティプールも含め、屋外インフィニティプールが2ヵ所、屋内バーデプールが1ヵ所備えられています。2Fおよび14Fのインフィニティプールは、客室からのマリーナビューよろしく幹線国道のイメージからは想像できない、都市型リゾートホテルならではという景色が望めるのが意外。

③サウナ

(筆者撮影)
(筆者撮影)

目下ホテルでもブームのサウナですが、サウナーでもある筆者として今回最も刺さったのがサウナです。2Fには屋内にバーデプールの他、大浴場やサウナ、岩盤浴も完備します。ただし、事前情報でサウナも水着必要といい“プールサイドサウナか”とガッカリしていました。というのもバーデプールや屋内プールゾーンにサウナを設置するケースは時々見受けられますが、プールがあるからかまず本格的な水風呂は見かけません。サウナと水風呂はセットというのはサウナファンの常識であります。

この日も15.8度を指していた(筆者撮影)
この日も15.8度を指していた(筆者撮影)

ところが、沖縄プリンスホテル オーシャンビューぎのわんでは、プールサイドサウナの目の前にプールの一角を区切った深度ある水風呂が設置されていました。しかも概して高めな沖縄のリゾートホテル水風呂温度にしては希有な15度台です(北谷に14度台のホテルはアリ)。ドライサウナの隣にミストサウナ、さらに氷が盛られた屋外プールビューのクールダウンルームまで揃っています。そしてドライサウナからプールを挟んだ向かいには岩盤浴と揃いも揃ったり。

外気浴もすぐ隣へ(筆者撮影)
外気浴もすぐ隣へ(筆者撮影)

サウナといえば新設サウナで憂慮するのが湿度。新設サウナは乾きすぎて湿度に難ありとも覚悟していましたが、オートローリュウシステムも導入し、納得の湿度管理で発汗を促します。朝6時からオープンしているので早い予定のチェックアウト日にも楽しめそう。

また、分厚いタオルが大浴場の脱衣所に積まれていて、プールに持ち込んでもサウナ室から見える場所にオープンラックも備えられておりストレスフリー。男女一緒にここまで質の高いサウナを体験できるとしたら納得できるサウナファンも多いのではないでしょうか。宿泊者専用となっており、滞在中無料で何度も利用できるのは嬉しいポイントです。

④動線

(筆者撮影)
(筆者撮影)

サウナエリアから屋外プールの“ととのいゾーン”へ直結という動線も素晴らしく、サウナ&水風呂から外気浴まで遠いと“ととのいも遠くなる”だけにサウナーにとって欣喜雀躍のゾーニングです。

サウナからととのいゾーンまで触れましたが、ホテル全体としても動線はかなり考えられています。たとえば駐車場へはロビーの専用出口ドアから徒歩10秒で到着、クラブラウンジもエレべーター降りて目の前、何をするのにもエレベーター降りてから目的スポットまで30秒歩くことないのかと思うくらいです。

リゾートホテルで何かするのにとにかく遠いというのは規模をあらわす格のようなイメージもありますが、ホテル内で全てスムーズ完結派としてはとにかく移動が少ないのは悦楽。

⑤クラブラウンジ

専用インフィニティプール(筆者撮影)
専用インフィニティプール(筆者撮影)

クラブラウンジゲスト専用の「CLUB LOUNGE UMIKAJI(クラブラウンジウミカジ)」(14F)は、かなり広大でゾーニングもよく考えられており、ドリンク類、フードも充実。好きな時間に食事や飲みものを愉しみながらゆっくりと過ごすことができます。専用インフィニティプールを持つ空間は、ホテル上級者でも新たなクラブラウンジ体験が期待できるかもしれません。

事前に注意したいグルメ

ディナーブッフェの一コマ(筆者撮影)
ディナーブッフェの一コマ(筆者撮影)

沖縄プリンスホテル オーシャンビューぎのわんのレストランはブッフェレストラン(All Day Dining Jinon(オールデイダイニングジノーン))で、沖縄県産の食材を使用した料理、健康を意識したメニューやライブキッチンでのパフォーマンスにより沖縄グルメを楽しめます。

とはいえレストランは1ヶ所のみで、プリンスホテル=東京のフルサービスにして各種ダイニングに馴染みある人からしたら違和感あるかもしれません。とはいえ連泊でもディナーブッフェであれば色々アレンジできますし、さらにクラブフロアならばクラブラウンジのカクテルアワーオードブルなどアクセントは付けられそうです。

商業施設が隣接する(奥がホテル)(筆者撮影)
商業施設が隣接する(奥がホテル)(筆者撮影)

また、隣接する複合施設は飲食店も充実しているので、食の選択肢は多いといえるでしょう。実はホテル前の国道沿いに歩道を歩いてみると、並びには様々な施設があることに気付きます。また多様な商業施設の入った「コンベンションシティ」もホテルから至近、都市の利便性も享受できるリゾートホテルとも表せます。

開業直後のホテルへ出向くことは少ないが…

沖縄プリンスホテル オーシャンビューぎのわん、訪問前は憂慮していましたが実際滞在してみると既存ホテルをよく研究し、必要なことは全て揃えてみましたといったスタンスか、サウナを中心にこれまで沖縄のリゾートホテルではできなかった体験も叶いました。

特に昨今、ホテルはコンセプト合戦の様相を呈しており、リゾートホテルにあっても時に体験するのが奇抜なデザインやコンセプト優先ゆえに、快適さスムーズさといった基本的なポイントが疎かにされているケース。旅は非日常、ホテルでもワクワクしたいというのは深く理解できますが、こんなデザインにお金かけるのならもっと良いベッドやソファがほしい、奇抜で無くていい、とにかく快適に過ごしたいと感じるシーンは時にあります。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

個性的か否かという点でいえば、確かにプリンスホテルはそんな基本を踏襲しているブランドであり、都市型でもリゾートでも一定の安定感があります。今回の訪問はイレギュラーにも開業直後でした。イレギュラーというのも、ゲスト目線の評論という点から開業したてのホテルへは出向くことは少なく、特に人材不足という業界やエリアにあって、開業後しばらくはオペレーションが安定しないという部分を考慮してのことです。

しかしながら、イレギュラーな訪問であったものの開業直後にしてかなり健闘されていると感じたのは、数々のホテルを運営してきた全国ブランドの層の厚さとも評価できそうです。いずれにしても、まだまだこれからというリゾートホテルとはいうものの、沖縄にあって海を感じつつも都市型リゾート体験を求めるゲストには一定の支持が得られるかもしれません。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

ホテル評論家の辛口取材裏現場

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忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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