ブーム終焉?カプセルホテル事業者の悲鳴!活況から一転「予約が入らない」

豪華カプセルホテル安心お宿(筆者撮影)

カプセルホテル活況はいま

最近、“突然失礼します”というカプセルホテル事業者からのメールが増えた。「一度、弊社施設を見ていただきたい」という取材のオファーであるが、よくよく話を聞くと「開業したものの客足が伸びず悩んでいる」「予約数の減少に歯止めがかからない」というのだ。取材と共に改善点などアドバイスを請えればとの申し出であるが、一時の勢いがなくなっているというカプセルホテル事業者の声は増えている。

そもそも筆者とカプセルホテルの関わりは2014年にさかのぼる。365日異なるホテルへチェックインし続けるという自腹ミッションを遂行した。いま思えばちょうどホテルが高騰し始めた時期で、一般ホテルに宿泊するのは予算オーバーという中、安価なカプセルホテルを利用する機会が増えた。結局2014年の1年間で東京の全カプセルホテルへチェックインすることになる。

カプセルホテルは終電に乗り遅れたサラリーマンの緊急避難的な施設という認識だったが、一部の施設ではステイすることが目的となるようなデザイン性の高さや秀逸なサービスで、それまで抱いていたイメージが覆された。以来そのようなカプセルホテルを“進化型カプセルホテル”というワードで積極的に発信、テレビや雑誌などメジャーな媒体で数え切れないほど取り上げてきた。

激増したカプセルホテル

そんな時期と同じくして、訪日外国人旅行者の激増を起因とするホテル活況もあり、様々な業界からのカプセルホテル事業参入は増加の一途を辿った。昔からあるスタイルの旧態型カプセルホテルは固定のファンを掴んでおり、その存在感は相変わらずだが、続々と誕生した進化型は広めのキャビンや女性専用エリアを設けるなど差別化がすすめられた。

現在、カプセルホテルは全国で約300軒(客室数ベースで3万2000超)といわれる。内東京都が100軒ほどと3分の1を占める。ここ数年の推移を見ると増加傾向は顕著だ。詳細なデータは割愛するが、宿泊施設全体をカテゴリー別に2012年と2017年で増減率を比較してみると ●旅館△15.8% ●ホテル5.8% ●簡易宿所29.4%(厚生労働省 衛生行政報告例より)とカプセルホテルも含まれる簡易宿所の増加率の高さが目立つ。

2017年以降を見てもその傾向は続いており、例えば東京都心のカプセルホテルでいえば、2017年から2019年8月までで概ね2割ほど増えている。供給が増えたことにより料金も下降傾向。旧態型/進化型と前述したが、旧態型施設では3000円くらいというイメージの中、1泊1000円台という設定も目立ってきた。一方、進化型は4~5000円台というイメージだったが、最近では3000円台、時に2000円台後半も見かけるように。例えば、バリュー度高き進化型で注目の「グランパーク・イン横浜」は、3000円を切る設定もみられ利用価値は高い。

進化型カプセルホテルの競合はビジネスホテル?

ビジネスホテルの料金下落もカプセルホテル事業者の懸念事項になっている。相変わらずのホテル活況というニュースの中で、業界ではホテル全体としての供給過多を危惧する声が出てきた。高級ホテルは相変わらず高いニーズを保っているが、一般的なビジネスホテルの料金はひと頃に比べるとかなり下落傾向にある。もちろん繁閑差や変動はあるが、ボトム1万円というイメージだったホテルが実勢料金5~6000円、中には4000円台という例も散見する。まさに進化型カプセルホテルと競合する価格帯だ。

ここ数年のカプセルホテルを取り巻く環境をみると、進化型の台頭でカプセルホテルの存在感・認知度は格段にアップした。同時にこうした存在感の高まりの裏にはビジネスホテル料金の高騰があった。一方、法律的には宿泊施設ではないが、低価格帯でいえば個室鍵付きといったネットカフェ的施設やレンタルルーム等も勢力を増している。

