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ホテルの【起こさないでください/掃除してください】カードが別々になっているワケ

瀧澤信秋ホテル評論家
(筆者撮影)

寝ているとは限らないが…

ホテルへチェックイン、客室に入ろうとして目に入るのが「Please Don't Disturb」と書かれた札だ。ドアノブに掛けられている場合もあればカード式でドアに貼られているタイプもある。Please Don't Disturbと共に「起こさないで下さい」と日本語で書かれているのが一般的だ。Please Don't Disturbを直訳すると「邪魔しないで下さい」という意味だろうか。

でも日本語では「起こさないで下さい」とされているのが面白いが、いずれにしてもハウスキーピング等で客室に入られたくない時に何かと便利なグッズだ。“ドン・ディス・カード”と呼ぶホテルマンもいたが(本稿でもこの表現を用いることにする)、このドン・ディス・カードと対というか「Please Make Up」「Clean Up Please」等、すなわち「部屋の清掃をお願いします」というメッセージが書かれている札もあり2枚両方でワンセットになっている。

(筆者撮影)
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部屋に入られたくなければ「Please Don't Disturb」を出し、掃除をして欲しければ「Please Make Up」を出しておくといった具合だ。端的にいうと部屋へ入らないでくれ/掃除してくれの意思表示、言葉を介さないコミュニケーションのツールといえる。最近では「清掃不要」「(アメニティの)交換回収のみ」というのも見かける。連泊の場合に便利なカードであり環境問題という観点からも秀逸だ。

別々になっている理由

そういえば以前から気になっていたのが、この両カード(札)が別々になっていることだった。稀に表裏一体も見かけるが大体は別々である。資源の有効活用や効率といった点でも表裏一体で1枚にすればいいのにと思いつつ、先日、とある昔の人気ドラマを見ていてハッと思った。伝説のホテルドラマであるその名も「HOTEL」という作品だ。ある年代以降の方であれば“姉さん事件です!”のフレーズでもお馴染みだろう。

ドラマの詳説は避けるが、客が(イタズラ目的で)他の客室のドアノブに掛けられたドン・ディス・カードを裏返し“Please Make Up”にして大きなトラブルになるというシーンがあった。何度も見ているドラマだったが、あっ、もしかしたらこんなイタズラを防止するために別々になっているのかも?と想像した。とあるホテルの支配人と会った際に確認してみると確かにそのような目的もあるということだった。

(筆者撮影)
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そのような目的も、というので他に理由があるのですか?と聞いてみると「万が一ドアノブから落下した際に表裏一体だとどちらだったのかわからなくなってしまうので」と納得の話も聞くことが出来た。そういえばマグネット式も増えている。ちなみに高級ホテルでは札やカードではなくスイッチで知らせるタイプが多いように思う。

カード(札)ひとつにも様々なドラマ

ところで、前記の人気ドラマではないが、ドン・ディス・カード1枚にも様々な“ドラマ”があるようだ。別のホテルスタッフとの話で、ドン・ディス・カードを外し忘れた客が「どうして部屋を掃除してくれないのか!」と文句を言ってくるケースも稀にあるという。

外し忘れといえば、チェックアウト済みの客室にドン・ディス・カードが掛かったままになっていることは時々あると聞いたことがあり、筆者は自身の注意喚起も含めて、チェックアウトで退室する際には「Please Make Up」を出すように努めていたこともあり、偶然廊下にいた客室係の方から「助かります」と言われたことがあった。

チェックアウトが済み、掃除すべき部屋はフロントとの連携で(確認に間違いが無ければ)わかっているから、さらにPlease Make Upが掛かっている(貼られている)ゆえに確信できるということか。しかし、ドン・ディス・カードもPlease Make Upカードも、掛けることそのものがイコール連泊を示す記号的意味合いもあるだろうから何かと混乱を期する可能性もある。ゲストとしてはタイミングやケース・バイ・ケース取り扱いには慎重を期するべきなのは言うまでも無い。  

(筆者撮影)
(筆者撮影)

ホテルからしたら、ドン・ディス・カードは絶対に客室へ入ってはいけない印みたいなものなのだろうが、客室の管理責任やゲストの安全への注意義務もあるゆえ、ホテル側の判断で入室することもあるだろう(もちろんノックするのは基本のき)。ドン・ディス・カードが掛かっていても、客室内でゲストが倒れていることだって可能性としてはある。

入室する基準はホテルにより様々と思われるが、「チェックアウト時刻を過ぎ客との連絡も取れない場合」といい、話を聞いたホテルでは「チェックアウト時刻の3時間後」など決められているという。

連泊の場合でドン・ディス・カードが掛けっぱなし、あるいはボタンが押されっぱなしという場合には、「“Please Don't Disturb”がかかっていましたので掃除はしておりません」と室外からメッセージを残すというハウスキーパーの話もあった。

部屋を提供するホテルと利用するゲスト、カード1枚を巡る様々なやりとりが今日も続く。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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