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ホテルの“コネクティングルーム”は決して不倫用ではありません!

瀧澤信秋ホテル評論家
様々な使い方のできるコネクティングルーム(著者撮影)

コネクティングルームとは?

どの業界でも独自のワードはあるものだが、ホテルについていえばステイする場所だけに、読者にも身近に感じる言葉は多いかもしれない。客室についていえば、最近注目を浴びたワードが「コネクティングルーム」だ。不倫関係が取り沙汰されている男性首相補佐官と女性厚労官僚が海外出張で泊まったといわれる客室タイプだ。

コネクティングルームとは“2つの隣り合った客室が中で行き来できる”スタイルの客室。一定のプライバシーを確保しつつも自由に行き来できることで、友人同士の旅行やファミリー利用などでは都合が良く人気といわれる。一見、独立した二部屋の客室であり、基本的に(コネクティングルームプラン等は別として)予約も別々の客室としてなされるので“様々な利用”に都合が良いことは容易に想像できる。

目下、脚光を浴びたコネクティングルームであるが、某新聞報道で「国内のビジネスホテルでは見られないがシティホテルでは珍しくない」という解説があった。確かに多様な客室タイプを有するシティホテルで多く見られるが、ビジネスホテルでもシングルルームのコネクティングルームは割と見かける。筆者も過去3軒のビジネスホテルのコネクティングルームを家族と利用したが、とはいえ、やはりシティホテルで見かけることが多い。

ビジネスホテルのコネクティングルーム(著者撮影)
ビジネスホテルのコネクティングルーム(著者撮影)

ホテルの客室にもいろいろ

ホテルの客室にまつわるワードとしては「シングルルーム」「ダブルルーム」「ツインルーム」等は馴染み深い。シングルルームとはシングルベッドが1台の部屋に1人で泊まることを指すとされるが、最近では純粋なシングルベッドは少数派ではなかろうか。ビジネスホテルのシングルルームにセミダブルベッドはいまや当たり前、ダブルベッドを設置したシングルルームもある。

ではダブルルームとは何なのか?という話になりそうだが、シングルルームと同じダブルベッドを用いても、シングルルームよりは客室面積が広いケースが多く見受けられる。いまやシングルルームやダブルルームはベッドサイズのことを表していないともとれる。2名利用の出来るダブルルームやツインルームの客室に1人で宿泊することを「(ツインまたはダブルの)シングルユース」というが、これもまた独特のワードだ。

業界独特のワードのようで一般へ向けて発信されている表現もある。「モデレート」というのも最近よく見かける。予約サイトの宿泊プランで「モデレートルーム」といったような用いられ方をしている。調べてみるとモデレート(moderate)とは“適度であるさま”“並の”“穏健な”といった形容動詞である。ホテルで言えば“スタンダードルーム”ということになるだろうか。

スタンダードルームという言い方はホテルでは一般的であるが、ならばモデレートルームとは何なのかという疑問は当然生じる。これも調べてみるとスタンダードルーム(最も安い客室)と同等というホテルもあれば、スタンダードルームのほかにモデレートルームを設けるホテルも見られる。その場合はスタンダードルームより少し上のグレードという位置づけをしているようだ(少し上といえばスーペリア(Superior)というワードもある)。モデレートも様々だ。

トリプルというのもある。ツインルームなどに3人で宿泊するという意味もあれば、まさにベッドが3台入った客室を指すこともある。ダブルルームまたはツインルームに4人で泊まることを“クアッド”というのは馴染みのない言葉だった。

業界もワードも広くそして深い。いずれにせよ、コネクティングルームとは決して有名人の不倫用ではないことを付言する。

*本稿の後半部分は筆者が連載している業界専門誌「月刊レジャー産業資料」の寄稿より一部抜粋した

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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