“桜を見る会”で注目される「ANAホテル」と「ホテルニューオータニ」は何が違うのか?

ホテルニューオータニ東京 “御三家”の存在感(著者撮影)

目下巷を賑わしているホテルの話題といえば、“桜を見る会”にまつわる“2ホテル”についてだ。2ホテルとは「ANAインターコンチネンタルホテル東京」と「ホテルニューオータニ東京」。問題の詳細については各種メディアで報道されているところでありここでは触れないが、同じ高級ホテルとはいえ異なる点が多い。今回の件では外資系というワードも着目されているが、両ホテルの違いなどについてまとめておきたい。

*基本情報(ホテル公式ページより抜粋)

【ANAインターコンチネンタルホテル東京】

開業:1986年(2007年ANAインターコンチネンタルホテル東京へリブランド)

立地:東京都港区赤坂

客室数:844

レストラン数:11

宴会場数:22

【ホテルニューオータニ東京】

開業:1964年

立地:東京都千代田区紀尾井町

客室数:1479

レストラン数:39

宴会場数:37

御三家・新御三家・新々御三家?

いずれも大規模なフルサービスタイプのグランドホテルであるが、大きな違いは“外資系”と“日系(内資系)”ということだろう。

ANAインターコンチネンタルホテル東京は1986年に「東京全日空ホテル」として開業、当初は「インターコンチネンタル」という外資系ブランドを冠していなかったが、2007年ANAインターコンチネンタルホテル東京へリブランドした。

ホテルニューオータニ東京は「帝国ホテル」「ホテルオークラ」と並んで“御三家”と称されるが、伝統的な高級シティホテル=日系ホテルとされてきた。90年代以降外資系ホテルが東京の高級ホテルシーンを席巻する。

92年開業の「フォーシーズンズホテル 椿山荘東京(現ホテル椿山荘東京)」、94年開業の「パーク ハイアット 東京」「ウェスティンホテル東京」は御三家に対して“新御三家”といわれ、さらに2005年開業の「マンダリン オリエンタル 東京」、2007年開業の「ザ・リッツ・カールトン東京」「ザ・ペニンシュラ東京」は“新々御三家”とも呼ばれた。その後もいまに至るまで、外資系ブランドの開業は枚挙に暇が無い。

外資系VS日系

外資系の強さは会員プログラムをはじめワールドワイドなブランド力といえるだろう。インターコンチネンタルホテルズグループ(IHG)でいえば、世界約100カ国で5000以上のグループホテルがあり、会員プログラム(IHGリワーズクラブ)の会員数は全世界で1億人以上とされる。

会員プログラムではポイントの累積はもちろん、一定の基準を達成するとアップするステイタス(特別なサービスを受けられるプラチナ会員など)も重視されるのが特色だ。

すなわち、世界各国を旅する会員は東京に来てもグループホテルを利用する傾向があり、外資系が席巻する東京ホテルシーンにおいて、日系ホテルとしては外資系ホテルからいかに顧客を奪取するのかは大きなテーマとなってきた。

東京全日空ホテルが2007年に“ANAインターコンチネンタルホテル東京”へリブランドしたというのも、外資系VS日系という近年の東京におけるホテル群雄割拠を象徴するひとつの出来事であった。

ブランド名を冠するということは、同時に当該ブランドのクオリティに沿ったホテルであることが前提だ。各国から訪れるゲストは「ANAインターコンチネンタルホテル」というブランドへの信頼感でセレクトするという点からしても、ホテルの運営にも一定の外資系的なブランドのルールが落とし込まれている。

今回の件でも「ANAホテルは外資系」「(対応が)スッキリしている」(自民党幹部の声)という新聞報道があったが、そうした外資系ホテルのイメージを表した声ともとれる。

バンケットもホテル収益の柱

宿泊ゲストに主眼を置いて外資系ホテルをみてみたが、外資系・日系に限らずフルサービスタイプのホテルには様々な機能があり、「桜を見る会」前日の夕食会のようなバンケット(宴会)もそのひとつだ。冒頭に両ホテルのデータを抜粋したが、ホテルニューオータニ東京の宴会場数は圧巻。ホテルニューオータニ東京に限らず多様なバンケット施設を備えるホテルにとって、バンケット顧客の存在は欠かせない。

それだけの需要を取り込むバンケット数を有するホテルという点からしても、主たる利用者層である法人や団体顧客との関係性は、ホテルにとってことさら重要ということが想像できる。ホテルにとって特に法人や団体の顧客については「長年に渡るお付き合い」も大切なワードだというが、そうした点でもやはり長年に渡り存在感を示してきた伝統的日系ホテルとの親和性を想起する。

ホテルと広報

ホテル取材等でホテル側の窓口になるのが「広報」(ちなみに筆者は広報を通さない“覆面取材”も多い)。外資系、日系、シティホテル、ビジネスホテルを問わず様々なホテルの広報担当者と接点があるが、概して外資系ホテルの広報については“ブランドイメージの徹底”という印象を持っている。

もちろん外資系・日系問わず、それなりのブランドホテルであればブランドイメージは広報にとって重要なテーマであることは言うまでもない。他方、ブランド毎にテーマやスタンスをはじめある種のルールなどが明確というイメージの外資系ホテルにあって、今回の件で報道されたANAインターコンチネンタルホテル東京の広報対応は、様々な意味で“さもありなん”という印象を受けた人もいることだろう。

今回は外資系・日系という側面から両ホテルをみてみたが、外資系・日系問わずホテルには様々な運営形態や実態がある。顧客も様々。ケースバイケースで対応する柔軟性もまたホテルが愛され続け魅力が高まる要素というのは事実だ。

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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