個室ではないカプセルホテルは、抵抗感のある人は選択肢に入れる余地はないだろうが、ビジネスホテルは高くて泊まれないけど進化型のカプセルホテルであれば清潔だしそれなりに快適と利用者のニーズをうまく取り込んだ。とはいえ、同料金で個室かカプセルかといわれれば進化型とはいえ「やはり個室」という人は多い。

トップランナーが抱く危機感

進化型カプセルホテルの代表格として知られる「豪華カプセルホテル安心お宿」(都内5店舗、京都1店舗)。カラオケパセラの運営会社が手がけるカプセルホテルとして知られる。カプセルホテルブランドの中ではリピーターの多さも特徴の人気ブランドとして認知されているが、やはり当初の想定よりも伸び率は鈍化してきたという。

運営会社である 株式会社 サンザ 安心お宿事業部 部長の松田一宏氏へ危機感について聞いてみた。

「新たなスタイルのカプセルホテルを送り出し続けてきたということで、受け入れられるだろうかという危機感は常に抱いてきた。一方、カプセルホテル不況という中でも、安心お宿が提供する高付加価値はオンリーワンと自負している。カプセルホテルという事業そのものへの危機感というより、一定以上の料金設定を堅持しつつ、その先に何をやれば顧客に支持され続けられるだろうか?という意味での問いと危機感は強く抱いている」という。

確かに安心お宿で特徴的なのが続々届く新たなプランのリリース。大手グランドホテルに匹敵するリリース数であり、カプセルホテルでは安心お宿の他にはみられない。最近では「ワイン飲み放題(全店舗)」「時短読書BAR(荻窪店・京都店)」「はも会席(京都店)」「手作りおむすび体験(新橋汐留店)」など、おおよそカプセルホテルで提供するサービスとは思えないものばかり。

業績が停滞するとコストカットなど消極的な姿勢になるケースはカプセルホテルに限らずよく見るが、「そういう時だからこそ攻めていく、トライ&エラーの連続ではありますが・・・」と松田氏は語る。

3.11の記憶

筆者は仕事柄、様々なホテルの料金をチェックしているが、安心お宿といえば先日印象的な出来事があった。台風15号が9月9日月曜日の出勤時間帯に首都圏直撃という予報が出ていた前日8日(日)のことである。日曜日は一般的にホテルの閑散日であるが、出勤困難を避ける為に前泊を目的とする予約者が殺到し、高レートで販売するホテルが続出していた。ところが、安心お宿をみるとレートは一切上がっていなかった。当然に都内全5店舗満室になったという。もっと高い設定にしても予約が入っただろうに何とももったいない話ではある。

後日、松田氏にこのことを確認したところ“3.11”というワードが出てきた。安心お宿1号店である新橋店の開業直後に襲った東日本大震災。手探りで開業にこぎ着けたカプセルホテル1号店にして渦中の現場にいた松田氏は、「天災時の“社会インフラ”を担うのは身近でハードルの低い宿泊施設であるカプセルホテルの努め」であることと「“公益資本主義”は宿泊業の基本であること」を改めて認識したという。熱烈なファンが多いことでも知られる安心お宿のスタンスを示すエピソードのひとつだ。

巷間では相変わらずホテル活況が叫ばれている。都心や観光都市でのホテル建設ラッシュはもはや見慣れた光景だ。しかし、これは“いまの姿”を反映していない。ホテルは計画から開業まで2~3年は要するといわれる。すなわち、いま開業しているホテルは2~3年前の市場下において計画されたホテルということだ。

一方、カプセルホテルは1年以内で開業するところが多い。宿泊業へ参入しようとする時、概してカプセルホテルはハードルが低いといわれ、低廉なイニシャルコスト、施設の条件、開業のまでの期間、後々のコンバージョンなども通常のホテルより秀でている。ゆえに参入も早いが撤退のスピードも早い。見切りをつける事業者も増える中でカプセルホテルの現場が抱く危機感。その現況には一歩先をいく宿泊業としてのリアリティがある。