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ホテル【エレベーターなかなか来ない問題】イライラしたことありますか?

瀧澤信秋ホテル評論家
急いでいる時などヤキモキしてしまう・・・(筆者撮影)

移動が集中する時間帯

ホテル内でゲストが移動する時間は重なるシーンがある。どちらかといえばチェックインは散けることはあるものの、チェックアウト時間や朝食時間帯の集中など、多くの人々がエレベーターを利用する場合に憂慮されるのが“エレベーターなかなか来ない問題”である。

規模の大きなホテル特有の問題かといえばそうでもなく、ホテルの規模(客室数)に応じて基本的にエレベーターの台数は比例する。無論、ホテルの建物に限らず同様の問題は散見されるが、本稿ではホテルにまつわるかかる問題について見ていきたい。

ホテルとしても悩ましいところだ(筆者撮影)
ホテルとしても悩ましいところだ(筆者撮影)

すなわち、客室数の少ないビジネスホテルでもエレベーターの台数が限られる場合は同様の問題が惹起することもある。ホテル側も対策に苦慮しており、朝食会場や大浴場などゲストが集中するスポット・フロアの動線を考えホテルが造られることもあるそうだ。高層ホテルでハイフロア専用のエレベーターが設けられていたのを見たこともある。

ザ・プリンス パークタワー東京(東京都港区)は目的のフロアによりエレベーターが異なる(筆者撮影)
ザ・プリンス パークタワー東京(東京都港区)は目的のフロアによりエレベーターが異なる(筆者撮影)

あまりにも来ないエレベーターの停止階数表示を見つつ、ついつい“何をやってるんだ?”とイライラしてしまうのも人情というものか。そんなエレベーターの中の様子をリアルタイムでモニターに映し出しているのを見たことがあるが、少しはストレスを和らげる効果はあるのだろうか。

エレベーター内が映されたモニター(東横イン/筆者撮影)
エレベーター内が映されたモニター(東横イン/筆者撮影)

エレベーターについての専門家ではないのでシステム的な部分は詳しくないが、“高速運転モード”と表示されているのをみかけることがある。エレベーターもきっと健気に頑張っているのだろうと思うが、約束の時間や電車の時間が迫っていたりするとやはりやきもきしてしまう。

ゆったりとしたエレベーター?

高速運転モードという言葉のイメージとは相対するが、某リゾートホテルで宿泊の際に仕事の関係者と会食があった。会食が終わりエレベーターまで見送りを受けつつ客室階へ向かうためエレベーターに乗り込む。相手は「ゆっくりお休み下さい」と丁寧に頭を下げる。こちらも「失礼します」と頭を下げつつ閉ボタンを押す。ところがなかなか閉まらない。

「ドアが閉まります」という日本語アナウンスの後に、ご丁寧に「ドア~~クロ~~ジングぅ~」なんて英語でアナウンスがゆっくり流れ、律儀にもアナウンスが終わってからドアがゆっくりと閉まった。たった数秒での話ではあるものの、相手もこちらも下げた頭を上げるタイミングを逸してしまった。

英語のアナウンスはなかったが、先日宿泊したリゾートホテルでもエレベーター問題が勃発しているようで、繁忙日もあいまってエレベーターの前でイライラしているゲストをよく見かけた。こちらのホテル、エレベーターの動きがゆっくりであることに加え、ドアがゆっくりゆっくりと閉まるのだ。

子どもや老人、体の不自由な方などが利用することも考慮し、敢えてそうした設定にしているのかもしれない。さすがリゾートホテル、余裕を感じるぜ!などと感心している場合ではなく、ホテルにとってはゲストの満足度に直結するなかなか難しい問題として捉えられている。

エレベーターを増やしたリゾートホテル

だったらエレベーターを増やせばいいじゃん!というのは答えとしては理解できるが、そうそう簡単に増設できる類いのものでないことは私のような素人にでもわかる。ところがである、顧客満足度向上を目指すべく何とエレベーターを増やしたホテルがあった。

沖縄本島のリゾートホテルエリアが建ち並ぶ国道58号線沿道であるが、恩納村方面へ向かう途中に「ルネッサンスリゾートオキナワ」というホテルがある。ぐるっとホテルを囲むように見渡せるビーチやアクティビティへの動線等もふくめ、ファミリー向けハイクラスリゾートホテルとしてのポテンシャルは高く、事実ファミリーが多く訪れる。

ルネッサンスリゾートオキナワ(筆者撮影)
ルネッサンスリゾートオキナワ(筆者撮影)

こちらのホテル、2019年10月から2020年5月まで1階ロビーエリア、レストラン、客室の大規模改装工事を実施していた。改装工事中に思いがけずコロナ禍と対峙することになったが、無事リニューアルは完了、ゲストルームも全377室のうち353室がリニューアルされた。

クラブラウンジ(筆者撮影)
クラブラウンジ(筆者撮影)

特にクラブフロアの充実度も高まったのは印象的だ。クラブラウンジのソファ、テキスタイルなど海をイメージ、客室も壁面装飾やテキスタイルが特徴的で、マリンカラーがリゾート気分を盛り上げる。

圧巻の光景(筆者撮影)
圧巻の光景(筆者撮影)

そんな大規模リニューアルのトピックが吹き抜けのエントランス・ロビー。リニューアル前に出向いたことのある人だったらその変化に驚くことだろうが、驚愕なのは吹き抜けシースルーエレベーターが新設されたことだ。前述のごとく繁忙期のエレベーター問題については、こちらのホテルでも問題視されていただけに納得の設置といえる。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

既述のとおり、エレベーター来ずイライラ問題は時にホテルで見かける光景で、ホテル側も抜本的な対策に苦慮しているところであろうが、吹き抜けにシースルーのエレベーターを設置するという実行力には脱帽だ。抜本的な対策に打って出たホテルの心意気に拍手を送りたい。

*     *     *

※ホテルエレベーターのセキュリティ問題(カードキータッチやいちいちフロント階で停止)については次の機会に取り上げることにする

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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