3倍5倍は当たり前!? ラグビーワールドカップなど大イベント時の「ホテル取れない、料金急上昇」問題

「365日一年間同一価格宣言」を謳うホテルAZ(筆者撮影)

ホテルが足りなくなる大イベント

9月20日に開幕したラグビーワールドカップ。連日各地で熱戦が繰り広げられている。こうした大きなイベント時に問題となるのがホテル不足。今回のようなワールドクラスのイベントに限らず、アイドルのコンサートや学会など、特定の都市・エリアに予約が集中し供給客室数が不足するということはよくある。そもそも、近年このような問題は訪日外国人旅行者の激増により大都市部を中心に叫ばれており、ホテル不足や料金高騰といったニュースにもなんとなく慣れてきた感があるだろうか。

ところで、大イベントでのホテル不足ニュースとして記憶に新しいのが、“2020東京五輪既にホテル予約できない問題”だ。2019年6月20日に観戦チケットの抽選結果が発表、代金を支払いチケットを購入した人々が宿泊先の確保をしようとしたところ、まだ1年以上あるというのに会場近くのホテルが全く取れないという声が相次いだ。

会場周辺から少し外すと見つけられたという声もあったが、一般的なビジネスホテルで通常1万円程度の客室が6万円などという例もあり、「事前にわかっていればチケットを買わなかった」というような大会組織委員会への非難をはじめ、「足元みやがって」「弱みにつけこんで」といったホテルへの恨み節もSNSで拡散した。

1年前から満室になるホテルも

東京五輪については、世紀を代表するような大イベントということもあり、宿泊施設の需要は相当の高さと予測される。ただし首都圏での開催ということで、東京都と隣接県を合わせるとホテル客室の供給数はボリューミーであり、開催日程などからも多少の分散も期待できる。調べてみると千葉県や埼玉県といった郊外エリア、ホテルに限らず簡易宿所(カプセルホテルやホステル)といった業態など様々な選択肢を検討すると現段階での客室確保は充分可能であった。

今回のラグビーワールドカップ開催都市を見た場合、首都圏をはじめ大都市圏である札幌・愛知・大阪・神戸・福岡などは、宿泊施設数や業態の多彩さを鑑みても取れうる選択肢に幅があるだろう。他方、岩手、静岡、熊本、大分といったエリアになるとそもそもの宿泊施設数が限られる。予約開始時期はホテルによりけりであるが、現にそうしたエリアを代表するようなランドマーク的ホテルには、1年前から満室になった施設もあったという。

通常の3倍、5倍は当たり前!?

さらに岩手・釜石ともなるとホテル数は相当限られる上、隣接エリアへ移動しての宿泊という手段をとるのも難しい。次に釜石で試合が行われる10月13日(日)を確認してみると、月曜日が体育の日の三連休中日ということも重なってかほぼ空室はなく、ラグビー観戦プラン的な料金で通常の3倍以上の料金になっていた施設が何とか見つかった。

このように、ホテル料金アップがニュースになるのは、大きなイベントや人気アーティストのコンサートなどで印象深いが、イベントでなくとも一週間でいえば土曜日、通年でいえばGW、お盆といったトップシーズンも同様の傾向がある。高料金でも予約ができればまだマシで、全く見つからないといったケースも珍しくない。また、繁閑差といえば観光地ほどその傾向は顕著で、たとえば某観光地のデラックスホテルが、GWやお盆には閑散期実勢料金の10倍以上というケースもあった。

このようにホテルの料金は繁閑、需給で変動するのが一般的でありもはや常識であろう。業界ではレベニュー・マネジメントといわれる。これは航空会社などでも用いられる手法で、ホテルの空室や飛行機の座席など「在庫の繰り越しができないビジネス」において、需要を予測して売上高の最大化を目ざす販売管理方法といわれ、多くのホテルが取り入れている。ただ、“正規料金の○倍まで”というように、上昇幅にも一定のルールを設けているホテルもある。

変動させない少数派ホテルも

一方、繁閑にかかわらず、基本的に変動させないことをプライス・ポリシーとするホテルも存在感を際立たせている。有名なところでは「東横イン」、九州を中心に展開するロードサイドチェーン「ホテルAZ」の365日一年間同一価格宣言なども知られるが、ホテル全体からするとごく少数派。利用者からすると有り難いホテルといえるが、こうしたホテルは繁忙日の割安感がより際立ち、人気エリアでは早々に満室になる。

ある程度の変動は仕方ないとしつつも、過度に料金が変動するホテルに対しては「折角いつも利用しているのに・・・そんなホテルは二度と使わない!」といった常連からの感情的な声も聞かれる。そうはいっても、“こちらも商売なので・・・安くなって空室があればまた利用してくれるだうう”というホテル側の期待はあるのかもしれない。とはいえ一筋縄ではいかないようだ。

過度な料金変動に不信感を抱く利用者

ホテルでみられる会員プログラム。お気に入りホテルの会員カードを持っているという方も多いことだろう。顧客囲い込みという側面もあり、ビジネスホテルでいえば同一のチェーン(または提携ホテル)に10泊すると1泊無料というベネフィットがよく見られる。

そのような理由もあり、ビジネスホテルの主要顧客である出張族は、全国各地で宿泊する際に同一チェーンを利用する傾向がある。また、“QUOカード付きプラン”やキャッシュバックプランなど、ビジネスホテルには出張族に人気の宿泊プランも多い。これらの考察は別の機会に譲るとして、いずれにせよ出張族のリピーター獲得はビジネスホテルの重要課題ともいえる。

しかしながら、変動した料金が出張規程内に収まらないケースであれば、他のチェーンをセレクトすることもあるだろう。実際にこのようなケースがきっかけで、他のチェーンの良さを発見、会員カードを作り頻繁に利用するようになったという知人が何人かいた。料金高騰が他のホテルを知り常連となるきっかけになったということか。

ビジネスマン、観光客、訪日外国人旅行者といった各々の利用者目線、運営サイドのビジネス目線など様々な視座がある中で、料金変動の受忍度や善し悪しを単純に述べることはできない。とはいえ著しく過度な料金変動に違和感を覚え、ホテルへの不信感を抱く利用者の声は根強いようだ。

以前、外国人を対象にしたアンケートで「日本人は優しい」という結果を見たことがある。理由として困ったときはお互い様といった“相互扶助の精神”があげられていた。「そんなホテルは二度と使わない」という声はその裏返しなのだろうか。

次回は、ホテルが取れないときの確保術について考察したいと思う。